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挑戦することが面白くてしょうがない。歴史に名を刻むことを目標とする女性起業家

私が社長になった理由-端羽 英子さん-
2020年3月に東証マザーズへの上場を果たしたビザスクの社長、端羽さん。インタビューでは、テンポも非常によく、想像を超えた行動力のお話が続き、“一般常識”にとらわれていると、話の展開についていけなくなってしまうほどでした。「やらない後悔よりやる後悔がいい」と言い、どんなことにでもチャレンジしていく姿勢は、見ていて気持ちがいいほどです。そんな端羽さんはどんな子ども時代だったのか、そこからスタートです。

2019年夏、”いわみんプロジェクト”として、社長や起業家、独立して活動している方を対象に100人インタビューを実施しました。彼らがどんな想いで起業し、会社を経営しているのか? その中での葛藤や喜び、そして未来に向けて。熱い想いをたくさんの人に伝えたいと思っています。

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端羽 英子(はしば えいこ)さん

株式会社ビザスク 共同創業者 兼 CEO
2001年に東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部で企業ファイナンスに携わるも妊娠出産のため1年で退職。USCPA(米国公認会計士資格)を取得し日本ロレアルで予算立案/管理を担当した後、MIT(マサチューセッツ工科大学)に留学しMBAを取得。 ユニゾン・キャピタルで企業投資を5年間行った後、2013年10月に「世界中の知見をつなぐ」をビジョンに掲げる、ビジネス知見に特化した日本最大級のスキルシェアプラットフォーム「ビザスク」を立ち上げる。

あこがれたのは戦国武将
歴史に名を残すためには何をしたらいいのか?

 私は3姉妹の末っ子なんですが、熊本の長兄の家系で、家族からは今度こそ跡継ぎというか男の子を期待されていたそうです。なのに、また女の子が生まれたため、開き直った母が、私を男女の区別を持たないように育ててくれました。母はもともとウーマンリブ的な性格もあったのだと思います。
 その影響があってか、私の中に男子と女子の違いとか、女子だからとか、そういう考えはまったくありませんでした。小さいころから考えていたのは、“歴史に名を残したい”ってこと。戦国武将とかをカッコいいと思ってあこがれていました。勉強は好きだったので、東大へ進学しました。

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 そこでも考えていたのは、「歴史に名を残すためにはイチビジネスマンでは難しいな」ということです。周囲は官庁を目指す人が多く、まずは経産省を希望するようになりました。外国にも行きたいし、新しいことを生み出すことをしたい、って思うようになっていたので、経産省なら叶いそうだと思いました。

 ところが、大学3年のときに恋に落ちてしまいます(笑)。恋に夢中になってしまい、もう勉強なんてやってられません。そこで、経産省はあきらめました。彼と結婚することを真剣に考え、そのとき初めて、子どもを産むことを意識し、子育てと仕事の両立しやすいシンクタンクを就職先に考えたりするようになりました。でも、実際には、証券会社に就職しました。でも、恋心は勢いを増し、大学4年の卒業間際のタイミングで彼と結婚しました。うちは母も姉も結婚が早かったので、特に年齢のことは気になりませんでしたし、反対も特にありませんでした。
 ただ、会社に入社した直後、私だけ名刺やもろもろの手続き書類なんかが遅れていた(新しい姓で作り直す必要があったため)のを見て、申し訳ないことをしたな、と思いました。仕事を始めた1年目に妊娠しました。つわりがあまりにひどく退社することに。正直、仕事的にはかなりハードだったので、妊娠がわかったときは「これで辞められる」と思ったぐらいです。退社してからは、産後はスーパー派遣社員になろうと思って、米国公認会計士の資格を取得しました。

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 その資格を持ってロレアルに再就職するのですが、子どももいたので管理部門に配属され、規則正しい時間に帰ってこられたのはありがたかったです。その後、夫が海外でMBA取得のために留学するタイミングで退社し、一緒に渡米しました。自分もMBAを取得するつもりだったので、MITに願書を出しMBAを取得しました。ただ、このアメリカ留学中に、彼とは離婚することになりました。

自分の過去を楽しそうに語る端羽さん。例えば過去の失敗や悔しい思いは当然、落ち込んだりするものの、この思いを引きずるのではなく、「どうしたら解決できるか?」と考えるのだそう。常に前向きに考え、未来を生きているんだなと感じます。

帰国後は子育てをしながら投資会社に勤務
正しく評価してもらうために独立しよう

 日本に帰国してからは、自分の力で子どもを育てなくちゃ! という思いもあり、投資会社に就職しました。独身だった姉と同居して、子育ては手伝ってはくれないのでシッターさんを雇っていたりしましたが、いてくれるだけで安心という心の支えを得て働いていました。その会社では、私は最年少だったんですが、どうしても自分が正しい評価をされているように感じられず、周りからは「順調じゃん」と言われても信じられず、独立して自分の責任で仕事をしたいと思うようになりました。

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 そこでいくつかビジネスを考えて、人に相談してというのを繰り返し始めました。私の基準は自分が使いたいと思うサービスであることでした。家事代行サービスや美肌情報なんてものも考えました。あるとき、キュレーション系のECサイトを考えたのですが、専門知識をもった方に相談させてもらうために、何人かの人づてでようやく会えたということがありました。ビジネスとしては、コテンパンにダメ出しされました(笑)。でも、この経験こそが、次のビジネスモデルの基本となったんです。

 相談された人にとっては日常的に仕事で使っている当たり前の知見や情報だけど、私のようにその世界に疎い人間にはのどから手が出るほど欲しい情報だということです。しかも、その知見を持った人にたどりつくまでに相当の時間がかかったんです。なので、最短で自分が求める情報を持っている人につながれるプラットフォームを作ったら意味があるんじゃないか、と思いつきました。また、当時私がしていた仕事は、新事業を立ち上げようとしている方たちが相手なので、さまざまな知見を求めています。これだ! と思い、独立をしました。

創業後、社会のニーズにマッチした端羽さんのビジネスはどんどん拡大していきます。同時に社員の数も増え、新しい悩みも抱えるようになったといいます。

企業としてスケールするときに生じた
初期メンバーの退社は本当につらかった

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 ありがたいことに、会社は着々と成長していき、社員の数も増えてきました。そんな中、最初のころのメンバーが辞めることになったときは、本当につらかったですね。最初は少人数でみんながフラットな立場でチームのように働いていて、すべての情報が共有され、みんなで決めていくような状況でした。それがどんどん業務分担され組織になってきました。今までは自分は辞める側の立場だったのが、辞められる側になったことにも気づきました。
 ビジネスにおける問題点はどれも解決できることだと思うし、社内の問題も解決したいと思っていました。でも、会社全体としての全体最適は、その人にとっては最適ではないかもしれない。仕方ないことではありますが、気持ちはなかなか割り切れませんでした。本人の目標と会社の目指す方向が最初は同じでも、途中で違っていくことは多々あります。それでも、「自分のせいなんじゃないか?」「私は何のために会社を大きくしているんだ?」ということを何度も何度も問いかけていました。
 自分の中で、会社を続けるための正しい選択をしていると確信し、また、どんなに組織が大きくなってもちゃんと社員ひとりひとりを大切に思う気持ちに変わりはないと、自信をもって言えるようになったとき、そのつらさを乗り越えることができました。もちろん、そういったミスマッチが起きないようにしているので、辞める人はほとんどいないんですけどね。

 一方で、社外に対しての挑戦はおもしろいことばかりでした。たとえうまくいかなかったとしても、自分たちが仮説を持って試していることなので、「あれ、どうしてうまくいかないんだろう?」「今度はこうしてみたらいい?」と考えて実践していきます。これはおもしろくてしょうがないです。

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▲求める知見を持つアドバイザーに1時間単位で相談、ヒアリングができるセルフマッチング形式のスポットコンサルサービス「ビザスクlite」

 働き方改革というトレンドで、ビザスクでのアドバイザー活動を自身の新しい活躍機会ととらえる個人、社外の情報や知見に高いニーズをもつ法人が増えてきているので、ビジネスチャンスがあるとみています。また、2020年1月には初めての海外拠点をシンガポールにかまえ、グローバル展開に力を入れています。今でも10万人超のアドバイザーのうち1万人は海外の方で(2020年2月時点)、グローバルにマッチングを行っていますが、シンガポール拠点を足掛かりに海外アドバイザーの獲得とグローバルオペレーションの構築を加速していきたいと思っています。

ビザスクのサービスを初めて聞いた2017年ごろ、これからの社会のニーズを的確にとらえたすばらしいアイデアだと思いました。なので、創業者である端羽さんへのインタビューは非常に楽しみだったんです。「反省はするけど、それよりどうしたら解決できるか? を考えるほうがいい」という思考法をおみやげにいただき、実践していきたいと心に誓いました。


下町の2D&3D編集者。メディアと場作りのプロデューサーとして活動。ワークショップデザイナー&ファシリテーター。世界中の笑顔を増やして、ダイバーシティの実現を目指します!