子育てで知っておきたい【子どもの季節性疾患(秋・冬)】
こんにちは。
岩間こどもクリニック 院長の岩間義彦です。
前回、今回と【子どもの<季節性>疾患】にフォーカスしていきます。
患者さんからよく質問される内容をもとに、今回は秋と冬に流行しやすい子どもの病気について特徴と注意点、その対処法について書いていきます。
※昨今の感染症は通年化している傾向にありますが、本記事では一般的にかかりやすいとされている時期を基準に記載しております
【① 家庭でできる感染症対策はありますか】
家庭でできる感染症対策には以下のものがあります。決して特別なことではありませんが、お子さん(赤ちゃん)を感染症から守ってあげるには大事なポイントとなります。
・規則正しい生活をする
・外出から帰宅したら必ず手洗い、うがいをする
・体調が悪いときは人混みをさける
・定期的な換気をする
・室温は23~25度、湿度は50~60%をキープ(高過ぎても、低過ぎてもよくありません)
この中の『定期的な換気』を、皆さんは最近忘れているように思います。
新型コロナウイルスが猛威をふるっていた頃に、こまめに繰り返していた『定期的な換気』は、様々な感染症対策に有効なことが再確認されました。
換気のポイントは2つあります。
『部屋の温度や湿度をどのようにキープすればいいのか?』
来院されたママやパパから、よくご質問をいただく点です。
感染症の原因のひとつである「ウイルス」は湿度が40%以下、室温が15度以下になると活性化するので、これを上回るように湿度や室温を調整するのをおすすめします。
ただ、赤ちゃんはママやパパが思うより暑がりです。
室温はママやパパが「少し涼しいかな」と感じるくらいでちょうどいい場合が多いです。
湿度は60%を超えると、窓が結露してカビが発生しやすくなるので注意しましょう。
【② 秋に気を付けるべき感染症を教えてください】
RSウイルス感染症
RSウィルスの感染による呼吸器の感染症です。生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%のお子さんが少なくとも一度は感染するといわれています。秋から冬にかけて多くみられておりましたが、最近では季節に関係なく流行するようになってきました。
初めて感染した場合は症状が重くなりやすく、6カ月未満の赤ちゃんが感染すると重症化することもあります。特に生後2カ月未満の赤ちゃんが感染すると、無呼吸発作を起こす原因にもなるので注意が必要です。
症状は風邪と似ていて、発熱、鼻水、鼻づまりが数日続きます。
軽症の場合は1週間ほどで治りますが、進行すると咳がひどくなり、気管支炎や細気管支炎、肺炎を起こすことがあります。
年長児以上のお子さんや大人が感染しても軽症で、RSウィルスと気づかずに乳児にうつしてしまうことがあります。普段からうがい、手洗い、咳がある時のマスクの着用などの予防が大切です。
マイコプラズマ感染症
マイコプラズマニューモニエの感染による呼吸器の感染症です。
潜伏期間は長く、2~3週間です。発熱、全身の倦怠感、頭痛といった風邪に似た症状から始まります。発熱後3~5日から咳が発生して、徐々に強くなるのが特徴です。
重症化すると肺炎や気管支炎になることがあります。呼吸が苦しく全身状態が悪くなり、水分が摂れないとなれば入院加療が必要です。
治療には抗菌薬(マクロライド系)を内服しますが、耐性菌が増えているため最近では症状が改善されない場合があります。3日以内に熱が下がらないようでしたら、違う種類の抗菌薬で治療を行うので早めに再診してください。
マイコプラズマ感染症は、学校保健安全法の第3種その他の感染症にあたり、急性期は登園登校ができません。熱が下がって咳が落ち着いて全身状態が良くなり、主治医から許可がでれば登園登校は可能です。
ノロウイルス胃腸炎
秋から冬(11月~3月)にかけて流行する、ノロウイルスが原因の腸の感染症です。潜伏期間は24時間から48時間で強い感染力があり、感染しても何度もかかる可能性があります。また、大人にもうつります。
嘔吐と下痢、腹痛や微熱が症状です。特別な治療薬はありませんが、水分補給ができていれば1~3日ほどで自然に治るケースがほとんどです。
下痢止め、吐き気止めの薬を使うと、ウイルスの排出が妨げられて回復が遅れることがあります。自己判断をせずに小児科を受診してください。
嘔吐物に大量のウイルスが含まれるため、処理にはマスクや使い捨ての手袋やエプロンを使用し、入念な感染症対策が必要です。症状がなくなった後も3~7日位、長い場合は1カ月ほど、便にウイルスが排出されるので注意してください。
伝染性紅斑(リンゴ病)
両方の頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれているヒトパルボウイルスによる感染症です。大人も感染することがあります。
感染すると10日~20日の潜伏期間を経て、風邪に似た症状で始まります。1週間ほど経過すると頬が赤くなり、腕やふとももにレース状の発疹が出てきます。これで「りんご病」と診断できます。頬が赤くなったときにはウイルスは消失しているので、登園登校は可能です。発疹は1週間くらい続き自然に治ります。
妊娠中にリンゴ病に感染した場合、胎盤を通ってお腹の赤ちゃんに感染することもあるので、産婦人科で赤ちゃんの状態を検査する必要があります。
【③ 冬に気を付けるべき感染症を教えてください】
インフルエンザ
冬に流行するウイルス性の感染症ですが、最近では冬以外での感染もみられます。
約1日~4日の潜伏期間の後に38℃以上の急な発熱、喉の痛み、頭痛、関節痛や倦怠感などの症状がでるのが特徴です。腹痛や下痢、嘔吐の症状が出ることもあります。
インフルエンザ迅速検査を行い診断することができますが、発熱して8時間以内では正しい結果が出ないことがあります。
小さなお子さん(赤ちゃん)は、中耳炎、気管支炎、肺炎、脳炎、脳症などの合併症を起こすこともあり、重症化して死亡や後遺症を残す場合があるので注意が必要です。
予防接種をすることでインフルエンザにかかりにくくして、重症化の予防効果を期待できます。生後6カ月以上のお子さんは、予防接種が可能です(13歳未満は原則2回接種)。流行する型が違うので毎年接種が必要となります。
ロタウイルス胃腸炎
ロタウイルスに感染することで生じる急性胃腸炎です。潜伏期間は1日から3日です。11月頃から3月頃に流行し、他の胃腸炎より嘔吐や下痢がひどく脱水になりやすく、けいれんや脳炎など重症化することもあります。
嘔吐が強く、ぐったりしていたらすぐに小児科を受診してください。夜間の場合は救急外来を受診することをおすすめします。
感染力が強く、ほとんどのお子さんは5歳までに感染します。乳児が感染すると家族内にも感染が広がります。下痢になる2日前から発症後10日位はウイルスを排出しているので、吐物や便の処理の際には入念な感染症対策が必要です。
経口ワクチン(飲むワクチン)により、ロタウイルス胃腸炎の重症化を80~90%予防できます。生後6週以降に接種できるので、できるだけ早く1回目の接種することをお勧めします。
【 ④子どもが発熱した時の対処法を教えてください】
生後3カ月未満の赤ちゃんが、38度以上の発熱をした時は機嫌がよく見えたとしても、すぐに小児科を受診してください。夜間であれば救急外来の受診をおすすめします。急激に悪化する病気がかくれている可能性があります。
生後3カ月以上の赤ちゃんやお子さんが発熱した時は、
この2つで判断してください。
38度以上の発熱や3日~4日以上発熱が続いているのであれば、元気で機嫌がよくても診療時間内に小児科を受診してください。
発熱が38度を越えず、元気で全身症状に問題がなければ様子をみていいでしょう。
お子さんの発熱は夜間に多いので、ママやパパは救急外来に連れていくかどうか判断に迷われるのではないでしょうか。
note記事【一刻を争う子どもの症状Vol.1】でもご紹介した「お子さんの体調不良で注意すべき『5つのキーワード(症状)』」を参考にしていただければと思います。
お子さんの体調不良で注意すべき「5つのキーワード(症状)」
もし一晩様子をみて、お子さんの熱が朝になって下がったとしても、午後から夜間になって再び熱が上がることがあります。念のため診療時間内に小児科を受診してください。
【⑤子どもが発熱したとき冷やすのは効果がありますか】
体温を下げるために冷やすのでしたら、おでこではなくて首、脇の下、足のつけ根など太い血管の通る部分を冷やすとよいでしょう。子どもが嫌がる時は、無理に冷やさなくても大丈夫です。
熱が出たときに「冷却シート」をおでこに貼っても、体温を下げるほどの効果はありませんが、お子さんの気分が良くなるのであれば使っても良いかと思います。
ただし、赤ちゃんのおでこに「冷却シート」を貼ることはお勧めしません。「冷却シート」がずれて赤ちゃんの鼻と口をふさぎ、窒息する事故の報告がありました。危険ですのでご注意ください。
今回の記事は以上です。
いつもご覧になっていただき、ありがとうございます。
育児に向き合うママ・パパの参考になりましたら幸いです。
岩間こどもクリニック
院長 岩間 義彦
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