見出し画像

ドミニカ移住 #5:初めての一人行動・冒険の日

このnoteは、文化人類学や地域研究を学んでいた当時大学3年生(21歳)だった私が、小さいころからの夢だった海外でのフィールドワークを行うため、野球が盛んなドミニカ共和国(以下、ドミニカ)に移住した合計約10か月の記憶を綴ったものです。


一人で出かけよう

___________(2018.5.28)

 28日(月)、この日はイポドロモ(練習場のグラウンド)へ行かずに一人で少しだけ遠出してみることにした。

土日はトニーさんたちが一緒にいたおかげで怖い思いや不便な思いをすることはなかった。しかし、これからドミニカで生きていくのなら、易しい環境に身を置き続けるのではなく、もっと一人行動に慣れ、現地の人たちと言葉を交わす必要があると思ったのだ。



 トニーさんに勧めてもらった「maps.me」というアプリで現在地周辺をスクロールし、ある程度離れたところにあるGuerraという町に行くことにする。特に目的となるようなものがあるわけではなかったが、乗り合いバスを乗り継いで行けるというだけで探検気分になった私は、荷物を準備してペンションの近くにある停留所でグアグア(乗り合いバス)が来るのを待った。

 グアグアは次から次へと停留所へやってくるが、待っている人の中には乗り込む人もいれば乗り込まない人もいる。どうやら、ここから乗るグアグアはどれでもいいわけではなく、みんな自分が乗るべきグアグアを選んでいるようだ。とりあえず近くにいたドミニカ人に声をかけ、行先を確認して同じグアグアに乗り込んだ。グアグアの運賃は25ペソ(約50円)。基本、乗車中はスマホを取り出してはいけない。車内で無防備に使用していると、スられてしまう可能性があるからだ。

ドミニカに来て初めて、頼れる人がいない状況に、若干の不安を感じながらも、「フィールドワーカーはこうでなくっちゃ」という気持ちが、ふつふつと私の好奇心を掻き立てていた。


Guerra 着!

 グアグアを乗り換えるパルケ・エンリキージョで降車し、うろうろ次の乗り場を探し回りながらビジャ・ゲッラ行きのグアグアに乗り込んだ。来たことのない地域を長時間走り続け、景色もペンションのあたりとは大きく変わったころ、目的地のGuerraにたどり着いた。

 特にすることもないので、とりあえず歩いてみる。

道路で雑談する人たちは、アジア人の女が一人で歩いているのを見つけ「チナ(中国人)!」と声をかけてくる。とりあえず、近くのコルマド(道端にあるコンビニのような商店)に入ってコーラを買ってみた。コルマド内の人がこちらを気にしていたので、思い切って話しかけてみる。

「Hola(オラ)」と挨拶すれば必ず「Hola」と返してくれる、ドミニカ人のこの気軽さと親しみやすさが、既にとても心地よくて、話しかけるのには何の抵抗もいらなかった。案の定、私のことを中国人だと思っているようで、「オラ、チナ」と呼び掛けてくる。このように、アジア圏を出れてしまえば現地の人びとが中国人や韓国人、日本人の区別がつかないことは以前訪れた国々で経験済みだ。私は、自分が日本人であること、ドミニカに来たのは好きな野球の調査をするためだということを、拙いスペイン語で彼らに説明した。彼らは驚きながらも私に興味を持ってくれた様子で、歓迎の言葉をかけてくれた。彼らが「私用に」ゆっくり・はっきりと話してくれる言葉はある程度理解できたが、ドミニカ人同士の会話は早すぎて、何を言っているのか全くわからなかった。


それからも、私は小さなGuerraの町のいたるところを歩いた。複数のコルマドをハシゴし、よくわからない飲食店の中や小さなアイス屋さん、近くにあった学校―。隙を見つけては暇そうにしているドミニカ人に話しかけ、スペイン語を使いまくった(言おうとしたことが喉からうまく出てこない)。彼らにとって、アジアにある日本という国は身近なものではないだろうし、知識も興味も薄いはずだが、みんな一貫して私の話し相手になってくれた。


 この日実行した、何も知らない土地への「初・一人遠出」は、スペイン語を多く話す機会に恵まれただけでなく、ドミニカ人との接し方(ノリ?)を身をもって学習し、よく聞かれる質問(飛行機やお金のことなど)やそのフレンドリーさに直に触れた一日だった。


無事帰還

 暗くならないうちに家に帰ると、練習から帰ってきて体を休めていたデイビッドとウェリントンは「アスカどこ行ってたんだ?」と声をかけてきてくれた。私のスペイン語が拙いせいで、彼らとの距離感は何とも言えない状態だったが(中学生や高校生の年齢で、言葉が話せないくせにしゃべりたがりの外国人の相手をするのはかなり面倒くさいと思う)、そうして私に関心をもって話しかけてくれるのがとても嬉しかった。Guerra に行ってきたというと「あんなところになんのために?」と、変な奴を見る目で見られてしまった。


デイビッドとウェリントンはとても仲が良くて、特に夜はワイワイと賑やかなことが多い。ご飯を食べ終わってもトニーさんと4人でリビングの机を囲み、何気ない会話を交わす。少年二人の言葉は早すぎてほとんどわからない為、分かりやすく通訳をしてくれるトニーさんの存在がとても有難かったし心強かった。

画像1

(画像左下:この国に来るなら絶対覚えておいた方がいい単語、「chapiadora」はこの日に覚えたらしい。)







この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?