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完璧にはなれないまま進んでいく

 大学を出てイヤホンをつけていると、向こう側でドンという音が聞こえた。もしかして、と思いイヤホンを外すと、またドドンと音が響いた。花火だった。その日は隅田川の花火大会だったらしい。確かに、電車に乗るときに浴衣姿をよく見かけた。

 バイト6連勤最終日で大学の授業が最終日だった。終わったー!と思いながら大学を出たから、なんだかその音がお祝いの音に聞こえた。

 この春から大学に復学し、昼に働き夜に授業という生活を送っていた。仕事も大学も週5であったので、かなり体力的には大変だったが、終わってみれば案外頑張れたなという印象である。それでも私は今日の仕事のミスを思いだし、私のダメなところを思い返すのだった。

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 大丈夫、ちゃんとできてるよ、頑張りすぎだよ。そう言われることが多い。それでも私は頑張り足りないような気がして頑張らなきゃと思ってしまう。

 実際は頑張り足りないのではなく、やりたいことが多すぎたり、時間が足りなかったりするからなのだ。一様に努力不足ではないことは知っている。それでも、ふとした瞬間に自分の情けなさ、なにも知らなさに落ち込み、頑張らなきゃと思うのだ。

 そしてそんな自分の裏で、これくらい頑張っている自分で充分じゃないか、とも思う自分がいる。そんなに上を目指そうとしなくとも、と。だから中途半端な努力に終わってしまう。

 確かに私は完璧になろうとしてない。自分が自分らしくいられる範囲でほどほどに生きれればいい。でも完璧なんてなれないからなにもしないと決意するには、私はまだ若すぎるんだと思う。

 この前、就活の相談コーナーに行ってみた。周りが就活で内定を決めているのを見ると、自分もやった方がいいのかな、と思えてきたからだ。ベテランのおじさん相談員さん(親しみを込めておじさんと呼ばせてほしい)に、就活をした方がいいのか迷っていること、大学を出てからはまた資格を取るために他の大学に入ろうとも考えていることを伝えた。

 受け答えがしっかりしている印象を持ってくれたのか、そんなに慌てなくていいんだよとアドバイスをもらった。

あなたがそうやって先のことについて考えて、大学でまた学ぼうと思っていること、それ自体があなたを説明するもので、武器になるよ。

 そんなことを言われ、私は驚く。ああ、行動できていないことがダメダメだと思っていたけれど、違うんだ。考えが及んでいることそれ自体が行動の証なんだと気づいたのだ。

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 そんな文章を、春学期の終わりに書き記していた。もう夏休みは終わり、秋学期が始まってしまった。何もできていない自分にまた辟易としながら、とりあえず授業の出席は取ったからバッチリ、と言い聞かせる。

 完璧とはほど遠い。それでも進んでいく。このnoteだって、そうやって書いてきて3年目を迎えた。だからいいのだ、とこのままの私を肯定する文章を残しておく。完璧な航路なんてないはずだし、案外そういうもがいている道が、なにかの近道になっているかもしれないし。

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