感動を共有したい四十路映画記録 #0002「コラテラル」
本日は「コラテラル」です。
はじめに
一見するとトムに見えないような、白髪に無精髭でグレーのゆったりしたスーツを纏い広告に映る姿は新鮮で、それでも完全な悪役に見えない思えないトムがどんな悪役を演じるのか、どんな結末を迎えるのか想像できない印象ですが、「collateral(巻き込まれる)」。序盤はおそらく想像通りになると思います。
最初のシーン
サングラスをかけたトム・クルーズとジェイソン・ステイサムは駅で偶然にぶつかってしまい、お互いを気遣う言葉をかけた後、持っていたブリーフケースを入れ替え、別れます。視点は変わり、どこか暗い表情のタクシードライバー。自分の顔写真が付いた身分証明を運転席にセットし、海の青色が映えるどこかの島の写真を運転席のサンバイザーに挟み少し見つめた後、駐車場を後にしました。
ストーリー
タクシーに乗ってきた乗客が実は殺し屋で、タクシー運転手はいわゆる運び屋のような形で共犯者となってしまう。その最悪な状況から脱出できそうになっては阻止されを繰り返していく。殺し屋はいつも冷静でどこか理屈っぽい。運転手は細々とした生活をしながら居合わせた乗客との会話の中で相手を笑顔にするような人。殺人の度にそれぞれの人生観を突きつけ合うような会話が続く。事件を追いかける刑事は、何の前科もなかったタクシードライバーが殺人を繰り返した結果自殺した事件を思い出す。
印象的なシーン
目的地までのルートを指示する乗客に対して、もっといい近道を勧める運転手。自信ありげに話す運転手に対して賭けてもいいとの申し出に「絶対に俺が正しい。負けたら料金はチャラだ」と賭けに乗る。結果的に運転手の言った通りに目的地に辿り着くところ、「あなたが正しくて私が間違ってた」「私の言う通りにしてたら5ドル多く稼げたのに」に対して運転手は「その5ドルは派手に使うがいいさ」と切り返し、その粋に乗客は笑顔を返したあとで名刺を渡す。
素敵な出会いの余韻を邪魔するように次の乗客の男が乗ってくる。運転手はその男に対しても同じような賭けをされたものの、やはり12年運転手をしている彼が勝つ。そんな彼の仕事ぶりに満足したのか、乗客の男はさらに不動産業を営み、今夜会う予定の契約先5件分の運転手をやってくれればチップを払うと誘い車を降りた。チップの額に負けた運転手が外で待っていると、空から降ってきて破壊音と共にタクシーの屋根に激突した何かに驚いた。人間だ。言い訳をする気もなく戻ってきた乗客は「当たり」と言い、運転手は「あんたが殺したのか」と当然に驚き、乗客は表情も変えずに続ける。「撃っただけだ。銃弾が殺したんだ」と。衝撃で飛び散った窓ガラスの破片はそのまま、タクシーに付着した血痕は水で洗い流し、死体とともにタクシーのトランクに大雑把に詰めた。「車が汚れて残念だな。我慢して運転に集中しろ」他人事のようにいい、また次の目的地を指示した。
何故か運転手と男はジャズを聞きにバーに来ている。自分の横を通り過ぎるウェイターに、舞台でソロパートを吹く演奏者が店のオーナーだと聞いた彼は、「素晴らしい。演奏後にいっぱい奢らせてくれ」と提案する。演奏後はそのオーナーからトランペットの名手マイルス・デイビスと会った話を聞かせてもらい、「いい話だ」といい出会いを感じ始めたところで、男が次に発した言葉にオーナーの表情は凍りつき、以降ふたりが交わす言葉でオーナーも標的だと感じさせる。
ふたりは唐突に運転手の母親が入院している病院に行くことになり、ふたりは友人だということにして事実を隠しながら母親を気遣う会話をする。殺人鬼が母親に笑顔を見せ談笑する姿にストレスを感じたのか、自分の母親を危険に晒した罪悪感なのか、床に置いてあった男のブリーフケースを奪いそのままの勢いで病室から出て行った。男は運転手を追いかけるが、大通りに架かった歩道橋の上から空へ向けて、運転手はブリーフケースを投げ飛ばした。大通りから噴き上げる風に舞い、男の荷物は次々に通り過ぎるトラックに踏まれ見るに耐えない状態だとわかる。決死の抵抗をした運転手を男は突き倒し、「全資料が入ってたんだぞ!仕事がぱあだ!」ここら辺から色々とおざなりな男だと思えてくるようになる。
男に全資料のコピーをもらってこいと意味不明なことを指示された運転手は男の雇い主の元へ来た。そこに待っていたのは男と同じようなグレーのスーツに無精髭を生やしたハビエル・バルデムだった。手間をかけて作成した裏切り者の全資料を無くしそれのコピーをよこせとまた意味不明なことをいう自称殺し屋に、それまで優しい声で大人の対応をとっていた男の雇い主は「サンタだって激怒するはずだ。お前ならどうする」と言った。自称殺し屋は言う。「後ろにいる男に言え。銃を下ろさなければ蹴り上げて殺してやる」と凄む。かけていた眼鏡を外し「お前のせいで後をつけられていたから荷物を捨てた。お前のケツを守るためにだ」これまで散々なことに付き合わされてきた元凶の男の口調を真似て演技をすることでこの場を乗り切ろうとした。ハビエル・バルデムは残りの裏切り者を片付けられるのか聞く。「俺が失敗したことがあるのか」と返されたハビエル・バルデムは全資料のコピー渡す。最後に自称殺し屋は「感謝のしるしとして報酬を割り引いてやる」と言い、「気前がいいな」と行ったところで交渉は終わる。
感想
殺人行為と車内の会話を繰り返す中で、次々にちょい役には勿体ない俳優が出てくることと、男と運転手の会話はだらだらしているようで意外と聞けるので、飽きそうで飽きない脚本は最後を見届ける責任感を持たせます。またその会話の中で運転手はある種成長し、命の危険を顧みず殻を破ることになることに、メッセージ性を感じます。
おすすめな見方
基本的には運転手が可哀想、彼はどう乗り切るのかという目線で見ることになって当然なのですが、好きなように生き完璧主義なようで全くスマートじゃない殺人鬼の姿を単純に笑ってみてほしいと思います。