コメンテーター津良野房美#13
新人アナの内藤百合絵(ないとうゆりえ)が最近よくポンタと話をしている。
房美はほとんどスッピンで自宅を出る。本番前は局専属のメイクさんにメイクしてもらう。自分でするよりプロにやってもらう方が上手に決まっている。というより面倒くさがりの房美にとって朝の化粧ほど苦痛なものはない。
房美はとても綺麗な髪を持っているが、髪は後ろにひっつめて局に来る。全てヘアメイクさんにお任せなのだ。
そんな訳で房美はメイクに時間がかかる。出演者の中でスタジオ入りがいつも一番遅い。
スッピンでも十分に美しい房美だが、メイクと髪をバッチリ決めて現れるとスタジオの空気感が一瞬にして変わる程のオーラを放つ。
「そうですねー!ウフフフッ!」
今日も内藤アナとポンタさんが何やら話している。最近スタジオ入りするといつもそうだ。
内藤アナはとても楽しそう。
ポンタさんはいつもと変わらない。
スタッフのオヤジ達の中には、若くてきれいな内藤アナに色目を使ってデレデレする輩も多い。
でも、ポンタは相手が美人かそうじゃないとか、男か女とか関係ない人だ。
"何を楽しそうに話しているの、"
房美は気になって仕方がない。
「おはようございます!」
房美は話し中の内藤アナとポンタに割り込んだ。
内藤アナはビクッと話を止めて
「あっ津良野さんおはようございます、今日もよろしくお願いします!」
と言って司会の羽嶋の方へスタスタと行ってしまった。
房美は思い切ってさりげなくポンタに訊ねた。
「内藤アナと何の話してたの?」
「鉄道の事だよ」
ポンタは続ける
「内藤さんのお父さん、鉄道マニアでいつも僕の鉄道旅のコーナー楽しみにしているんだって」
ポンタはモーニングタイムで「ポンタのローカル鉄道旅」というコーナーを持っている。ポンタのキャラと鉄道愛溢るるコメントが人気でファンも多い。
"そうだったんだ"
房美は安心と共に小さな胸騒ぎを覚えた。
司会の羽嶋が今日の進行について話しかける。
内藤アナは「はい、わかりました」と頷いて聞いている。
でも、目は楽しそうに会話しているコメンテーターの二人を見つめていた。
つづく
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