コメンテーター津良野房美#12
房美はポンタに会う事が楽しみになった。
"ポンタさんにこれを話そう"
"ポンタさんにこれも聞いてもらおう"
と月曜日を心待ちにしていた。
「ねーねー、ポンタさん聞いて!」
スタジオ入りすると本番までポンタとずっと喋っていた。
CM中もずっと。
"私ってこんなにおしゃべりだったっけ"
房美は自分でも不思議だった。
今までの人生でこんなに自分をさらけ出して話せる男の人はいなかった。
私の目をちゃんと見て聞いてくれる人はいなかった。
ポンタはペラペラと楽しそうに喋る房美の目を優しく見つめ、相槌を打ちながら包み込む様に話を聞いている。
"私、この人にはなんでも話せちゃう"
と房美は今まで心に溜めこんでいた話を次々とポンタに話した。
今では房美の目線は今ではポンタのだだっ広いオデコではなくしっかりと目を見て話すようになった。
コメンテーターの房美はコメントの切れ味には定評がある。
コメントの合間に時折見せる美しい笑みは月の様な冷たさを含んでいるが、そのブルーな感じがまた房美の美しさに輪をかけて魅力的だった。
でも、ポンタと話している時の房美は太陽のようにはち切れんばかりの明るい笑顔だ。
美しさが倍乗されオーラのように後光が刺している。
"ポンタさんと話している時の津良野さん、めっちゃきれいだなー"
"あの二人仲良いなー"
"オレも津良野さんとあんな風に喋りたいなー"
司会の羽嶋をはじめスタジオの男性スタッフ達は皆、楽しそうに喋るポンタと房美を指を咥えヨダレを垂らしながら見ていた。
羨望と嫉妬を込めて。
つづく
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