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【連載小説】少年時代#7

団地の四区に引っ越してきた『はざま君』と友達になった。

はざま君家には『魚雷船ゲーム』があると言うので、ポンタはようちゃんとのいねめ君と遊びに行った。

魚雷船ゲームは小さい金属の弾を大砲の形をした発射台に入れ、相手の戦艦を狙って落とすゲームだ。発射すると弾が青い透明なプラスチックの板の下を転がり、海の中を魚雷から発射された弾が飛んで行く様に見えるボードゲームだ。

はざま君は五人兄弟の真ん中だ。家には魚雷船ゲームの他に人生ゲーム、オセロもあった。ソフビ人形もたくさん持っている。

はざま君はちょっと変わったしゃべり方をする。

「ぼ、ぼ、ぼ、僕は」

とか、

「な、な、な、な、なんで?」

とか、
必ず言葉の頭を何度も繰り返す。

はざま君家で魚雷船ゲームをしてると、はざま君のお兄ちゃんが来て、

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、僕も入れてーな」

と言うから一緒に遊んだ。


遊んでいると、はざま君のお母さんが来て、

「お、お、お、おやつ食べなさい」

と、キリンレモンとお菓子を持って来てくれた。


"やったー!キリンレモンだー!
でも、はざま君家ってみんな同じしゃべり方すんねんな、"

とポンタは思った。


家に帰ってポンタは

「母ちゃん!今日新しい友達ん家行ったんやで!
四区に引っ越して来た、はざま君家」

「ふーん」

「はざま君家でキリンレモン飲んだ」

「そー、ちゃんとお礼言った?」

「言った。はざま君家はプラッシーとキリンレモンをケースで取ってるんやで!家も取ろうや!」

「家はジュース禁止だって言ってるでしょ、友達ん家で飲ませてもらいなさい」

"やっぱりあかんかー"

ポンタはジュースに関して何度も母と交渉しているが全て玉砕している。


「はざま君てな、変なしゃべり方すんねん。
『ぼ、ぼ、ぼ、僕は、』とか
『ポ、ポ、ポ、ポンタ君、』とか
言うねんで」

「そんでな、お兄ちゃんもお母さんも同じしゃべり方やってん!」

ポンタは意気揚々と母に話した。

すると、みるみる母の顔色が変わった。

「たけし!!
そのしゃべり方は絶対に真似しちゃダメ!自分もそうなっちゃうよ!
あと、みんなの前でもその話はしちゃダメよ!」


母に突然怒られてポンタはしょんぼりした。

『どもり』という言葉をまだ知らないポンタに悪気はなかったが、母の突然の豹変ぶりにただ事ではないのだと察した。

少年はこうして少しずつ物の分別を身に付けて行く。


つづく

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