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連載小説 九本足のタコ(26)


その後もしばしば長老は、ようとひょっこりやって来ては例の薬草を届けてくれた。そして、早く治して明石の海に来い、といつも励ましてくれた。

長老の薬草の効きめは絶大だった。ふやけていたオレの足の傷口はすぐに塞がった。そして小さな突起が出て来て可愛らしい吸盤らしき物も見える様になって来た。

この小さな岩場でとても仲良くなったキュウセンベラの姉ちゃんは生え始めたオレの足を見て大変喜んでくれた。良かったねとオレの小さな足にチュッチュしてくる。ちょっと色っぽい可愛い姉ちゃんだ。

小さな突起は少しずつ伸び始め短い細い足になった。そしてなんとそこからもう一本の足が生えてきた。オレが食べてしまった足からは二本の足が生えてきたのだ。

新しい二本の足は順調に伸びた。他の足より少し細いが立派な足に成長した。そしてオレは九本足のタコになった。

長老は、九本足のタコなんて中々いねーぞ、お前明石に行ったらモテモテだな、ガハハ、と大きな声で笑った。


つづく

キュウセンベラとは


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九本足のタコがトロフィーを頂きました。読んで頂きありがとうございます。

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