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駆り立てるものは、 何?

黒田・前総裁が就任前からこだわり続けていたのは、「2年で2%」だった。
だから 2% = 目的 と述べたけれど、これも日銀的には「あくまでも手段である」とされている(総裁・副総裁就任会見での岩田・前副総裁の発言)。

では、なぜ 2%で、その先の目的はどこにあったのか。

岩田・前副総裁の言葉を額面通りに受け取り、要約するとこうなる。

現在では、物価水準をデフレになる前にただ戻すだけでなく、経済はある程度の物価上昇がある方がむしろ安定することが経験的にわかってきた。
2%くらいの物価上昇率が、最終的には雇用や企業活動が良くなり成長率が上がることにつながる。また投資行動も良くなり貯蓄行動も安定する。
こういった実績が主要国にはあり、そういう意味で 2%ぐらいの物価上昇率というのは、国際標準であると。
これは、黒田・前総裁も同様のことを講演などで話されている。

要するに主要国の中央銀行が2%の物価上昇率を目標にしているから、うちも同じようにするわ、ってこと。

本当に?

ぼくには目的が美辞麗句が並んでいるだけに感じるし、2%を目指すことにしてもそんな理由なの?と驚かされる。これが本当ならね。
そうであれば、最大級の釈迦に説法だけれど、経済がそれほど単純なものでないことは言わずもがなでしょう、と。
まぁ、だから10年間も上手くいかなかったのかもしれないけれど。

ぼくの読んだ書籍によると1980年代のバブル時代、5年間の物価上昇率の平均は1.3% 。バブル崩壊後、2%を超えたのは1991年の一度のみ。その後は1%を超えたのでさえ、4度しかないらしい。
デフレは良くないけれど、そもそも日本は低いなりにも物価は安定していたと思うし、このデータを知ると、これほど物価上昇率の低い国が大きなリスクを取ってまで 2%という非現実的なインフレ目標を掲げる必要があったのかなぁ、と思う。

黒田・日銀は、2%の物価上昇率を「あくまでも手段である」とされていたけれど、昨日述べたようにぼくは ”目的” だったと思っている。あるいは最初こそ手段だったものが、途中それらに倒錯が生じたのではないか。つまり他に思惑があったのでは、という気がしてならない(これについては後述したい)。

今日は最後に、2%への執念、盲信とも思えてくる黒田・前総裁語録をどうぞ(これでもごく一部)


2%の物価安定目標というのは、いわばグローバルスタンダードでございまして、米国あるいは欧州、特に英国、さらにはカナダ、オーストラリア、ニュージーランド等、先進国のほとんど全てが2%という物価安定目標を設定しているわけでございます。

あらゆる手法を講じて、何としてもできるだけ早期に2%の物価目標を達成するという必要があるし、私は、それは可能であるというふうに確信をいたしております。

物価安定目標というか2%の達成というのは日本銀行の責務でありまして、日本銀行として達成しなければならない目標であると思います。

日本の場合は2%というところに近づけるように全力で努力していく。しかも、それは長い金融政策の歴史を見ても可能であり、中央銀行の責務であるというふうに思っております。

2%の物価安定目標は達成できると思っておりますけれども、達成できなかったときのことは現時点では考えておりません。達成する、達成しなければならないというふうに思っております。

2%の物価安定目標を決めたわけですから、それはもう、全力を挙げて達成しなければならない、できるだけ早期に達成しなければならないと思っております。

あらゆる手段を講じて、できるだけ早期に2%の物価安定目標を達成するということに尽きると思いますので、何か聖域を設けて、これはもう検討しない、あれはやらないということではなくて、市場の状況、経済の動向に応じて大胆に量的並びに質的な緩和を進めていきたいというふうに思っております。

ほかの中央銀行も、国債は引き受けないということを守っておりますし、財政ファイナンスになるようなことをやらないということも言っておりますので、当然、財政ファイナンスになるようなことは私も全く考えておりません。
ただ、いろいろなルール自体は先ほど申し上げたように2%の物価安定目標を達成するために必要があれば見直していくというのは、ある意味で当然だと思います。

そして、総裁就任会見での宣言

国会でも申し上げましたが、「できることは何でもやる」という姿勢で、2%の物価目標をできるだけ早期に実現することに尽きますので、 前倒しであろうと何であろうと、必要なことは何でもやります。


総裁就任前と異次元金融緩和が始まる前には、財務省幹部にそれぞれこうも言われていたらしい(黒田さんは、元財務省)。

2年と決めて片付ける、勝負をつけないといけない問題なんだ、これは。もたもたしちゃいかん

2年あればいい。2年と言って、実行する。そのぐらいの気合でやらないと駄目だ


これほどまで黒田・前総裁を駆り立てるものは、何だったんだろうなぁ。

つづく


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