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大切な人と過ごす、非日常——trippiece堀真菜実さんの旅

絶景を見に行くこと。
未知の価値観と出会うこと。
大切な人との時間を楽しむこと。

旅には、その人の価値観や大切にしていることが見える瞬間があります。

では、多くの旅を経験した「旅の達人」は、どのように旅を楽しんでいるのでしょうか。

今回お話を伺ったのは、ソーシャル旅行サービス「trippiece」でコミュニティマネージャーを務める堀真菜実さん。trippieceは、ユーザー(公認プランナー)が旅の目的地や楽しみ方などを企画提案し、参加者をサービス上で募集。企画に集まった仲間と、旅行に出かけるWebサービスです。

旅で意識するのは「一緒に行く人と過ごす時間」だという堀さん。旅に関するお仕事に携わるようになったきっかけから、旅の経験や楽しみ方、今後について、お話を伺いました。

堀真菜実さん
trippiece コミュニティマネージャー
早稲田大学国際教養学部卒。大手損害保険会社にて5年間、法人営業に従事。株式会社trippieceへコミュニティマネージャーとして入社。添乗員なし、「はじめまして」のメンバーで理想の旅を作るtrippieceサイトの文化創造に奔走。翌年、同社の事業マネージャーに就任。創業時から赤字続きであったサービスのV字回復を実現。サービス運営の他、自ら200以上の企画を担当。観光局・自治体・旅行代理店へのコンサルティング、人材育成等もおこなう。

夢中な体験を、共有する

——はじめに、堀さんご自身のお話を聞かせてください。堀さんはなぜ旅関連のお仕事を選ばれたのでしょうか?

この仕事をしていると「旅が好きで旅関係の仕事を?」とよく聞かれるんですが、実はそうじゃないんですよ(笑)。私はもともと、人と人をつなげる「場づくり」や「コミュニティづくり」が好きだったんです。トリッピースに入社したきっかけも「旅を軸にコミュニティをつくる」という点に共感したからなんです。

——そうだったんですね。では、「場づくり」や「コミュニティづくり」に関心を持たれたきっかけを教えてください。

社会人になりたての頃に、場づくりの醍醐味を味わった経験からです。当時私は損害保険会社で営業をするかたわら、趣味で「社会人ダンスコミュニティ」を立ち上げ、活動していました。

最初は「ちょっと運動不足だし、やってみたいな」くらいの感覚で始めたもの。メンバーも全員ダンス初心者で、年齢も職業もバラバラでした。ただ、偶然が重なりニューヨークで劇団に所属していたプロの方に教えていただくことになったんです。

そこから、土日はもちろん平日も毎日仕事後に集まって練習を重ねるなど、徐々にみんなの熱量が高まっていきました。活動を始めた1年目にも関わらず、年間3回も自分たちでショーを開催しました。

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——社会人が平日も毎日練習するのは、相当な熱量ですね…!

練習を続ける日々の中で「人生に色がついたよ」とか「今までは職場と家の往復だったけれど、今が一番青春しているよ」という方もいらっしゃいました。ダンスを通しポジティブに変化していく人たちを目の当たりにして、「熱量のあるコミュニティ」をつくる面白さを感じるようになったんです。

——そこからtrippieceへ?

そうですね。バックグラウンドや年齢、職業も関係なく「夢中な体験を共有できる仲間やコミュニティ作り」に携わりたいと思い、出会ったのがtrippieceでした。

ただ、当時はそんなポジションや役割はなかったんです。「旅人コミュニティの真ん中にどっぷり入って、渦をつくるような役割をやりたい」と伝えたところ、その場で社長が「じゃあ作りましょう」と言って、コミュニティマネージャーとして働くことになったんです。

「白砂漠」に、陽が昇る。想像もしなかった体験・光景

——すごい!堀さん専用の役割だったんですね。当時から旅行は好きだったんですか?

そうですね。「仕事にしたい」と思っていたわけではなかったものの、子どもの頃から親がよく旅行に連れてくれていっていたので、旅自体は身近なものでもありました。

特に自分でよく行くようになったのは、大学の卒業旅行でエジプトに行ってからです。

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——何か印象的な出来事があったんですか?

その旅のプロセスすべてが特別なものだったんです。

まずは、メンバー。私は学生時代、英会話カフェでアルバイトをしていたのですが、エジプトにはそこのお客さんと私の計3人で訪れたんです。しかも、特段仲が良かった人とかでもなく、年齢もみんなバラバラ。今振り返っても不思議なんですが、本当その場の勢いで「じゃあ、一緒にエジプトに行こうか!」と決まった旅行だったんですよ(笑)。

——始まりからユニークですね。エジプトではどこに行かれたんですか?

目的地は「白砂漠」でした。ただ、白砂漠はエジプトの南西にあって、一番近くの街から車で5時間くらいの場所。「盗賊が出るかもしれないから」と銃を携えたガイドさんと向かいました。

途中、道端にロバが歩いていたり、英語が通じない街に泊まったり、街に売られているものが砂だらけだったり。街から少し離れて散策をしていると、街から一斉にイスラム教徒の礼拝の合図である「アザーン」という歌のようなものが聴こえてきたりもしました。

また砂漠の夜は寒いので、ドライバーさんがテントを作って焚き火を炊き、鳥を丸焼きにしてみんなで食べたりもしました。旅の始まりから、その道のりまで、何ひとつ想像していなかった体験が続いていったんです。

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——いずれも普段の生活や、観光地への旅では出会えなさそうな体験ですね。目的地だった白砂漠はどうでしたか?

砂漠には夜に着いたんですが、翌朝目が覚めたのが陽が出かかる時間帯。夜だと白さはあまり分からなかったのですが、陽が昇っていくにつれ、一面薄紫だった世界がオレンジになり、だんだん真っ白になっていく。普段の生活からは想像できない、圧倒的に“違う”世界を体感したんです。

その光景が印象的で、それ以降は体験したことのない世界を知りたいと辺境ばかりを旅行するようになりました。

地域の人の想いにふれる旅

——それがきっかけで、積極的に旅行をするようになったんですね。最近訪れた中で印象的な場所はありましたか?

島根県の石見地域ですね。「石見神楽」という伝統芸能を見るために訪れました。石見地域では笛や太鼓囃子に合わせた演舞が、年間を通して各神社の境内などでおこなわれています。実際に見てみると、神楽自体のインパクトもさることながら、地域にその文化が根付き愛されていることが特に印象的でした。

——なぜ、石見神楽が地域の人々から愛されていると感じたのでしょうか?

ちょうど私が鑑賞した時は、演舞が終わった後に鑑賞者との交流タイムがあり、抽選で「神楽で使われていた棒が当たるよ」というコーナーがあったんです。正直私は「棒が当たった人って、どう使うんだろう…」と思ったんですが、当たらなかった子どもがギャン泣きしているんですよ(笑)。

でも、その子は本当にその棒が欲しかったんです。なぜ欲しかったのかを聞いてみると、その子は日頃から「神楽ごっこ」をしていて、そこで使いたいんです。戦隊ものやヒーローのように、「岩見神楽」は地域の子どもたちにも根付いている。地元の人たちで結成される「神楽団」も数多く存在し、若者も多く参加しているそうです。

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——子どもたちの遊びになるくらい、当たり前の存在なんですね。

国内の伝統文化や地域に根付いたディープな文化にも、出会ったことのない価値観や驚きがある。新たな視点が得られた旅だったなと思っています。

旅を通して、大切な人たちと新しい感覚を

——旅先の文化や人との交流も、旅の醍醐味の一つなんですね。旅をする中で、堀さんが大切にしていることはありますか。

大きくは三つあります。一つは「誰かと」非日常を過ごすこと。旅は「日常から少し離れて、仲間や家族、友達と過ごす時間をもつこと」だと思っているので、その人と過ごす時間」を大切にしています。

二つ目は、旅の計画をガチガチに決めずに「余白」をつくること。tirippieceで旅をつくる時も意識しているのですが、例えば日中は40〜50人のバスで団体行動をするとしても、夜の時間はあえて計画を立てず、余白をつくる。すると、ちょっと飲みに出かける、ホテルの近くのスーパーに寄ってみる、街を歩いてみるなど、人それぞれの時間を過ごすことができます。その余白が、想定の範囲外のことや偶然の出会いを生むかもしれない。そんな思いから、余白をつくるようにしています。

三つ目は、「行くこと」を目的にしないこと。ある種”スタンプラリー”のように旅をするのではなく、「その旅で、何をしたいのか」を大切にしています。旅を続けていると、より多くの国を巡るとか、有名スポットにいくとか、それ自体が目的になってしまうことも多いと思うんです。でも行った先で何を経験するか、どう時間を過ごすのか、何かを学ぶのかなど、「過ごし方」に旅の醍醐味があると思っています。

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———この三つが、堀さんらしい旅をする秘訣なんですね。

そうですね。最近、新婚旅行で世界一周旅行をしてきたのですが、その時は「二人らしい時間を過ごす」ことをテーマに二人で過ごし方を決めていきました。

最低限の計画だけ立てて、あとは「余白」とし、その日の体調や気分に合わせて決めていく。一日中海辺で本を読む日もあれば、高級ホテルに泊まる日もあったり、スーパーで買ったごはんで済ます日もある。

最初に訪れた国で台風が直撃し、ルートを大幅に変更するなど大変な瞬間もあったんですが、ガチガチに計画を立てていないからこそ、ハプニングも楽しく乗り切れたのかなと思います。

——余白をもっていたからこそ、アクシデントも楽しめたんですね。お仕事でもプライベートでも旅と向き合う堀さんですが、今後、旅とどう向きあっていきたいですか?

公私とも、「子どもとの旅」を開拓したいなと思っています。というのも、実は私はもう少しで出産予定なんです。ただ、子持ちの旅好きな人からは「子どもがいるとなかなか旅ができない」という声をよく聞くんです。確かにこれまでのように身軽に旅をすることは難しくなる。でも、子どもがいるから旅ができないのは、悲しいなとも思うんです。

「子どもがいるから旅ができない」——ではなく「子どもがいるからこそ」の出会いや体験ができる。そんな旅を、自分自身のためにも、周りの子持ちの旅好きな人のためにもつくっていきたいなと考えています。

——最後に、堀さんにとって「旅」とはなんでしょうか。


大切な人や仲間とともに過ごす時間の中で、新しい感覚を得られるものです。


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