ファーストステップ司法書士12「グルになって虚偽の契約をしたらどうなるの?【通謀虚偽表示】」
【1】意義
上記の事例のように,相手方と通じてする真意でない意思表示,つまり相手方と相談して嘘の契約をすることを通謀虚偽表示といいます(94条1項)。上記の事例では,Aが本当はBに売る気ではない,つまり真意でないにもかかわらずBに売ったことにする虚偽の表示をしています。このような通謀虚偽表示による意思表示の効果は無効となります(94条1項)。ただし,登記など,その虚偽の外観を信じて虚偽表示による買受人から家を買い受けた第三者〔善意の第三者〕が登場した場合には,当事者間の契約が無効であることを第三者に主張することはできなくなります(94条2項)(※1)。
※1 例えば,上記の事例でBがCにその家を売ってしまった場合,AはCに,AB間の売買契約の無効を主張することができません。その結果,Cは所有権を取得することになります。
【2】趣旨
通謀虚偽表示による意思表示は,その契約の内容が嘘だということを自分も相手も分かっているので,この契約を認めるべきではなく,無効となります。ただし,契約当事者以外の第三者から見れば,契約はしっかりされていて,通謀虚偽表示による買受人が所有権を有しているように見えます。第94条2項はそのような外観を信頼した者を保護して取引の安全を図るため,虚偽の外観(嘘の見た目)を作り出したことに責任のある者は,外観が真実でないとの主張を善意の第三者にすることはできません〔権利外観法理〕(※2)。
※2 嘘をついた悪い本人と,その嘘を信じた善意の第三者を天秤にかけ,善意の第三者の方が保護する必要性が高いと考えるわけです。
【3】解答
AとBが通じてした売買契約は通謀虚偽表示に当たるので,このAB間の売買契約は無効となります(94条1項)。
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