伊藤三九|「短歌」×「コント」=タンカトコント

一首の「短歌」の背景にあるドラマを「(読む)コント」に。「短歌」と「コント」の融合。

伊藤三九|「短歌」×「コント」=タンカトコント

一首の「短歌」の背景にあるドラマを「(読む)コント」に。「短歌」と「コント」の融合。

最近の記事

短歌〈拝啓、君へ(お互いネコだったら。そう思える日々でした)敬具〉をコントにしてみると…

女( 玉美)、とあるアパートの1室の前で立っている。深呼吸をした後、チャイムを鳴らす。"ピンポーン"の音。 男( 玉男)、玄関ドアを開ける。 玉男「はーい」 玉美「ノラ猫…です」 玉男「…たまみ?戻ってきてくれたのか!(ドアを大きく開け)何度も連絡したのに!…とにかく入って」 玉美「ここで。ここで大丈夫だから」 玉男「…やり直そう?」 玉美「…」 2人とも無言。 玉美「(無理矢理テンションを上げ)元気してた?」 玉男「うん…元気。俺、(意を決したように)俺が悪かった。

    • 短歌「新月の夜にあなたがくれたのは淡く滲んだ月見バーガー」をコントにしてみると…

      息子、ハンマーで自分の部屋の壁を壊している。 父「いいぞ!ぶっ壊せ!怒りに任せてぶっ壊せ!そうだやれ!」  息子「うるせぇぇ!!」  息子、ハンマーを何度も振りかざし、四方八方の壁がどんどん壊れてゆく。その破片が飛び散り窓ガラスが割れる。 父「俺にも貸せ」 息子、驚く表情。 父、息子からハンマーを取り上げ壁を壊し始める。 息子「な、何やってんだよ」 父「お前みたく、何も考えずに家の壁ぶっ壊してんだよ」 息子「おい!やめろよ!」 息子、父を止めようとするが父はやめな

      • 短歌〈「も」の予測変換「申し訳ありません」を「桃」にするお仕事です〉をコントにしてみると…

        男性2人(先輩・後輩)、富士山の登山道を歩いている。 後輩、立ち止まる。 後輩「先輩…自分、武者ぶるいが止まりません」 先輩「寒いんだろ?」 後輩「はい!」 先輩「"はい!"じゃないよ。富士登山ナメてんの?何で半袖短パンなんだよ」 後輩「社員旅行のしおりに"気軽に富士山!"って書いてあったんで」 先輩「それ、意気込みの部分だから。服装とか装備一式書いてあっただろ?」 後輩「すみません!」 先輩「まったく。それより、立ち止まらずに歩いてくれる?」 後輩「なぜです?」 先輩「な

        • 短歌「ドラマ化も映画化もない平凡な夕日の補助線二人を繋ぐ」をコントにしてみると…

          田舎の駅舎。 白髭の爺さん、トイレの個室内で用を足している。 青年、個室の外で順番を待っている。 青年「まだですか?もう5分くらい経ちますけど。そろそろ限界が…」 爺「まだじゃ」 青年「まだじゃって…。もうホント無理です漏れちゃいますよ」 爺「貴様が漏らそうが漏らすまいが、我が人生に一片の悔いなし」 青年「悔いなしって…この駅、ここしかトイレ無いんですよ」 爺「そうか」 青年「そうかって…。あ、ちょホントにヤバイ」 トイレの個室内からパンッ、パンッという音が聞こえる。

        短歌〈拝啓、君へ(お互いネコだったら。そう思える日々でした)敬具〉をコントにしてみると…

          短歌「強さとは力ではなく真夏日にパピコはんぶん分け合えること」をコントにしてみると…

          男、兜を被り、甲冑姿。 女、縦に長く尖った帽子を被り、羽扇を持っている。 遊園地の入園ゲート前で2人が仁王立ちしている。 女「こんにちは」 男「こんにちは」 女「先日はありがとうございました」 男「こちらこそ。まさかもう一度お会いできるとは」 女「パーティー以外でもお話してみたくて」 男「嬉しいです。婚活パーティー当日以外で再会できた女性は、あなたが初めてです」 女「私もです」 男「そうでしたか!でもこれ…( 甲冑姿を指差し)合ってますか?」 女「お似合いです」 男「なら良

          短歌「強さとは力ではなく真夏日にパピコはんぶん分け合えること」をコントにしてみると…

          短歌「いつも寄り道回り道でもいいかソクラテスさえ星を見ていた」をコントにしてみると…

          デパートの一角に複数の占いブースが並んでいる。そのうちの1つのブース内、占い師(中年女性)と客(若い女性)が机を挟み座っている。 机の上にはタロット、水晶、方位盤等が並ぶ。 占い師「幸せになれるか…ですか?」 客「ええ。私はこのまま進んで行って幸せになれるんだろうか…って最近思うんです」 占い師「結婚や仕事に対して、ですか?」 客「結婚も仕事も全てにおいてです。私は…果たして幸せになれるんだろうかって…」 占い師「なるほど。それで?」 客「それで、ええと…だから占ってほしい

          短歌「いつも寄り道回り道でもいいかソクラテスさえ星を見ていた」をコントにしてみると…

          短歌「走り行く自転車全てに空き缶を紐で結べば日々是花束」をコントにしてみると…

          職員室で先生と生徒が話をしている。 生徒、内股で低身長、メガネを掛け、ヘルメットを被っている。 先生「先生な、お前の為を思って言ってるんだぞ?どういうつもりなんだ?」 生徒「だから書いた通りだって言ってるだろ!」 先生「書いた通りってお前…先生、教師になって30年になるが、こんな進路希望を見たのは初めてだ」 生徒「良かったじゃねえか?記念すべき第一号を見れてめでたいな」 先生「何もめでたくない!意味を教えてくれ意味を…」 生徒「だから書いてある通りだって言ってんだろ!」 先

          短歌「走り行く自転車全てに空き缶を紐で結べば日々是花束」をコントにしてみると…

          短歌〈駅トイレの落書き「もうダメだ」「コノ野郎」「幸せになれ」を結ぶ〉をコントにしてみると…

          女子プロレスラー(顔ペイント有)、ペットショップでクリアケース越しに小犬を見ている。 やがて、近くにいる女性店員に声を掛ける。 プロ「すみません。犬をお借りしたいのですが」 店員「ご購入ですね。どのワンちゃんにしましょう?」 プロ「あ、いえ。買うのではなく借りたいんです」 店員「借りる?あ、ええと、当店はペットショップでして…販売だけなんです」 プロ「…事情があっても、ですか?」 店員「ご事情…ですか?」 プロ「はい」 店員「(困惑しながら)それはどういった?」 プロ「(近

          短歌〈駅トイレの落書き「もうダメだ」「コノ野郎」「幸せになれ」を結ぶ〉をコントにしてみると…

          短歌〈「いらっしゃいませ温めますか」と「月が綺麗ですね」は同じ、でいい?〉をコントにしてみると…

          コンビニの控え室。 2人の男性が話している。 店員1「あ、初めましてー」 店員2「ハジメマシテー」 店長1「シフト被るの初めてですね。どこの国の方でしたっけ?」 店員2「ヌ、ネパールデス」 店員1「ヒマラヤ山脈があるとこ、で合ってますか?」  店員2「ソデスネ。デッカいヤマありマス」  店員1「当たった!…この仕事慣れました?難しいことあれば聞いて下さいね!」 店員2「アリガトゴザマス。にっぽんごムズカシクテ」 店員1「そうですか。自分、大学で日本文学を専攻してて…興味本位

          短歌〈「いらっしゃいませ温めますか」と「月が綺麗ですね」は同じ、でいい?〉をコントにしてみると…

          短歌「歌姫の熱唱する間の息継ぎは世界の温度を少し上げてく」をコントにしてみると…

          電車内。男性2人が横並びに座っている。 婿「急にすみませんでした」 義理の父「いや、いいけど。びっくりしたよ」 婿「そうですよね。ご自宅に伺おうかと思ったんですが、1人だと何だか行きづらくて」 義理の父「まぁそうかもしれないね。義理の父を1人で訪ねるなんて」 婿「はい」 義理の父「今日、茉莉奈は?」 婿「家にいます。琥太郎と一緒に」 義理の父「そうか。いつも娘をありがとう。琥太郎もすくすく育っているようで何よりだ」 婿「やっぱり孫は可愛いですか?」 義理の父「そりゃ可愛いさ

          短歌「歌姫の熱唱する間の息継ぎは世界の温度を少し上げてく」をコントにしてみると…

          短歌「留守電に鼻歌残す君がいて秒で世界を変えてゆくなよ」をコントにしてみると…

          中年女性(不動産会社)が中年男性(移住者)に対し、物件を案内中。 女性「申し遅れました。わたくし、(名刺を渡しながら)GB不動産の玉坂と申します」 男性「あ、どうもご丁寧に。頂戴します」 女性「(手を広げながら)いかがですかぁ?」 男性「いやー広くて良いですね。元々は別荘ですか?」 女性「そうですね。以前お住まいになられていたオーナー様が別荘として利用していました」 男性「そうですか。暖炉も素敵だー」 女性「そうでしょう?この辺りは、雪が降りますから」 男性「東京とは…違う

          短歌「留守電に鼻歌残す君がいて秒で世界を変えてゆくなよ」をコントにしてみると…

          短歌「"エレクトリカルパレードかよ"って言う君の水晶体に映るアリの行進」をコントにしてみると…

          公園。男性がベンチに腰掛けている。 少年、友達に「待っててすぐ戻るー」と言いながら男性に近づいてゆく。 少年「おじさん。生きてる?」 男性「ん?君は誰かな?」 少年「そこで皆で遊んでたんだけど、ベンチに銅像が置かれてるって」 男性「銅像?あ、おじさんのこと?おじさんは銅像じゃなくて生身の人だよ」 少年「だよね。銅像にしては作りが安っぽいし」 男性「失礼だね」 少年「でも生きてて良かった」  男性「ああ。ありがとう」 少年「じゃあねー」 男性「バイバイ」 少年、立ち去る。 

          短歌「"エレクトリカルパレードかよ"って言う君の水晶体に映るアリの行進」をコントにしてみると…

          短歌「薮の中きらめく姿隠しをり己の居場所みつけた日から」をコントにしてみると…

          会議室に男性と女性が2人座っている。 男性「今日はようこそお越しくださいました」 女性「(周囲を見渡しながら)こちらがベンチャーキャピタル、という会社ですか?」 男性「はい。会社名ではありませんが、ベンチャーキャピタル、VCなんて呼ばれています」 女性「お金を投資して頂けるんですよね?」 男性「はい。優れたベンチャー企業に対し積極的に投資する。それが当社の仕事です」 女性「良かった。私、初めて会社を興したもので。右も左も分からなくって…」 男性「大丈夫ですよ。まずは御社の会

          短歌「薮の中きらめく姿隠しをり己の居場所みつけた日から」をコントにしてみると…

          短歌「フーテンの風が吹くまま旅に出るシナモンロールひとつ握って」をコントにしてみると…

          母親と息子(スーツ姿)が台所で会話中。 母親は食器洗いをしている。 息子「(真剣な表情で)いいのか!家出するぞ?」 母親「行ってきなさい。寒くないようにね」 息子「引き止めるなら今だぞ!」 母親「はいはい。引き止めないから行っといでって」 息子「いいんだな!本当に行くからな!」  母親「はいはい、行ってらっしゃい」 息子が母に背を向け歩き出し、一旦止まり、 息子「…最後の最後の確認だ。本当にいいんだな?」 母親「…アンタさぁ…何回やんのよこのくだり」 息子「(笑顔で振り

          短歌「フーテンの風が吹くまま旅に出るシナモンロールひとつ握って」をコントにしてみると…

          短歌「教室で描いた星の絵十年後やっと光を受け取るわたし」をコントにしてみると…

          私立中学校の教室。放課後。学ランを着た男子生徒が自分のロッカーをひっくり返し何かを探している。先生、入ってくる。 先生「お前まだ帰ってなかったのか?」 生徒「これ終わったら帰ります」 先生、生徒の足元を見て、 「どうしたんだ裸足で?上履きどうした?」 「無いんです。多分、散歩に出掛けてるんだと思います」 「上履きは散歩に行かないぞ」 「そうなんですか?」 「そりゃそうだろ。何言ってるんだ?」 「じゃ、どこ行っちゃったんだろう。僕の上履き」 先生、駆け寄り、 「お前…まさ

          短歌「教室で描いた星の絵十年後やっと光を受け取るわたし」をコントにしてみると…

          短歌〈ウィンカー君は左で僕は右また交差するいつか信じて〉をコントにしてみると…

          険しい表情の男女。 女「(泣きそうになりながら)別れたいの?」 男「そんなこと言ってないって」 女「(ハンカチを目に当てながら)でも本当は別れたいんでしょ?」 男「だから、そんなことないって」 女「(ハンカチを地面に叩きつけ)嘘!そんなの嘘!心の中では別れたいと思ってるんでしょ!」 女、男から少し離れハンカチで涙を拭う。 男「じゃ…別れるか?」 女「(すぐさま駆け寄り)ウソウソごめーん。マー君ごめーん。ウソ。地獄の果てまで追いかけるくらいウソ」 男「どういう意味だよ…嘘が

          短歌〈ウィンカー君は左で僕は右また交差するいつか信じて〉をコントにしてみると…