短歌〈「いらっしゃいませ温めますか」と「月が綺麗ですね」は同じ、でいい?〉をコントにしてみると…

コンビニの控え室。
2人の男性が話している。

店員1「あ、初めましてー」
店員2「ハジメマシテー」
店長1「シフト被るの初めてですね。どこの国の方でしたっけ?」
店員2「ヌ、ネパールデス」
店員1「ヒマラヤ山脈があるとこ、で合ってますか?」 
店員2「ソデスネ。デッカいヤマありマス」 
店員1「当たった!…この仕事慣れました?難しいことあれば聞いて下さいね!」
店員2「アリガトゴザマス。にっぽんごムズカシクテ」
店員1「そうですか。自分、大学で日本文学を専攻してて…興味本位で聞いてもいいですか?」
店員2「ア、ハイ」
店員1「日本語のどんなところが難しく感じます?」
店員2「ソデスネー。オナジいみデ、チガウことばアルトコロですね」
店員1「同じ意味で違う言葉?例えば?」
店員2「ワタシ、とか」
店員1「私?」
店員2「ハイ。ワタシ、ボク、ジブン、オレ、あたい、あっし。ぜんぶオナジデスネ?」
店員1「お、おう。そう言われてみると同じ意味っすね」
店員2「ソデショ?」
店員1「そうですね。ちなみに、"ナマステー"ってよく聞きますけど、あれはどういう意味ですか?」
店員2「ナマステは、オハヨウ、コンニチワ、サヨナラ、コンバンワ、ぜんぶイケるマホウノコトバ!」
店員1「えっ?ナマステ一言でそんなカバーするんですか?魔法じゃん!」
店員2「ソウネ。コトバゆうヨリカもはやマホウネ!」
店員1「なるほど」
店員2「ダカラ、コマッタラ"ナマステー"いっとけばダイジョブ」
店員1「そうですかぁーそりゃ日本語が難しく感じるのも分かるかも」
店員2「ワタシもシツモンいい?」
店員1「質問?もちろんどうぞ!」
店員2「アナタハ、ナゼココでハタライテる?カネ?」
店員1「いや、お金もそうなんですけど…惚れちゃいまして…ね」
店員2「ホレチャ?ラテ?とーる?グランデ?」
店員1「あ、いやいや。飲み物じゃなくて。惚れるってのは好きって意味です。ラブね、ラブ」
店員2「アーソユいみネ!ナマステー!」
店員1「合ってます?その"ナマステー"合ってます?」
店員2「ダイタイでイイね。デ、(流暢に)実ったの?」
店員1「(指さしながら)すっごい滑らか!あれ?もしかして日本語ペラペラですか?」
店員2「イヤ、タマタマネ。デ、(流暢に)実ったの?」
店員1「(首をかしげながら)いやーまだ話せてもないんですよ。シフト全然かぶんないですし」
店員2「ア、ソノコはココでハタライテル。ダカラ、アナタココでハタラク。そゆイミね?」
店員1「はい、その通りです」
店員2「フジュンネー、トッテモフジュンでイイネェー」
店員1「不純なのにいいんですか?」
店員2「イイヨぉーリユウはフジュンでアレバアルホドイイカラ。で、デアイはドンナダッタ?」
店員1「出会った時?」
店員2「ソユッテるデショ!(馴れ馴れしく笑顔で)ハヤクオシエろヨォ!」
店員1「あ、はい。出会いは、自分がここのコンビニにお客として来てて、その子がレジやってた時ですね」
店員2「サヨウですカ」
店員1「さ、左様です。で、もう猛烈にビビビと来たんですよ」
店員2「ム?ム、デスカ?ビ、デスカ?…ムセカエルヨウナビリヤニ?」
店員1「言ってない。ビリヤニ言ってない。てか、むせかえるって、よく知ってますね。本当は日本語ペラペラなんじゃ?」
店員2「ソンナコトナイよ」
店員1「そうですか?まいいか。で、ビビビと来たから聞いたんです」
店員2「ナニをキイタノ?」
店員1「お付き合いしてる方とかいますか?って」
店員2「パートナーってイミネ?」
店員1「そうです」
店員2「ソシタラ?」
店員1「スミマセンって」
店員2「(ヘラヘラ笑い指さし)フラれてヤンの」
店員1「ちょっと!もはや母国語のように使ってるじゃん!」
店員2「イヤ、ワラウトコかとオモテ」
店員1「笑うとこじゃないですから」
店員2「ナマステー!ソレデ、おなじバイトハジメタてコト?」
店員1「そうですね」
店員2「ヤベェな。オナジバイトさきにツトメルとかヤベェな!」
店員1「ヤバくはないっすよ。てかもう自分のことはいいですから。ネパールのこと教えて下さいよ。どんな国なんですか?」
店員2「ネパール?ネパールもイイクニよ。バショてきニハ、オトナリサンがインド、チュウゴクネ」
店員1「海には面してないんですね。特徴とかあります?」
店員2「ネパールは、みんなカゾクなカンジ」
店員1「みんな家族みたい?」
店員2「ソウネ。ミンナが"オマエいけっかー?"ミタイニいきてるカンジ」
店員1「助け合ってる、的な?」
店員2「ソンナカンジ」
店員1「そうなんですか。全然知らなかったです。国民性は?あ、ええと、国民性っていうのは、どんな性格の人が多いですか?」
店員2「セイカクは…ダイタイネ」
店員1「大雑把な人が多い?」
店員2「ソウ。コマカイことキニシナイひとオオイ」
店員1「何となく分かるかも」
店員2「ん?ナニ?」
店員1「いや何でもないっす。それで?」
店員2「ユルイからコマルコトあるケド、ナントカやってマス」
店員1「そうですか」
店員2「てかオマエ、ニホンブンガクせんこうダロ?」
店員1「え?あ、はい」
店員2「ナツメシッテル?」
店員1「夏目?夏目漱石のことですか?」
店員2「ソウネ。カレ、イロンナことばヤクシタダロ?」
店員1「翻訳してますよね」
店員2「ワタシダっタラ、"オツキアイしてるヒトイマスカ?"なんてキカナイヨ」
店員1「そうですか?じゃ、なんて聞きます?」
店員2「ソネー。タトエバ、オマエがベントかうトスルだろ?」
店員1「お弁当を買う、ですね、はい」
店員2「ソシタラいえばイイ」
店員1「何て?」
店員2「"イラッシャイマセあたためマスカ"と"ツキガキレイですネ"はオナジでイイ?て」
店員1「めちゃくちゃ高度に使うじゃん!」
店員2「ソウ?」
店員1「日本語に精通してない?」
店員2「シテナイヨ。キョウシュクデス」
店員1「それ!その"恐縮です"とかそういうとこ!…てか、夏目漱石が"I Love You"を"月が綺麗ですね"と訳したことよく知ってますね!そんで、それをそこで使います?機微ですよ機微!」
店員2「アーモウ、ムツカシイニッポンごレンパツするネェ。ぜんぜんワカラナイヨォ」
店員1「本当に分かりません?分からないふりしてるんじゃ…?脳ある鷹は爪を隠すって言うじゃないですか?」
店員2「トンビガタカをウンダ、テキナ?」
店員1「ほら!そういうとこ!絶対分からないフリしてるわぁー」
店員2「シテナイ、シテナイ」
店員1「郷に入りては郷に従えって言いますよね?」
店員2「…(首をかしげる)サァ」
店員1「あくまでも"分からない"で通すんですね、無理矢理」
店員2「ビリヤニ?」
店員1「言ってなーい!」
店員2「ナマステー!」


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