書くこととは、浸ることである
回想昔、高校の教科書に掲載されていた梶井基次郎の「檸檬」が好きだった。今ではほとんど内容も忘れてしまったが、その代名詞とも言える「見すぼらしくて美しいもの」という言葉はよく覚えている。小説の中では壊れかかった街のような一般的には美しくはないものに惹かれた心境が書かれている。
高校時代スポーツ推薦で大学に行こうと決めていた僕は、クラスメイトが受験勉強を終える時刻まで汗を流していることがあった。その帰り道、暗がりを照らす国道沿いのセメント工場の人工的な明かりによく心惹かれていた