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なぜ今cyberpunk edgerunners,チェンソーマンが人気なのか?カルトアニメ世代間主人公論が面白かった

世代間におけるアニメの主人公の変遷

今回は漫画家兼youtuber山田玲司のすゝめです。
"山田玲司のヤングサンデー"というアニメ解説系youtubeの中を抜粋、自分で要約して面白かった部分を振り返ってみました。
アニメを語る時はキャラが可愛いとか、あのOP良かったとか、バッドエンドでやばかったとかそういう話になりがちですよね
この山田玲司さんというyoutuberはアニメと社会問題、世代論がすごく秀逸な人で、
・このアニメはどんな時代背景から生まれているのか?
・どんな理由で若者世代に支持されているのか?
というアニメを時代と共に分析していく回がめっちゃ面白かったので共有します。
チェンソーマンを例に出していますがチェンソーマンって何が面白いの?ということが出てきた時代を席巻したカルトアニメなどを分析することで理解しやすいです。
少し自分の考えも入っていますが、年代ごとの人気だったアニメの主人公像の分析を紹介します。


80年代の主人公像

▼80年代の時代背景
・不良文化
・校内暴力、体罰
・ギャル
・hiphop
・バブル絶頂
・日本経済最高潮時代
・かつて考えていたSFの世界が到来するという期待

▼出てきたアニメ
・SLAM DUNK
・AKIRA

▼80年代のアニメの特徴
この時代の若者の特徴は抑圧されつつも自由を求めるエネルギーが漂っていて、まさに尾崎豊の15の夜を彷彿とさせます。
主人公の根底に流れるメンタルとしての共通項は"不良"でしょうか。
流行っていた主人公像を見てみるとSLAM DANKやAKIRAはどちらも不良が主人公でカリスマ性があります。
主人公像は全能感に溢れ、バカで、それでも前向きで、自分自身に対して特別感を感じており自信があります。
そしてBIGな夢を掲げ成功へと一直線へ突き進み、後先考えない刹那的な"今"を生きるのが特徴です。
まさにバブル全盛の時代を象徴しているのではないでしょうか。

「「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本のときか? オレは………オレは今なんだよ!!」
by 桜木花道

SLUM DUNK


90年代の主人公像

▼90年代の時代背景
・バブル崩壊
・加熱する受験戦争
・引きこもり
・就職氷河期
・非正規雇用の増加
・殺人事件の増加
・オウム真理教の一連のテロ事件
・ノストラダムスの終末論
・個人商店街の崩壊 ショッピングモールの台頭
・核家族化
・インターネットの発達 2chなど
・湾岸戦争
・崩壊した経済の中で学生も大人も少ない席を争う様な時代

▼出てきたアニメ
・エヴァンゲリオン
・攻殻機動隊

▼90年代のアニメの特徴
子どもの地域の交流の場であった商店街は過疎化していき、家族も核家族化が進み、学校では受験戦争に巻き込まれて家庭の中で孤立していきます。
親は子どもに構っている暇はなくバブル崩壊の中で混乱し、若者も大学を卒業しているのに就職氷河期で職にあぶれ、非正規雇用が増加し多くの大人が路頭に迷います。
この年代のアニメの主人公像を表すなら碇シンジの様な"暗い引きこもり"です。

学校生活から落ちこぼれた子ども、就活戦争から敗退した大人は引きこもりになり社会現象になっていくような不安な時代がエヴァンゲリオンの親子関係や攻殻機動隊の 引きこもりの少年が引き起こす笑い男事件などが時代を代表してカルト的な共感を呼んでいたのではないでしょうか。

攻殻機動隊の笑い男事件の犯人の言葉はこの90年代の10代を象徴しているような気がします。

「僕は耳と目を閉じ口を噤んだ人間になろうと考えたんだ」
by 笑い男

攻殻機動隊


00年代の主人公像

▼年代の時代背景
・世紀末を過ぎて終わらなかった世界
・失われた10年(不景気)
・浮きも沈みもしない永遠に日常が続きそうなモラトリアム
・バブル崩壊後の"諦め"

▼出てきたアニメ
・涼宮ハルヒの憂鬱
・銀魂
・けいおん!


▼00年代のアニメの特徴
涼宮ハルヒのエンドレスエイトなどはこの時代の象徴たるものではないかなと思います。
ノストラダムスの予言した世紀末終末の向こうにぬるりと足を踏み入れてしまい、そのまま失われた十年が過ぎていくような00年代。
そこには破壊も再生もなく、いよいよ僕らは大人になれないのではないかと永遠のモラトリアムを過ごしているゆとり世代の若者が多くいたのではないかと思います。
そして彼らを正当化し、救済するようなまるで田舎のマイルドヤンキーが主人公のような日常アニメが流行っています。
主人公像として共通するのは"マイルドヤンキー"というキーワードです。
田舎のヤンキーはテキトーに周りのツレを選び、体制としての制服を纏わずむしろ反体制として存在することを選びます。
銀魂も坂田金時の反対には新撰組や幕府がおり、涼宮ハルヒが対立するのは退屈な学校そのものです。
そして敵が現れたら仲間を守り、彼らの内輪を守るために全力で戦います。

学校に縛られながらもゆとり世代は個性を発揮しろと言われたことの反動としてのキャラクターが涼宮ハルヒなのかもしれません。

「あんただってつまんない世界にうんざりしてんじゃないの!?」
byハルヒ

涼宮ハルヒの憂鬱

10年代の主人公像

▼時代背景
・失われた20年へ景気はさらに悪化
・消費税増税
・自民党から民主党へ
・トランプ大統領のアメリカ第一主義
・コロナウイルス
・コロナによる失業率増加や在宅勤務による孤立
・中国の世界進出、香港統合
・3.11 大震災

▼出てきたアニメ

・進撃の巨人
・鬼滅の刃

▼10年代のアニメの特徴
この年代のカルトアニメは日本が世界に対して国家、組織として大きな敵との戦いのテーマが多いです。
不景気で経済が悪化する中でコロナや地震など向こうからやってくる恐怖が多かった10年でした。
主人公像に共通するのは、
"真面目で、誠実に暮らしていたのに向こうから敵がやってきて身内を蝕んでしまった。世界の片隅で平和に暮らそうと思っていたのに世界は残酷だった"
ということでしょうか。
そこにBIGになろうとする主人公もマイルドヤンキーも、鬱になった主人公もいません。
もはや戦いを忌避してはいられず、災いは向こうからやってくるようになったということを知った主人公は組織に属し、復讐を考えます。
炭治郎は鬼滅隊に、エレンは調査兵団に属し、徹底的に敵と戦う道を選んでいくというのがこの時代を象徴したカルトアニメの特徴です。


「駆逐してやる!! この世から…一匹…残らず!!」
by エレン・イェーガー

進撃の巨人

20年代の主人公像

▼時代背景
・失われた30年 消費税増税
・続く不景気による格差拡大
・政治と宗教の癒着 統一教会問題
・オリンピックによる汚職
・続くコロナウイルス
・親ガチャ
・パパ活

▼出てきたアニメ
・チェンソーマン
・cyberpunkエッジランナーズ

▼20年代のアニメの特徴
この年代のアニメの特徴はもはや主人公は鬼滅や進撃の巨人の主人公のような制服も着ておらず、世間から認められるカッコいい仕事をしていないです。
資本主義がいくところまで行き、政治は腐敗し、もはや国家は巨大企業の支配下にあります。
チェンソーマンのデンジは公安にこき使われるゾンビ処理班の様な末端の仕事をしていて、cyberpunkのデイヴィッドは街のヤクザにこき使われるチンピラです。死んだらおしまいで企業と呼べるような体制も福利厚生もクソもありません。
エレンのような制服を着るホワイトカラーからブルーカラーと呼ばれる職種に移行しています。
上にこき使われており、デンジとパワーやエッジランナーズそれぞれの社会には仲間をメリットデメリットで即座に裏切るというマインドがあります。
信用もなければ、社会自体を諦めていて夢すら見ていません。
高尚な夢を見ず、三大欲求は満たせるならありがたいという思想のないゾンビ状態です。
どんなに死に近い仕事でも朝ご飯でトーストにジャムを塗った朝ご飯さえ出て来れば満足なのです。
デンジは親の借金まみれで食べ物すら満足に食べられず、一生女の人とは遊べないんだろうなと思っていて、デイビッドも親も過労で亡くなって路頭に迷っています。
すごく生活がリアルで、今の若者を表しているのではないでしょうか。
格差拡大やコロナで生活が脅かされそして孤独で友達も少ない。
働いても働いても税金で半分持っていかれて手元には生活する金すら残らない。老人が詰まっており出世する気配もなければ政治が動く様子もない。
そしてどちらも家族と呼べる家族はおらず、この失われた30年で疲弊し家族関係は既に崩壊、父親はどこかにいったままです。
エレンイエーガーや炭治郎たちが"真面目に生きていたらある日敵が来て日常を壊され絶望した"というストーリーなら、デンジやデイビッドは"生まれた時からもう生活は蹂躙されていて焼け野原だった"ではないでしょうか。
そして絶望の中で表情には出さないがこの何も味方がいない不条理な世界にぶちギレる瞬間があってそれがチェーンソーを生やして暴れるしかないということなのかもしれません。
この世界は死んだ方がマシだが、死ぬことすら面倒くさい。
そして暗くて辛い世界ならメンタルまで暗くせず明るく生きたい。
絶望に慣れきって、死と遊べるような悟ったような若者のメンタルがこう言わせるのかもしれません。

「復讐なんて暗くて嫌だね」
by デンジ

チェンソーマン


まとめ

いかがだったでしょうか。
全てのアニメをこの様な事例に当てはまるとは一概には言えませんが、一世を風靡したカルトアニメと呼ばれるアニメの主人公たちは時代の要請に従って現れたのではないかと疑うほど、各年代の出来事や時代を象徴しています。
アニメをこういった世代論で考えたことがなかったので、
日本アニメをこういう時代の流れの中で見ていくととても興味深いですよね
流行っているもの、人気があるものの向こう側をみると鏡に映し出されたように世相が見えてきます。
同時に2030年代は夢の中に現実逃避主人公か海外出稼ぎ主人公にでもなるのだろうか。。。という絶望が大きいです。
また実際の年代別の人でみても戦後〜就職氷河期以前の人たちは結構ヤンキーマインドを持っていて、Z世代からみると価値観違うなぁと思うことが多いです。
団塊世代は成り上がる代わりに俺の分前は当たり前であったり、上下関係の強さが強いという印象ですが、
就職氷河期〜Z世代は散々割りを食って現実と戦ってきて調査兵団の様な目をしている人が多いです笑
個人的にZ世代ですが上世代に対しても団塊世代が作り上げた社会へのリスペクトはないが虐げられてきて暗い時代を生き抜いてきた就職氷河期世代へのリスペクトは強いです。
また、山田玲司さんのyoutubeはアニメ以外のジャンル、小説や映画も網羅されていて考察が深く面白いです。
例えば若者と女性論、東大全共闘 vs 三島由紀夫の映画の考察などはすごく良かったのでおすすめです。

ぜひ見てみてください。

おわり

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