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#29「 愛国心:アメリカ独立記念日より」

*カバー写真は散歩に行った近所の海岸線より

アメリカの独立記念日ほどアメリカ人の「愛国心」を感じない日はないでしょう。
これまで4回の独立記念日をこのアメリカで過ごしていますが、毎年感じることは違えどアメリカ国民の愛国心の高さには毎年びっくりです。

独立記念日のパブリックイベントに行った時、国家を聴きながら、胸に手を当て、泣いている人々に囲まれた時は、彼らの気持ちに僕まで感動してしまったほどです。

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↑昨年のIndependence Dayのイベント

日本とアメリカだとこの「愛国心」という言葉への感じ方や、捉え方が違っているのは明らかですが、今日はその辺について感じることを書いてみます。

定義

愛国心とは英語ではPatriotism (パトリオティズム? ペイトリオティズム?)といいますが、愛国心の定義はデジタル大辞泉では


「自分の国を愛し、国の名誉・存続などのために行動しようとする心。祖国愛。」

英語では

 “devoted love, support, and defense of one's country; national loyalty” (dictionary.com)

とあります。

日本:愛国心へのアレルギー反応

「愛国心」という言葉に対して何かわからないアレルギー反応がある日本人、きっと多いと思います。ただ、愛国心がないかと言われたらそんなことはないと思います。
自分の国を愛して、自分の国を思う心。サッカーの日本代表が試合前に胸に手を当てて「君が代」を歌う姿に感動を覚えるのは立派な「愛国心」でしょう。
一方で駅前でよく見かける、日の丸の国旗を掲げた右翼団体の街宣車から流れるメッセージも、日本人の多くが持つ「愛国・愛国主義・愛国者」へのイメージの一つではないでしょうか。

改めて愛国について考えると、そこには必ず上記のような右翼左翼のような「政治思想」や、「宗教」の問題が複雑に絡み合ってくるし、事実これらなしでは愛国について考えられないのも事実です。
また愛国を考えると「ナショナリズム」との関連性もよく議論になります。
この辺りに関しては、いろんな政治・宗教学者さんが研究されているのでそのあたりも勉強するのも面白いですね。

アメリカの愛国心

「独立記念日の日は、アメリカでは共和党派も民主党派も関係ない、アメリカ国民だ!」
なんてどこかで誰かが言っていたことを覚えていますが、政治思想を抜きにして国を思う日がアメリカ人にとっての独立記念日なんでしょう。
スーパーにはアメリカの国旗がプリントされた風船やグッズが並び、その他のお店もIndependence Day Saleなんていって安くなったりします。
でも、こんなにも多民族、多人種の国でなぜここまで国として一つにまとまるのでしょうか。僕の考える理由はズバリ2つです。

理由①教育
理由②宗教

①教育

忠誠の誓い」って聞いたことありませんか?
僕自身はアメリカの公立の小中高に通ったことがないので経験したことはないのですが、これは英語では”Flag Ceremony”と呼ばれるアメリカの国旗に向かい、右手を胸に当てアメリカ合衆国への忠誠を誓う儀式のようなものです。暗唱する文章が“Pledge of Allegiance” = “忠誠の誓い”と呼ばれているので、友達とかは”Pledge”と呼んでいました。

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実際、何を言っているのか。

“I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.”
「私はアメリカ合衆国国旗と、それが象徴する、万民のための自由と正義を備えた、神の下の分割すべからざる一国家である共和国に、忠誠を誓います」

これを毎朝、ホームルームのような時間で全員で暗唱するのです。
友達はアメリカ国民ではなかったですが、義務として強制的にさせられていたと言っていました。実際、これ合衆国憲法にある信条の自由に反するという訴えで、訴訟問題にもなっているようですが…

背景を簡単に調べてみると、1940年代になって移民が増えてきたときに、どのようにして多民族の国を一つの国家として統一していくのかという課題が出てきました。そこで、国旗に対する敬礼とこの「忠誠の誓い」を復唱することが採用され、州や連邦レベルで法律が制定されてきたようですね。

最近の話で言えば、ステイホームになって近所の人たちで毎朝、”Pledge of Allegiance”を暗唱する様子が、ニュースで取り上げられていました。

②宗教

新しくアメリカの大統領になる人が、全国民の前で宣誓するときに手を置く本、何か知っていますか?
正解:「聖書」です。

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先ほど述べたように信条の自由が合衆国憲法でも保障されているのですが、大統領が任命の宣誓をする際は、キリスト教の聖典である、「聖書」の上に手を置いて誓うわけです。
「政教分離で信仰の自由を約束しているのにおかしいじゃないか」という批判は近年多いのは確かです。
矛盾といえば矛盾なのですが、アメリカはキリスト教国家として誕生し、キリスト教信者が基盤となっている国です。
近年そのデモグラフィックは大きく変化してきていますが、未だマジョリティが白人のキリスト教徒という国の構図は変わっていないのが現状です。

アメリカって教会がめちゃくちゃ多いのですが、この教会は宗派に限らず夏にはサマーキャンプが各地で行われます。
そういう場所でももちろん「忠誠の誓い」は暗唱されるのですが、この教会=キリスト教と愛国は重要な相関関係があるのだと思います。

大学で宗教の授業を受けていたときに、あるクラスメートが
「神の意志によってこのアメリカが生まれ、存在している」という意見を言っていました。これってかなり愛国的な発言だと思いませんか?彼がキリスト教徒であるうちは、つまり彼はアメリカの愛国者なわけです。(なぜか響が悪いですね...)
彼はもともとかなり原理主義的な考え方を持っていて、そういう人が主流ではないので一概に言えないのも事実ですが、キリスト教と愛国心が重なり合うバランスの良いところでアメリカ人の愛国心も発展しているのかなと思います。

最後に

本来、自分の国を思う気持ちってとても美しいことだし、そういう気持ちは多くの人が持ち合わせているのだと思います。
ただ、政治思想や宗教の違いで、事実とは違う表現方法や、行動に発展したりすることが多いのではないでしょうか。
また時には国家や体制が人々の純粋な「愛国心」を利用することもあるのでしょう。
僕は日本人に生まれたからには、日本人として誇りを持って生きたいし、海外に住む日本人として国際社会で恥ずかしくない日本人としてこれからも生きたい。
アメリカの独立記念日は、僕には直接関係ないように見えるけれども、毎年そんな風に思わさせてくれます。

以上、アメリカの独立記念日で考えたことでした。
日本ではいよいよコロナ第二波が来たのでしょうか。健康には十分お気をつけて。
ほなまた。


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