エッセイ | 植物を愛でる
子供の頃はよく両親に連れられ春は桜を見にいき、秋は紅葉を見に行くなど『植物を見る』ということがよくあった。
その度に「大人は植物が好きなんだな」と思っていて、こちらはすごくつまらない思いをしていた記憶が残っている。
コーヒーが飲めるようになるように、ふきのとうが美味しいと感じるようになるように、植物を見ることが楽しくなる日がいつか来ると思っていた。
中学生の頃にブラックコーヒーが飲めるようになった。
高校生の頃にはふきのとうが美味しいと感じるようになった。
それなのに大学を卒業しても植物に対しては何も感じなかった。
桜を見ても紅葉を見ても、あの頃の両親のように感動はできない。
感性が子供なんだなとからかわれることもあったが、「まだまだ若いんだよ」と言い返していた。
就職してから4年ほどたった時、友達と一緒に長野に行ったことがある。
宿場町を観光していたときにそば屋の入り口にある水鉢に花が浮かんでいるのを見つけた。
何の気なしに見ていたのだが、風で動く花や、花が作る波紋を『キレイだ』と感じて写真を撮っていた。
人生が終わったと感じた。
それ以降は春は桜が美しい。
夏は新緑が美しい。
秋は紅葉が美しい。
冬は雪景色が美しい。
そう感じると一年中見える景色に感動できるようになり、時間が過ぎるのも早く感じるようになった。
これが大人になるということかと思うのと同時に、このスピード感で一年が過ぎていくのは嫌だなとも思えた。
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