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エッセイ | この話題は店内利用でお願いします

会話をするのは楽しい。自分から話題を振って話をするのもいいし、なんなら相手の話を聞くだけでも私は十分楽しめる。

久しぶりに会う友だちとの会話は2時間では足りないくらいだ。気付くと半日くらいたっていることがザラにある。お昼ごはんを食べ、カフェに行き、また別のカフェに行き、最後は公園をフラフラしながら会話をしている。


最近、仲良くなった人とカフェで話をしていたことがある。学生の頃から友だちというわけではないため、まだ距離感がつかめずにいてもどかしい。

お互いの仕事の話をしながら愚痴を言い合い、最近行った旅行先で良かったスポットの話などをしていた。

私は音楽や漫画、コーヒーが好きなため、そういった話をしたかったのだが、相手はそうでないかもしれないと思いためらってしまう。恐らく相手もそういった考え方だったようで、あまり深い話にはならない。

当たり障りのない、つまらないわけではない会話が淡々と続いていく。

「本を読む時って紙派ですか? それとも電子書籍派ですか?」不意にそんな質問がくる。本の話ができると思い、私はうれしくなった。

「電子書籍派です。前までは紙で買っていたのですが、電子書籍の方が手軽でいいかなと思って」私の考えはつらつらと口から音になって出てくる。

「電子書籍も手軽で良いですよね。紙の本も手で質感を得られるのが良いのですけど、どんどん場所をとってしまうんですよね」相手も電子書籍派のようで、私は敵を作らずに済んで良かったと安心する。


「電子書籍で読む時は何のアプリを使っていますか?」「楽天をよく使います。たまにKindleとDMMも使っています」と私は答えたが、アプリの話になるとは思いもしなかった。「DMMはたまに安くなりますよね」わかります、と笑いながらコーヒーを飲んでいた。私も「そうなんですよ」と言って一口コーヒーを飲む。

そのあとは違う話題にうつり、適度に楽しい時間が続いた。


家に帰ってその日の会話を思い返す。今日の私はどんな話をしていたのだろうと考える。

変なことを言っていないか、自分勝手な会話をしていないか。ほとんど反省会みたいなものだ。

思い返している中で気付いたのは、「どんな本を読むのか」、「小説が好きなのか、漫画が好きなのか」などの一般的な話を一切していなかった。

使っている電子書籍アプリの話で盛り上がり終わっているだけだ。なんてもったいない時間を過ごしていたのか。あの人が読書好きならもっとすべき話があったのではないか。


このようなことはザラにある。私は話題を持ち帰ってしまう癖があるみたいだ。1人になった時に「あの時にこの話ができていれば」と思うことばかりで嫌になる。

その場で言葉は出てこないけれど、時間がたつと次々にあふれてくる。今からメッセージアプリで話をしても迷惑だろうな、と思いながら自分の気持ちをしずめるしかない。

その時その場で話ができるようになれれば、もっと会話が楽しくなるのではないかと思うばかりだ。



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