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WAKIMIZU

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散文詩など
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#散文詩

胡蝶の夢

誰かの綺麗な夢の中だけで
生きていられたらいいのになぁ
四季全ての花が咲き乱れて
光が それは柔らかい光が漂っているの
そんな夢の中だけで

朝が来ても、やることはたった一人分の洗濯だけで
気付くとうつらうつらと二度寝して
結局三度洗濯機を回す羽目になった

お昼ご飯はパインアップル
芯を取らずに食べられるやつ
それだけでいい
一人では

去年育てた蝶はきっともう土に還った
今年育てるのは自分

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目覚めの気持ち

人の大切な物を壊す夢ばかり見る

自分の大切な物さえ壊せない臆病者のくせにね

私は私の空いた口を塞ぐためだけに手を使って

そのまま転げ落ちて

頭を打って

死ぬのだ

椿

寒い

寒い
だってそうです誰も
そうするしかないと諦めているから

寒い
砂漠の遠くで冷えていく
体を心を暖められないから

寒い
たった一つのものも
守れぬしがない手は何のためにある

寒い
近くの街にて冷えていく
心を体をしかと知っていながら

寒い
それさえもどうにもならない私に
あの命に涙を流す権利はあるのか

ダークサイドです。お気をつけ下さい。

あっという間に、薩摩芋のジャムも凍えた星月も、桃とジメジメ畝る闇に取って代わるでしょう。

危ないほどピンク色の夕暮れ
足が縺れた
歩けるはずの平らな道
日が沈む
日が沈む
日が沈む

トロッとした闇は香る
鎖と同じ温度が首を縛る
玉虫色に魅了されてはいけない
あの言葉を聞いてはいけない
耳と目は塞いでも
脳の中から見えて聞こえる
見えて聞こえる
見えて聞こえる

ニューロマンティク

梅林の雑踏
蓮華畑のピンク

光が肩をすり抜ける
大きな袖が靡く
飲み水に顔を浸した
前髪が垂れる

紋白蝶が羽ばたく大きな音
杜若の口づけ

迷いが胸に被される
小さな声が消えて
追い風に強く願った
藍染の浴衣

太陽が燃え尽きる直前の香り
黄金の田が揺れる波

鏡越しの暴風雨
ミュグレーのダンス
回路の変換
黙る赤い山

令和初期、サンセットシティはいい天気

カムパネラは街中鳴り響き
不浄の切っ先がひび割れる 畏る 淡い海 桃源郷

サンセットは街中グラデーション
無常の一刻は迫り来る 私にも あなたにも 平等よ

大都会に住んでいたって 私の家の近所には
躑躅も藤も木香薔薇も 目が痛いほど咲いている

悲しいことが起きたって逃げられない 帰れない
ドルマンスリーブは空を飛べない

橙に桃紫藍色
苦渋の選択が下される お菓子にも 鸚鵡にも 想像よ

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桃色の雲

何百年ぶりの 外歩きだろう
ひどい風で 恐ろしいほどの花弁が踊る
清々しいほど しずかです この街は 今

明日のことは明日のことです
何百人がかつて歌った
昨日のことは昨日のことです
忘れることなどできないけれど
付けっぱなしの日常 消そうとしてやめました

西の空には桃色の雲 目指して歩いてゆこう
西の空には桃色の雲 目指して歩いてゆこう
耳が痛い 千切れそう 心は脆い 千切れそう
西

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ルナティック・パンデミック

壹、

キンコンカンコン

体と心を融解する作業

些細な体と些細な心

ナイフのような音楽

衝撃映像

揺さぶり

ガムランの音

マッキントッシュの起動音

さすらい人の笛



貳、

式場は埋め尽くされている
美しい水色
フランス語の歌声
恙無く執り行われる儀式

太陽と月を殺し

海と山をぶつける

太陽と月を殺し

海と山をぶつける

暖流と寒流の鬩ぎ合い

ダルメシアンの吠え声

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血色是空

涙に浸った睫毛が瞼へ貼り付いた時
時計の針は記憶を失って彷徨うであろう
唐草模様は誰一人として逃がさない
無駄な足掻きはやめて
洗濯物の渦の中へ

まゆらぎがけたゝましく鳴いてゐます

眼鏡を捨てた時に味わった
この衝動は罪だと言われる
街灯が点滅をする度毎に
全部が始まり
気付く間も無く全てが終わっている

頬に赤みを差さねば外にも出られない
この苦痛は何処から芽生えたのだろう
タイダイ染は宇宙

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春の運動

出逢ってしまった
事象と事象で
甘く恐ろしい人体実験を
始めます 始めます 或る夜から

混ざってしまった
事情と事情が
甘くほろ苦い原爆実験に
捧げます 捧げます この身割いて

沈丁花
どこにいるの
闇世の中
ずっと見つからない
美しい香りだけが
なにも見えない方へ誘っている
白くて赤い花

トリッチトラッチ
噂の貴方は
叫ぶ青白い石膏人形に
変わります 変わります 月の光

ナウ・ローディング・テン・イヤーズ

かりそめの わたしたち
できれば いまのうちに

かくしても みえてくる
さきゆく はなのように

すきとおる くらやみが
このさき はばんでいる

たちどまる わたしたち
つないだ てがほどけた

このしろは あるあさに
いきなり できあがった

このしろは いつのひか
いきなり おちるだろう

かやのそと そらのうえ
くらげが うようよいる

さむい すごくさむい
からだがうごかない うごかせ

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かぐや姫2020

いつ死ぬか誰もわからない 本当よ
毎日が今生の別れだと思って愛しんで
スパイスガールもパノラマボーイも
おばあちゃんが言ってた

冬の野を彷徨っている時間があるのなら
その胸に火を灯せ
T-N-Tを炸裂させろ
ドーピングも厭うな

神に背き 諍い 紡いできたのが人間ならば
紅の紐たなびく青き空
誰も邪魔することができない一風を以て
新しく変わる日の出を目に焼き付けよ
ジャンヌダルクの一太刀

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秋の色移りにけりな

台風に揺れる金木犀がオレンジ色の香りを無惨に吹き飛ばしてゆきます。

私は今、ここを出て行かなくてはなりません。

暗い路地に落ち切ったオレンジ色の花が照る深夜に私は行かなくてはならないのです。

涼しい朝には、陽の光も私もオレンジ色の花も、同じ一つの存在に還って揺れます。

オレンジ色は懐かしく優しく、そして悲しく、ビニールの音がカサカサと鳴っています。

学校の校庭が砂を舞い上げながら秋を撒き

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とびたつ

千切って千切って千切って千切って
そうさ私この効果わかるから
千切って千切って千切って千切って
こうかああかどうこうかわかるから

わたりどりよとぶきせつよとさけぶ
わかってるよととりたちもとびたつ
わたしたちのこころだってとびさる
わだちしるしからだちのはてむかう

踊って踊って踊って踊って
そうさ私この動作わかるから
踊って踊って踊って踊って
こんなふうかどんどこからからから

かたちもかげも

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