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#57 DEATH SIDE IN ニューヨーク

人物、バンド名等説明
・LE POISSON ROUGE
:ニューヨークのソーホー地区に2008年からある大規模ライブハウス。
・BOB DYLAN:1962年デビューのアメリカのミュージシャン。グラミー賞やアカデミー賞、ロックの殿堂入りの他にも、ピューリッツァー賞特別賞やノーベル賞も受賞。
・VILAGE PEOPLE:1977年にニューヨーク結成された、ダンス・ポップ、ディスコミュージック、R&Bグループ。西城秀樹の「ヤングマン(Y.M.C.A)」の原曲のバンド。
・ジョーイ・ラモーン:RAMONESのボーカリスト。
・BEASTIE BOYS:1978年にニューヨーk腕結成されたヒップホップグループ。結成当初はHARD CORE PUNKバンドだった。
・SEAN LENNON:ショーン・レノン。ジョン・レノンとオノ・ヨーコの息子でミュージシャン。

#57 DEATH SIDE IN ニューヨーク

 宿にはベッドが4台。しかしメンバーは5人だ。ひとりはベッドで眠れないのだが、エアマットレスがあって、弁慶が「俺これでいいですよ」と、気を使ってくれた。
 春とはいえまだ寒さも残るニューヨークで、毛布もないので冷えるだろうと、俺は弁慶に掛け布団を渡した。
 眠ろうとするのだが、かなり寒い。ここは人の家ではないので犬もいない。弁慶がバルセロナでやった最終手段ができないではないか。
「やっぱり寝袋持ってくればよかった」
 後悔しながら、寝ぼけてごそごそと周辺に手を伸ばしていると、何やら厚手の布地が手に触れた。どうやら誰かのダウンジャケットのようだ。助かった。これでなんとかなる。ダウンジャケットを毛布がわりに、寝たような寝ていないような睡眠不足のままでいると、みんなが起き出した。

「寒くてほとんど寝れなかったよ」
「それ俺のダウンじゃん」
 どうやらORIのダウンジャケットだったようだ。
「マジ?いやすぐそこにあったから、あまりに寒くて借りた。助かったわー」
 そして弁慶のエアマットレスは、使いものにならなかったという。
「俺なんか寝てる間にマットの空気がどんどん抜けて、ぺっちゃんこになりましたよ」
「マジで?しかし寒かったよなー」
「はい。寒かったですね」
「そんなに寒かったなら暖房つければ良かったじゃん」
「え?暖房?」
 見上げると窓際のベッドの上には、きちんとエアコンが設置されている。おまけに手を伸ばせば届く場所にリモコンまであるではないか。
「なんでこれに気づかないんだ?」
 みんなで大笑いしたあと、出発までの間、暖房の温風と毛布に包まれ短時間ではあるが熟睡できた。
「さぁライブだ!」と思っていたら、ORIと弁慶のギターが到着しない。調べてもらうと到着は2日後以降になるようで、今回のライブには間に合わない。残念だが仕方がない。幸い借りられるギターをたくさん用意していてくれるというのでその中から選べる。ギターがなければ始まらない。良いギターがあればいいのだが。

開場前

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30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!