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京のヨモヤマ〔弐〕 京の上ル下ル(アガルサガル)

京都で道を尋ねると、行き方を上ル下ルで教えてくれる。

「ア~第二日赤。それならこの烏丸(からすま)通をずっと行くと、烏丸丸太町の交差点に出るんで、そのまま上ってもらって、二筋目の下立売の信号んとこを西に入ると、さらに二つ目の信号の北側に府庁の古い建物が見えるし、その角を下ってもらたら、東側に日赤病院の玄関が出てくるので、すぐにわかりますわ」
って、わからんわなぁ。フツーは^^

だが、ご存知のとおりに、京都市内中心部の道は、東西南北に碁盤の目のように造られているので、キッチリ方位が頭に入っている京都の人には、非常に合理的な道案内の仕方なのである。

烏丸と堀川。二つの大きな通りが、市内の真ん中を南から北へと縦に突き抜け。その左右に並列して幾つもの、細い道が通る。
その縦の道を垂直に運針するように、東西の通りが交差している。
細い道は、一方通行ばかりだが、ひと筋ごとに東西、南北ともに規則正しく通行区分がされているから、そのうち慣れる。

朝はきちんと、東の山から「おはようさん」とお陽さんが昇り、夕はしっかり、西の山を「ホナさいなら」と赤く染めてくれはる。

実にわかりやすい、町のレイアウトになっている。のだが‥^^

投網をバサッと広げたような、道が入乱れる東京の町で生まれ、育った自分は、どっちが北で南だなんて、考えたことがなかった。
道なら右と左とマッツグで、案内が通じたし、山手線の内か外か、そん程度の、大雑把な方向感覚で、十分に暮らしてこれたのだ。

それだけに京都へ来た頃は、町全体を鳥の目のように上から捉え、上ル、下ル、西入ル、東入ルと、ナビができる京都人の感覚が、とても不思議で、新鮮に思えたものなんです。

人は郷に入れば、郷に馴染むものだから、16年おる自分もきっと優れた方向感覚が身に付いている。
と思ってはみても‥車のカーナビ画面は未だ、北が上の、地図と同じ表示ではなく、車の向きに合わせ、画面の中で道がグルグル回る、進行方向表示。

とどのつまり‥
自分には東西南北の感覚などなく〝ただの方向音痴やったんや〟と、ハタと気づく、今日この頃なのです。ハイ^^

京都市内の通りが碁盤の目になったのは、平安京の都造りの時。長安に見られる「条坊制」を取り入れたことが始まり。
さらに秀吉が「天正の地割り」で、南北の道を増やし整備し、時代とともに少しづつ、今のカタチになってきたようです。

千二百年の時の流れの中で、京の町風景は大きく変われども上ル下ルの人の流れは、鴨川の如く、滞らず続いておるんやなぁ。
なんや、ホンマに、感無量ですわぁ^^

【京の豆知識①】
上ル、下ル上ル(北へ行く)、下ル(南へ行く)西入ル(西へ行く)、東入ル(東へ行く)ドス^^
【京の豆知識②】
ひと筋(すじ)、ふた筋=道の数え方一本、二本と同じドス^^

(2012年3月7日 記)

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