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#釜ヶ崎

原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー前編・3

原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー前編・3

         関係性への想像力へたどりつくしぶとさ

原口:もうひとつ、ぼくの本でとても重要なことをお伝えしたいのは、釜ヶ崎の労働者と市民社会との距離感というものはそういった違うコミュニティを生きている距離感でもあるんですけれど、目に見えないところでの別の関係性もあるんだということなんです。どういうことかというと、何しろ労働者、しかも下層労働者の街なので、さまざまな物を作っているわけですよね。

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原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー前編・2

原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー前編・2

          土地の上はグレーゾーンであふれている

原口:やっぱりゲーテッド・コミュニティみたいな形ですごく純粋な形で所有権が物理的に特定されるのは異常な状態で、通常は釜ヶ崎もそうですけど、土地の上で起こっていることは、法律上の登記上の所有権の図面とは違ってグレーゾーンであふれてるわけですよね。私的所有に基づかないようなコミュニズム的な、アナキズム的な、相互扶助的な。まあ喧嘩も含めてのそう

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原口剛さん(神戸大学大学院准教授)前編・1釜ヶ崎ー関係の想像力に辿り着くしぶとさを

原口剛さん(神戸大学大学院准教授)前編・1釜ヶ崎ー関係の想像力に辿り着くしぶとさを

まずインタビューの前に原口さんに釜ヶ崎から新世界、天王寺公園を案内してもらい、その変貌の過程などを教えてもらいながら、天王寺の喫茶店で長時間にわたりさまざまな話を語っていただきました。今回はその前編となります。          (原口剛さんインタビュー前編のPDFはこちらから)

           語りの回路が失われる危機感

――先ほどは日雇い労働者の街である釜ヶ崎のご案内ありがとうござい

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原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー後編・5

原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー後編・5

コミュニケーションの濫用よりも、コミュニケーションの作法

――話をどんどん飛躍させて申し訳ないですけど、寿町の寄せ場の映画は感情の表出がダイレクトじゃないですか?みんな。人間の喜怒哀楽がドーンと出てくる。ある種カタルシスがあるんですよ。

原口:それに惹かれるというのは確かにありますね。泥臭さ。やっぱりねえ、生きていればそれなりに汚れたりもするし。

――喜怒哀楽の4文字しか出てこないんですけど

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原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー前編・4

原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー前編・4

活動家が労働者の行為を反復する

――実質的な運動として釜共闘というものがあって。その激しさゆえにいわゆる手配師の仲介業者から嫌がられてしまったとか、もっと端的に言ってしまえばオイルショックと構造不況ですよね。本当に日雇い労働の人たちというのは景気循環の最先端に常にいるんだな、と資料見せてもらってしみじみ思うんですけれども。まず真っ先に職がなくなるのは日雇い労働の人たちですよね?そういう不況と直面

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原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー後編・2

原口剛さん(神戸大学大学院准教授)インタビュー後編・2

           ホームレスの日欧の意識の違い

――でもそうなるとポスト・フォーディズム時代がヨーロッパでは歴然と1970年代の真ん中でスパーンと来たので、その先を生きていくためにスクウォッターみたいな人たちが出てきたと思うんですけど。その頃日本はバブルに向っていましたから、おそらく15年くらいのスパンであとへ生活危機が延びてるわけですよね。ですからヨーロッパの場合、意識して生存のために空き

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