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昇進

出会いは最悪だった、なんてよくある話だけれど。

君と最初に会った日のこと。君はもう覚えてはないと思うけど。君は僕とは一切話してくれなかったんだよ。

みんなでディズニーランドに行ったあの日。僕は運転手で。会話に入れない僕は、後部座席で楽しそうに笑う君たちをバックミラーで見ていた。

ランド内で二人きりになるチャンスも何回か訪れたけど、それでもやっぱり話せなくて。でも、そこに咲いている花をキラキラした瞳で見ている君の横顔はとてもかわいかったよ。

つまらなくなるとスマホを見てしまうところも、ちょっとしたわがままも、僕には可愛く見えた。


それからみんなで会うようになり。

僕らはだんだんと仲良くなっていき。

君が好きな居酒屋さんに行った帰り道。

僕は君を抱きしめた。
君が僕の首に腕を巻き付けてくれたとき、しあわせを感じたよ。


あれから何年たったのだろう。

君はとても頭がいい。僕が話したことをなんでも記憶してる。ときどき怖くなるくらいだよ(笑)でも、それは君の魅力の一つだ。大切にして欲しい。

君はコミュニケーション能力にも長けてる。人見知りのところはあるけれど、君は周りを笑顔にさせる。

君はとても話が上手だ。いろいろ総合的に考えて、弁護士になったらどうだ、と言ったのは冗談じゃないんだよ。君が頑張れば、司法試験に合格できると僕は本気で思っている。


でも、僕は君の遺伝子を少し心配している。

きっと君はお酒が強く、楽しく騒ぐのが大好きになるだろう。

君のママのように・・・

そして問題は男選びだ。

きっと君もお父さんのような人を好きになるのだろう。

苦労するぞ。

男はお金持ちなんかじゃなくていい。面白くなくてもいい。真面目でしっかり仕事をする人がいい。家庭を大事にしてくれる人がいい。

僕を見ろ。お金持ちでもないし全然モテないけど、毎日楽しそうだろ? ぜひ僕のような男を選んで欲しい。


この春、年長さんになったばかりの君には少し早い話だとは思うけど。


さて。

前置きが長くなったけど。


昨日、君のママから連絡をもらったよ。

かわいい写真付きの。

君のママは頑張ったよ。

おめでとう。

女の子だ。

君の妹が産まれたよ。

さあ、お姉ちゃんだ。

楽しみだね。

大丈夫、君ならやれる。がんばろう。

ヤキモチ妬かず、貫禄を見せてつけてやろうぜ!


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いやー、おめでたい! 友達の妊婦さん、無事出産いたしました!破水から1時間のスピード出産だったようです。命の誕生ってやっぱりすばらしいですね。

この曲、イントロに赤ちゃんの泣き声が入っているのですが。夜中に中途半端な音量で聴いていると「ヤダ!どこからか赤ちゃんの声が聞こえる!」と周りをビビらせることになるのでご注意ください(笑)

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