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『 狂猫 』

普通のOLだった私が、こうなったは全部彼のせい。

彼のおかげで・・・

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夢はあるけど借金アリの定職ナシ。出会った時から彼がクズ男なのはわかってた。

「お前だけが生きがいなんだ」それが口だけだということも。

でも「捨てないでくれ」と言われると… 

その気になってしまってた。私には彼を捨てる勇気がなかった、いえ、今思うとあの頃の私は孤独が怖かったんだと思う。


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女が、というと語弊があるだろうけど、その頃の私がてっとり早く稼げるのは水商売しかなかった。

友達の紹介でキャバクラで働きだしてからは、三日とあけずにお店に出た。それでも自分の暮らしと彼の借金の返済で精一杯。

金のなる木がそこにあるわけでもなく、お客様にもらったバッグを質に入れたりもしたわ。

でも、覚悟は決まってた。私はここでお金を稼ぐんだって。お金を稼いで、彼の借金を返して、そして彼としあわせに暮らすんだって。


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しばらくして昼間の仕事を辞めることにした。

昼と夜、中途半端な状態では、どちらの仕事にも影響が出る。

私は夜に賭けた。

その選択は間違っていなかった。お客様にも私の本気度が伝わったのだと思う。いわゆる太客から指名がつくようになり、お店の中でもトップクラスの売上を残せるようになっていった。

つらい日もあったけど。疲れて帰った夜には彼が優しくしてくれた。それだけで、私は頑張れた。


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「店を持たないか。君ならきっと立派な経営者になれるよ」

そう言われたのは勤め出して3年目だった。その人は私をずっと指名してくれる方で、きれいなお酒を飲む紳士だった。

ただ、私もその意味をわからないほどの年じゃない。私は自分の目的を忘れてはいない。その話に乗るわけにはいかなかった。

だけど、自分のお店を持つことには興味があった。自分を試してみたいとも思うようになっていた。

OL時代の退職金・・・ 

店を始めるのにはもちろんそれだけでは足らないけど。

打って出た。退職金を全部使い、その上に借金をして、自分のお店を持つことにした。


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始めてみたものの、お店の経営は考えてるほど楽なものじゃなかった。

大袈裟じゃなく、毎日が戦争だった。

そんな時に彼は・・・

私の店の若い女の子と関係を持っていた。

貢いだあげくがこれ… 

「フザケヤガッテ、コノヤロー!」

でも。

もうあの頃の私とは違う。

「今の私にあなたはいらない」

私は強くなった。揺らがない女になれていた。

「もういい、何も聞きたくない。何も言わないでここから出て行って」


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あれから数年がたち。

今では私は年商10億円の企業のオーナー。
パートナーにも恵まれ、何の心配もなく毎日しあわせに暮らしている。

もう彼を恨んでなんかいないわ。むしろ今はお礼が言いたいくらい。

ありがとう、私にきっかけを与えてくれて。

ありがとう、私に自分の持つ力に気付かせてくれて。

ありがとう、普通のOLだった私を成功者にしてくれて。



でもね。ありがたくは思うけど。

彼が今どこで何をしているのか、もう興味もない。死んでるかもね。

私にとってはもう遠い過去。

あの日、私の中から彼を完全に消したの。

私にとって彼の存在はそこまで。

ハイ、それまでよ。




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本日の作品はこちらのリクエストにお応えしつつも、歌を知らない方にも楽しんでいただけるように創作してみました(笑)

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『ハイ それまでョ – ハナ肇とクレイジーキャッツ』
あなただけが 生きがいなの
お願い お願い 捨てないで
テナコト言われて ソノ気になって
三日とあけずに キャバレーへ
金のなる木が あるじゃなし
質屋通いは 序の口で
退職金まで 前借りし
貢いだあげくが ハイ それまでョ
フザケヤガッテ フザケヤガッテ
フザケヤガッテ コノヤロー ♬

しかしこの歌。若い人には…
わかるかな~。わかんねぇ~だろうな~。ww

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