若さと経験
先日、仕事関係の女性と二人で居酒屋で飲んでた時のこと。
カウンターに座る僕達。左に僕、右に彼女。
彼女の向こう側の席に、ご婦人二人組が座った。
飲み始めてもう2時間くらいになる。少し酔っていた。
「あの。砂男さん、ちょっといいですか?」
「うん、なに?」
「向こうの女性、気になります?さっきから、チラチラ見てますよね?」
「え?そう?そんなつもりはないけど」
「ホントにわかりやすいですよね。チラチラじゃないです。じっとり見てますよ」
「ホントに?w それはお恥ずかしいw」
彼女が注文したなめろうが届く。メニューになめろうがあると必ず彼女は注文する。
「きれいな人ですよね」
「うん、 たしかに。50歳くらいかな」
「何言ってるんですか。もっと若いですよ。40歳前半だと思います」
「そっか」
「砂男さんって、熟女好きでしたっけ? いつも若い子ばっかり連れて歩いてる印象あるんですけど」
彼女は32歳。僕がたまに20代の女性と飲んでることを知っている。もちろん特別な関係ではないのだが。
「そう?別に若い人が好きってわけじゃないよ。年齢なんて関係ない」
「でも、男の人って若い子が好きじゃないですか。みんなそうだと思ってます」
「それは偏見だな。たしかに『若い』というのはそれだけで一つの魅力ではあると思う。だけれども、その若さという魅力は、毎日少しずつ減っていく」
「そうですね」
「ということは。若さだけが魅力だと、出会ったその時がピークとなり、そこからはどんどん魅力が減っていくことになるでしょ」
「そうですね。1日1日、年をとっていくんですから」
「うん。でもね、1日1日歳を取るけど、その分、あるいはそれ以上に、1日1日魅力を増していってる人もいるんだよ」
「経験とかですか?」
「そうだね。他の魅力もたくさんあるけど『経験』は一つの魅力だと思う。
例えば20歳の人がいる。その人は、若さ魅力90で経験魅力10、合計100点。
一方50歳の人がいる。その人は若さ魅力30で経験魅力70、合計100点。
これだと20歳の子と50歳の女性の魅力は同点になるでしょ?」
「なるほど。納得できます」
「そう。だからね、人の魅力に年齢はあんまり関係ない。若くいようとするのも大切だけど、若さの魅力なんてどうせ減っていくんだから、いろんな経験をしたり、若さ以外の魅力を上げていく方が大切だと思うよ」
「どんな経験を?」
「そんなに大袈裟に考えることはないよ。今こうして、自分と全く違う種類の人の話や意見を聞いているでしょ?」
「たしかに、私と砂男さんじゃ、いろいろ違いすぎますよねw」
何杯目かの薄めのハイボールを注文する。
馬刺しユッケが届く。なめろう、いぶりがっこの後にこれ。飲む酒に合わせてアテを選択していく彼女に「おじいちゃんみたいだな」と言うと「せめておばあちゃんみたいって言ってください」と彼女は笑った。
「俺は俺で、こうして君といろんな話しをすることが経験になってるからね。君は俺よりずっと若いけど、俺の知らない世界を知っている」
「そうですか?」
「そうだよ~。俺、説教じみた話もするけど、ちゃんと君の話も聞いてるでしょ?」
「そうですね、ありがたいです。砂男さんの飲み友達で、一番上ってどれくらいの年齢なんですか?」
「一番上は51歳かな」
「えー、すごーい。だから熟女が好きなんですねー」
「いや、そういう訳じゃないけど」
「一番下は?」
「えっとね… 21歳」
「うわー、ロリコンですね~w 落差がナイアガラーww」
「そうじゃないって!でも、これでさっきの年齢は関係ないって話、納得できるでしょ」
「はい。納得しました。でも… 」
「でも?」
「なんか、それだけ幅広い人と遊んでる砂男さんってちょっと…」
「ちょっと、何?」
「キモいですね。まだ若い子が好きって言ってる人の方がわかりやすくていいです」
「キモい?!」
「あ、言い方間違えました。イタイって言った方がいいかもですね」
キモくてイタイ…
まあまあ仲良のいい人から、この言葉は…
キツイ。
でも…
面と向かって、これだけのことを言われるのも一つの経験だな。
きっと今、僕の経験魅力は1ポイントアップした。
そう信じたい。
「あ、すいませーん。ハイボールおかわり」
僕は最後のハイボールを濃いめで注文した。
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ちなみにヘッダー画像の左、ジェニファーロペス、現在51歳。右、シャキーラ、現在43歳。この二人の尻神様が揃って登場した今年の2月のスーパーボウルハーフタイムショーがこちら。すんごかったから。まあ見てください。
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