「夢と現で廃墟を想う」第7話:上陸
7.上陸
目の前に島が見えていた。船はどんどん島に近づいている。四十年ぶりに見る生まれ故郷を前にして帰郷を躊躇っていた石和には込み上げてくるものがあるようで、徐々に口数が減っていた。
こんなに長い間、一度も島に戻らなかったのは何故だったのか。観光客に交じって島を見学することへの違和感はここ数年の感情だが、それだけではない。『廃墟の島』がテレビのニュースで取り上げられる度にいつも悲しい気持ちになったことを考えると、あんな姿を見たくはないという思いが足を遠ざけてしまったと