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那須博之『美少女プロレス失神10秒前』

こんばんわ。堂ノ本です。今日はボロクソDEシネマのお時間です。

#4になる今回は 、やはり以下の記事を理由にロマンポルノを上げさせていただきます。→日活ロマンポルノ50周年記念、本当にこれで終わるのか?

監督、那須博之について

いやあ、いい写真だ。めちゃくちゃかっけえ。

今回紹介する映画は、1984年公開の那須博之監督作品です。那須さんといえば、『ビーバップ・ハイスクール』が有名でしょうが、やはり彼もロマンポルノからキャリアをスタートさせた監督です。

私の私的那須博之ベストは、今回の作品かもしれません。順不同でセーラー服百合族や姉日記、ルージュが並びますね。あれ?大体好きだな。はい、大好きです。

那須印といえば、放尿と山本奈津子の印象ですね。この映画でもその二つの要素は存在します。きっと良い人なんだろうな、と映画でも想像できますが、詳しくは金子修介監督の連載noteをどうぞ。金子監督のデビュー作でも、山本奈津子が起用されていますし、関係は深いのだと思います。

また、那須博之監督との交流含め、ユーモラスにロマンポルノ時代を回想している最高の映画本がありますので、ぜひ読んでみてください。許されるのなら、私が実写化したいくらい面白くて、なんてったって、それが全部事実なのですから、素晴らしいです。若松プロが若松孝二を描いたのなら、日活は日活でぜひ描いて欲し芋のです。

作品紹介

主演:山本奈津子
出演:美野真琴/萩尾なおみ/由利ひとみ/別府みちる/松沢さかえ/天野みゆき/竹田さなえ/田浦智之/キャベツ/深見博/大久保康治/高山広士/中村雅人/井上麻衣(特別出演)/渡辺良子(特別出演)/小田かおる/佐藤ちの/石井里花/志水季里子/沢田勝美
監督:那須博之 脚本:佐伯俊道
撮影/森勝 照明/木村誠作 録音/福島信雅 美術/金田克美 編集/奥原好幸 助監督/山崎伸介 

いやぁ、撮影の森勝といい、当時の日活は名匠の宝庫ですね。女子プロレス映画というだけあって、全女のレスラーが協力していたり、印象的な布陣です。脚本の佐伯俊道は前回の『いんこう』も書いてましたね。こんな風に、スタッフに注目して映画を見ていくのも面白いですよ。

■解説
山本奈津子、小田かおる、渡辺良子はじめ、ピチピチ女優が大挙出演。監督は、『ビー・バップ・ハイスクール』の那須博之。撮影は森勝。アクションは、高瀬将嗣が担当。『ビー・バップ~」へとつながる熱血、感動、青春のスポ根エロス・ダー!!

ロマンポルノ公式サイトでは、アクション担当に『高瀬将嗣』の文字が。なんだか、嬉しくなりますね。実はこの高瀬さん、芸大で講義をしてらっしゃって、『海底悲歌』のスタッフはお世話になってました。出演してもらった小林敏和さんも、この高瀬氏がやっていた高瀬道場に通っているみたいで、縁が深いですね。今製作中の『覚悟のゴングは鳴り響く』は、高瀬氏イズムを学んだ脚本家が書いていたりもします。

最近お亡くなりなられ、寂しかったのですが、彼の魂は間違いなく後人に受け継がれています。


ストーリー


リングでは夢の島大学の篠原マミと八王子大学の池下冴子が激しく戦っている。マミは冴子に投げ飛ばされ、乳もあらわにフォールされてしまった。それを見たマミの妹メグはガックリ肩を落とす。一方、拍手しているのは親友の横山しのぶだ。その後、メグは夢の島、しのぶは八王子に進学し、それぞれレスリング部に入る。メグは応援団の気の弱そうな山田に好感を持つのだった。練習場に行くと、リングの上では先輩たちがアイドル研究会の男子とセックス中で、メグもパンティに手を入れオナってしまう。数日後、映画館で夢の島と八王子のレスリング部がハチ合せとなり、館内は大乱闘となった。メグとしのぶはブティックに勤める和雄が好きだが、恋の戦いはしのぶが一歩リード、しのぶと和雄はすでに関係を結んでいる。そこでメグは山田に接近、二人も肉体関係を結んでしまう。八王子の学園祭の日、いよいよ夢の島大との宿命の対決が行なわれることになった。前年度チャンピオンの八王子は冴子としのぶがリングに上がり、夢の島の松森彩とメグが挑戦する。試合は八王子の優勢で進むがメグは、しのぶの反則股間攻撃にもメゲず、場外乱闘に持ち込む。そしてリングアウト寸前、メグは冴子をたたきのめし、しのぶをフォールする。番狂わせに場内騒然。うれしさ満面のメグの所に山田が駆け寄ると、二人は抱き合い、唇を重ねる。一方、和雄も肩を落とすしのぶをいたわり、この二人もキスをする。それぞれ熱く長いくちづけをする二組のカップル。館内には、それを祝福するかのように観客の歓声がいつまでも響きわたっていた。

作品レビュー

まずは、なんといっても山本奈津子の存在でしょう。華奢な印象のある彼女ですが、この作品の冒頭は間違いなく、そのアイドル性を発揮しております。そんな彼女が、先輩たちの「しごき」に耐え抜きながら、時に逃げ出しながら、恋をしながら、ラストのプロレスに勝利する。

完璧なスポ根映画です。

冒頭ファーストショットから、「俺たちはちゃんとプロレスを撮るぞ」って宣言するかのように、想像以上のバトルが映されます。「ガッツデルタドールズ」と画面奥に見えますが、この作品、アルドリッチの『カリフォルニア・ドールズ』の影響を随所に感じます。少なくとも、企画の始まりや脚本段階でも、この作品についての会話はあったはずです。

ただやはり、アルドリッチ作品と決定的に違うのは、トレーナーの有無と、これがロマンポルノであることの二点でしょう。主人公たちは、先輩に騙され脅され、女子プロ同好会に参加します。夢のキャンパスライフがぶち壊しです。

猛烈なしごきに恐れをなした新入生たちは、大学を飛び出し、月島の商店街へ逃げ出すわけですが、そこが、わざとらしさの魅力炸裂です。

「物があるところに、とにかく突っ込め」という指示があったかの如く、登場人物たちは、ダンボールや物を抱えた人間にダイレクトアタックします。この時代のこの横暴さが心地いいですよね。
映画を作っていると、よくこういう指摘が入ります。

「こんなこと普通はしないから変だ」

これまで私は、「知るかボケ」の一択で乗り越えてきたわけですが、少し説明してみましょう。この画像を見るだけでもわかりますが、そうした方がいいからというだけのことなのです。

映画というのは、リアルに作ることを目的としていないわけです。物語をいかに面白く描くか、それが至上命題であって、「リアルに描くこと」は手段なわけです。この作品では、そんなものは最初から考えていない。私の映画でもリアルを志向した事は一度もありません。リアルじゃないからこそ、面白いのです。

だってそうでしょ?

例えば、せっかくそこに人がいるのに、物があるのに、それをぶっ倒さずにぐちゃぐちゃにせずに、逃げ惑う新入生が颯爽と走り去ればどうなりますか?

逃げ切れちゃうでしょ。

この画像のシーンは、「逃げきれない」のが目的です。だから、逃げきれないために邪魔をさせればいい、じゃあどうする?転ばせる?それじゃ普通だ、もう少し迫力が欲しい、うーん・・・そうだ!人や物にぶつからせよう!という思考であって、逃げる→人にぶつかる→転ぶ→逃げきれない、という考え方ではないんですよね。思考が逆。

だから、ここにリアルかどうかって思考を入れるのはお門違いです。そりゃ変ですよ。でも、商店街で爆発が起こるわけでもなけりゃ、ドッスンが通せんぼするわけでもないのです。商店街にみかんいっぱいの段ボール、チャリ、運んでるおじさん、全部リアルでしょ。それにぶつかる事だってあるでしょ。

納得いかないのはわかりますけれど、そういう世界観でやってるわけで、それを否定するのは、もう見ない方がいいんですよ。マーベル映画で、「ヒーローなんか存在しないんだからおかしい」とは言わないでしょ。あれはファンタジーだからって言う人もいますが、映画は全部ファンタジーですからね。

日常の延長戦のような映画、そういうものがあるのかはわかりませんが(そもそもカメラの前で人が演じている時点で、日常からは乖離しているわけで)、そういう映画に「これはリアルじゃない」って言うのは辛うじてわかりますが、ぜひとも映画を見る上で、それが尺度にならぬよう。

結局、新入生たちは捕まって、こうなる。


①女子プロサークルに強制入会
②徹底的にしごかれる
③逃げ出す
④捕まる

見事な四コマ漫画の完成です。しかも4コマ目のショットがこれって(笑)
腹抱えて笑いました。

で、主人公は決心してレスラーへの道を進むんですよ。ここまでが映画全体でいうところの第一幕でしょう。

努力を重ねながら、徐々にサークル内でのポジションを手にしていく主人公。その道中で、先輩とのレズプレイがあったり、好きな男との未遂セックスシーンがあったり、彼女の中の「性愛」に関する描写が随所に散りばめられます。

この作品の素晴らしいのは、そのタイミングと時間です。映画全体として、スポ根映画を標榜しているのですから、主人公の葛藤や恋愛部分って、結構かったるくなりがちなのです。なくては、最後のバトルが盛り上がらないので、必ず挿入されるのですが、そのタイミングと時間が、ちょうどいい。映画全体のテンションを落とさず、描けている。それはきっと、当時の助監督システムの機能の所以でしょう。映画監督含め、いろんなスタッフが、システムの中での最適解を会得している感覚があります。

それでいて、山本奈津子を魅力的に捉え続けるというのは、まさに職人ですよ。

で、物語は敵の存在を知らせます。

ライバル校の女子プロサークルの襲撃ですね。主人公側は敗れてしまう。このままじゃいけないわけです。でも、主人公には戦う理由がない。だって、最初から脅されて始めてますしね。

で、そういう場面で、仇敵が現れる。

それが小田かおる。ショートヘアが印象的な、明らかに主人公より強そうな人間です。しかも物語冒頭のプロレスシーンやアバンでも出てきた、腐れ縁の幼馴染。そいつがライバル校で女子プロをしている。

さぁ、ゴングが鳴りましたね。

勝ちたい相手がいる。それは主人公にとって、大きな力になります。
先輩からの引き続き浴びるしごきに耐え、「決意の放尿」によって、主人公は戦いを決意します。

ロマンポルノにおいて、エロいだけではないというのは傑作の基準でもあるでしょう。決意を「おしっこ」で見せる、これだけ書けば馬鹿馬鹿しいのですが、映画をポルノ映画にする最たる物であり、そして、ポルノをロマンポルノにする重要な場面です。職人として、求められるエロをきちんと描きながら、けれど作家として、映画の矜持を見せてくれる。これこそ職業監督です。

そして、ライバル校との決戦直前、2対2のバトルをするにあたって、キャプテンの相方を誰が務めるのか、という場面で、主人公は手を挙げます。この隣のアホヅラの女の子も細かいですけど、映画を支えてますよね。こういう細かな部分でコミカルさを忘れていません。

で、本当に相方が務まるか、テストが行われる。

そこで主人公は、生理中のためタンポンを詰める、それで力を発揮します。ジンクスです。このジンクスが「タンポン」という小道具なのも、好きです。

そして、迎える決戦当日。

私の推しメンに送り出された主人公は、リングに上がります。
もちろん、戦いはピンチから始まる。相方のキャプテンもボコボコにされ、敵はレフェリーまでボコボコにする。もうダメだ、と誰もが思う。

そういう場面で、伏線回収。

そうだ!タンポンだ!

まぁこのタンポンを、この画像の男の子が手に入れる部分も素晴らしくて。だって、男性ですからね。しかも時間がない。ドラッグストアなんか行く暇がない。大学を走り回って、「タンポンください!」って女学生に頼みまくる。「変態!」と無下に扱われる。そんな様子を描きながら、クロスカッティングで、主人公のピンチを描き続ける。

勢いよくタンポンを入れ、反撃開始!!

この観客の熱狂ぶりたるや。激アツですよ。
そして、『カリフォルニア・ドールズ』よろしく、観客の10カウント!!

見事に勝利した主人公の、この変貌ぶり、あんなに可憐で可愛らしかった主人公が、きちんと戦いの中で、「女の子」から「女」に変わっている。

この目つき!光るリングライト!投げられる勝利のテープ!

そして、時計は10秒前。


ああ、素晴らしい。これこそスポ根、と思えるような画面構成。そして、最後にタイトル回収。最高の娯楽作品。しかもこれを70分で描く。

これが傑作ですよ。

まとめ

ぜひ、ご興味ある方はご覧ください。この作品は現在、U-NEXTもしくはFODで見放題対象。また、TSUTAYA TVでもレンタル可能。ロマンポルノ公式サイトでは、その辺まとめてくれてるので、ぜひ参考にしてください。

また、ロマンポルノやピンク映画を掘りたいという方には、FANZAnoピンク映画専門CHもおすすめです。月3000円と、結構高値ですが、日活・大蔵・エクセス・新東宝などの主要会社だけでも3000本以上の作品が見れます。

ロマンポルノに関しては、1100本中の700本近くは配信されてるので、まじでおすすめです。私も最近、また入り直しました。

最後に


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