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【読書感想】家族の死を乗り越えて成長する主人公を描く児童書2冊を紹介します

「夜明けをつれてくる犬」(吉田桃子・講談社)、「あしたの幸福」(いとうみく・理論社)の読書感想です。

「夜明けをつれてくる犬」

こちらは、出だしから涙しっぱなし。家族だった犬の「レオン」が死んで、それ以来立ち直れない女の子・美咲が主人公。

美咲は幼少の頃から人前で喋ることができず、周囲と馴染めないまま小5まで過ごしてきました。しかし、犬のレオンには心を許すことができ、美咲にとっての唯一の友達でもありました。そのレオンが死んでからというもの、毎日レオンのことばかり考えて過ごしています。

レオンの死後10か月が経った頃、近所に花屋がオープンします。そこには、レオンそっくりの老犬「ビリー」がおり、美咲はそこに通ううち、店主の女性と親しくなっていきます。

店主(葉子さん)は、自身の過去の経験から、人と会話ができない美咲の心情を察し、ビリーを通して美咲の心を癒やしていきます。美咲は、最後にはレオンの死を乗り越え、保護犬の「サン」を家族に迎えると同時に喋れるようになったのでした。

このお話で終始、涙を流したのは、葉子さんの優しさだけではありません。レオンにしか心を開けなかった美咲の気持ちに理解を示しながらも、成長を促す家族の愛情がそこかしこに描かれている。特に、ひとつ上のお兄ちゃんが優しい。

私自身も、とりわけ学生時代は人の輪に入るのが本当に苦手で(今もそうですが)、「入れて!」「何してるの?」というのが本当にしんどかった記憶があるので、美咲の「喋りたいけど喋れない」気持ちには共感してしまいました。また、私の娘も、幼稚園時代には外ではまったく発話ができず、かなり心配していたのでそれも思い出しました。(かつて実家で飼って愛犬の記憶も蘇り、涙…。)

「なんで喋らないの?」

理由はないんです。「喋ろう、喋ろう」としてもいるのです。でも、声が出ない。それだけのことなのです。

今では、そこまで気負わずに喋りかけることのできる私ですが、人との会話は、簡単なようで結構勇気のいることなのだと改めて思い知らされたのでした。

美咲のように喋れない人は意外と多いのではないでしょうか。でも、この話を読めば「私もちょっとの勇気を出してみよう」と思えるかもしれません。児童書ではありますが、大人でも充分楽しめる一冊です。


「あしたの幸福」

こちらは、父親を交通事故でなくした女子中学生の雨音あまねが主人公。両親は離婚しており、家に一人きりになってしまう雨音を案じた亡き父の姉夫婦が、彼女を引き取るつもりで話を進めようとしますが、雨音は頑なに拒みます。

一人で暮らしていくつもりでいた雨音のもとにやってきたのは、なんと産みの母親。葬式の知らせを受け、母親としての責務を全うしなければと押しかけてきたのでした。

しかし突然やってきた産みの母を受け入れられるはずもない。そこへ、父の婚約者だった帆波もやってきて、一緒に暮らすと言いだしたから大変。

そこから女の三人暮らしが始まります。

読みながら、どちらかを母親として受け入れるのだろうと想像していただけに、こんな家族の形もあるのか、と衝撃を受けた話でした。


様々な家族の形

子供には子供の気持ちが、大人には大人の事情がある。それでも家族というグループを形成しなければいけない時期があるわけですが、それぞれの考えや価値観をどこまで認め、受け入れ、ひとつ屋根の下で暮らしていくか…。

身近すぎてあまり深く考えることのなかった「家族のあり方」について、また、ペットを含めた家族の死とどう向き合い、どう乗り越えていくかについても改めて考えさせられた2作品でした。

吉田桃子さんも、いとうみくさんも、最近好きな児童文学作家さん。著作も多いので、今回紹介した作品が気になったら、他のも是非チェックしてみてください😊

個人的なオススメ作品

吉田桃子:「ばかみたいって言われてもいいよ」1~3巻
いとうみく:「羊の告解」「空へ」(どちらもテーマは重め)

補足:新連載「あっとほーむ」はここから生まれた!

上記作品を読んだことがきっかけとなって、新連載を開始した「あっとほーむ」でも新しい家族の形を描こうと日々、試行錯誤を繰り返しながら執筆しています。

いろうたの「新しい家族の形」はどのような結末を迎えるのか…。私自身も楽しみです(書くのはもちろん私なのですが、創作キャラが自己主張をすると、結末が変わる可能性があるので)。

もしよろしければ、新作のストーリーの方も読んで頂けると嬉しいです🥰

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