物語の中における、男女別ハッピーエンドの違い　～女の結婚は人生のゴール？！～

前作からの関心事、そして次回作の資料として『女装と男装』の文化史（佐伯順子著　講談社選書メチエ）を読んでいます。なかなか面白い視点を得たので、現時点での感想と考察を綴っていきます。

そもそも、男と女の力関係は？

これはあなたもご想像の通り。歴史書や古典文学を紐解いてみても明らかなことですが、男は権力や社会的に優位な立場にあるのに対し、女性は庇護され弱い立場にある存在。これは洋の東西を問わず、共通認識のようです。

ただ、この女性の『弱さ』を逆手にとって、『古事記』では、少年だったヤマトタケル(当時はオウスノミコト）は敵陣クマソのもとに潜り込み、油断したクマソを打ち取ることに成功する話があります。現代でも、おとり捜査として男性が女装して犯人を油断させて捕まえることがありますよね。

『とりかへばや物語』でも、おとなしい性格で、十代半ばまで女の子として過ごしてきた主人公（男だが普段は女装もしている）が登場します。これでは出世も望めないだろうし、どうしたものか、と親が嘆くわけです。
しかたなく帝の娘の遊び相手として送り出すのですが、ここから話は一気に男性的に。なんと、帝の娘と親しくなるにつれ、男としての自我が芽生えていくのです（性行為のすえ妊娠させる）。詳細は省きますが、『女性的な気質があっても、男は男なのだ』という強いメッセージを感じさせます。女装をやめた彼は、正真正銘の男として生き、立身出世してめでたしめでたし。

他方、やんちゃで男性にも臆することなく向かっていくような女の子主人公は、男装して男の世界に入っていきます。これは、当時の男女観では革新的な発想で、女性の活躍が期待される筋立てなのですが、残念ながら結末は違います。
彼女は、『男性』としての役割である『世継ぎを残す』ことが出来ません。それは当時の男性としては出世に関わることであり、致命的です。けれども本来の性通り、女性として子どもを産むことが出来れば『女性としての役目』を果たすことが出来る。彼女は、紆余曲折はありますが、最終的には帝の寵愛を受けて子を産み、皇后として『出世』。めでたしめでたし、となります。

男は出世。女は結婚、出産することが幸せである。
（＝とりかへばや物語においては、女性にとっての結婚、出産はキャリアアップの妨げになっている）

そういう社会的に植え付けられたジェンダーイメージは、文学の中では定着しているようだ、というのが本書からうかがえます。

また、女性主人公が男性社会で活躍しようとする物語の多くに見られる傾向として、必ずと言っていいほど『援助者が男性』である点が指摘されています（「ベルばら」のオスカルとアンドレ、「リボンの騎士」のサファイアとチンクなど）。これは、男装女性が、男性社会で生き抜くことの困難な様を表していると言います。

そして多くの作品の結末は、男女カップルの恋の成就で終わります。どんなに勇ましく男社会に立ち向かっても『女は女であり、男になりきれはしない』という、女性のイメージが徹底されています。

先日、友人との会話の中でもあったのですが、（男女の）恋の成就がゴール、という話があまりにも多く、それに親しんだ私たちにはそれがすり込まれている気がしています。女性にとっては、異性との結婚が人生における一大イベントと位置づけられていると言えそうです。

これからの男女観

もちろん、これは『女装』『男装』から見る文化の特徴という話なので、必ずしも現状とマッチしていない部分もあります。しかし、本書でも指摘されていましたが、男と女の数だけ、性の指向も違うのが実際のところなのだ、という点には強く共感を覚えたところです。

そもそも、身体の特徴から言えば『男』と『女』の2種類ですが、感情の面で言えば誰一人として同じ人はいないのですから、異性愛が正常で同性愛は以上だ、などとは言えないはずなのです。また、男性社会に立ち向かうために『男装』することで強い自分になれる場合もあるし、男の身体的特徴を否定し『女装』することでなんとか生きていこうとする場合もある。どちらをも愛することが出来る人もいるでしょうし、十人十色の世界なのです。

「正常」と言われる心身に生まれた私たちは、与えられた環境や思想を、何ら疑問も持たずに受け容れてきました。けれど、今一度、男女の別とは何か？　ジェンダーとは何か？　恋愛・結婚とは何か？　について考えてみるのも良い機会かと思っています。

（2022年7月7日時点での考察です）

以上のような資料を読みつつ、次回作の構想を練っております。ひょっとしたら、「愛のカタチ・サイドストーリー」の続編的な形もあるかも？　いろいろ検討しています。楽しみにしていてください！

💖本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます(^-^)💖
あなたの「スキ」やコメント、フォローが励みになります。
ぜひよろしくお願いします(*^-^*)

あなたに寄り添う、いろうたのオススメ記事はこちら↓

🔳自己紹介
🔳いろうたの記事　サイトマップ
🔳敏感な親子のゆっくり生活（マガジン）
🔳完結小説あらすじ　（「愛のカタチ・サイドストーリー」追加してます）
🔳いろうたの主張まとめ(マガジン）
🔳HSP向け記事まとめ（マガジン）
✨ストア（ミンネ）にて、心を癒やす「文字アート」販売中です✨