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300円で楽しむ写真集・赤瀬川原平「正体不明」

トマソンと路上観察で有名な赤瀬川原平さんの写真集です。「正体不明」の他に「イギリス正体不明」、「ベルリン正体不明」もあります。路上観察で撮った写真を分類するうちに特定のカテゴリーに入れ難いが、気になるという写真を多く集めてこれができあがったようです。そのことを著者は次のように簡潔に述べています。

この写真集にはコンセプトが何もないので「正体不明」となった。

「正体不明」赤瀬川原平(東京書籍)

この写真集の核(正体)は著者の次の言葉に集約されると思います。

やはり無心なものはいい。路上で良いものを見つけて、これは面白い、これは綺麗だ、これは欲しい、という思いだけで撮った写真は見ていて飽きない。考えて撮った写真は飽きやすい。人間の考えというのはどうしても範囲を限定してしまうようだ。頭には注意が必要である。

「正体不明」赤瀬川原平(東京書籍)

写真に限らず、人間はものごとを考えるうえで、範囲を限定してしまう傾向があるように思います。それは無意識に行われることかもしれませんが、特に人の感性につながるものを見る場合には、見る目にバイアスをかけてしまう可能性があります。そうなると本来見えるものが見えてこないというおそれがあります。過去を振り返ることができる今だから言えることですが、ゴッホの絵がいい例になるでしょう。

私はそう思うのですが、皆様はいかがでしょうか?

写真集から三つ紹介しておきます。

ひとつめは、冒頭頁にある「樹の目」です。赤瀬川さんのコメントは「青桐の枝を払った跡だと思われる。」と記されています。

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ふたつめは、「秘密兵器」のタイトルで、Pentax 三眼レフカメラというものに初めてお目にかかりました。ステレオカメラのことでしょうが、詳細な知識は持ちません。

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みっつめは、赤瀬川さんの飼い猫ミヨです。写真ではわかりにくいですが、「額に小さく月形の主水之助模様がある。」そうです。月形ミヨ之助と呼んであげるとミヨは喜ぶかもしれません。

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私はこの「正体不明」を古本屋で300円(発売定価2000円)で買いました。これを見ると良い気分転換になります。それぞれの写真には短いコメントがつけられていますが、その意図については次のように述べられています。

写真に言葉が何もないと、それを「芸術」として見ないといけないような義理が生じやすい。言葉が少しでもあると、とりあえず見方がずいぶん楽になる。

「正体不明」赤瀬川原平(東京書籍)


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