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#282 エコーチェンバー(echo chamber)化する学校教育

 エコーチェンバー(echo chamber)とは音の録音をおこなうために使われる「残響室」のこと。特にSNSを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象に例えたものです。

 世の中には約80億の人が存在し、その結果多くの多様性が存在します。私たちは多様性に触れることによって、世界には様々な価値観が存在すると共に、自分の意見が決して普遍的ではないこと、また自分の現在の居場所が決して世界の全てではないことを知ることができます。

 一方、私たちは自身と似たような価値観を持つ人々と繋がりたいと思う。SNSを通じて私たちは「仲間」を見つけることができるし、それによって救われることがあるのも事実です。

 しかしながら、そのような空間が「閉鎖的」であればあるほど、その空間(つまり集団)の意見(思想)が絶対的であり、その意見に反するものが「悪」と誤認する危険性がある。

 山梨県のIT業の男性(33)が「エコーチェンバー」の中にいたという記事を見つけました。

 男性は自分の好きなキャラクターを批判したある団体の代表に不満を抱いていたそうです。そんな中、20万人のフォロワーを持つインフルエンサーがその団体の問題点を小気味よく列挙していく投稿動画にのめり込んでいきました。男性が自らSNSで団体を攻撃する投稿を始めるまで、2週間もかからなかった。団体の支援者らを強い言葉で攻めた。すると、あのインフルエンサーの「信奉者」から次々とフォローされた。一体感を覚えたと言います。

記事では

近年の海外の研究によると、強いエコーチェンバーに陥った集団は、対立する考えに触れても自らの意見が修正されることはなく、むしろ攻撃的になるという。最終的には対話する意思も失い、暴力の代わりに容赦のない言葉を浴びせるようになる。

と書かれています。

 エコーチェンバーの問題点の1つは「多様性の排除」。特定の価値観以外が除外される空間において、空間における多様性は徐々に消えてゆき、盲目的になっていきます。その価値観がまるで世界の全てであるような錯覚に陥ってしまう。

 この現象は、「学校」という教育空間にも存在するものではないかと思うのです。日本社会の「ある特定の価値観」を押し付ける空間は、私たちの思想・思考を徐々に統制していく。私たちは気づかないまま、学校教育における特定の価値観が「当たり前」だと植え付けられ、そこから逃れられなくなる。

 不登校が過去最多になっていると言う事実は、学校が産む「エコーチェンバー」に対する拒絶反応の一部であり、ある意味では健全なのかもしれないとも思う。

 学校がエコーチェンバーとなっているということに気づかなければならないのです。


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