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第3話 ビジネスのアイデアは、下心から生まれた。

2022年の2月末に現職を辞めて、会社をつくることにした。
本作は、リアルタイムで創業を目指すそんな僕自身の物語。

第3話からは、僕がどの領域で戦っていくことに決めたかについて、数回に分けて紹介していく。
現職を辞めて起業することにした流れや登場人物(僕と友井)についてはこれまでの記事を読んでいただけると嬉しい。

くだらない雑談の中にあった事業のタネ

第1話にも記したように、2021年夏、僕は友井と会社をつくることを決めた。外資系大手にて、”CEOのスポークスマン”というやりがいと学びのあるポジション&それなりの給料を手放すのだ。
当然、何のアイデアもない状況で決断を下したわけではない。

では、どの領域で戦っていくのか。
その前に、ここまでの時間軸を簡単に整理しよう。

2016年夏  友井と出会う@アム◯ェイのバレーボールチーム
2017年夏  自分たちのバレーボールチーム立ち上げ
2019年秋  外資系大手に転職
2020年1月   友井から「会社をつくらない?」と打診される→曖昧な返事
2021年7月   2022年春までに会社を立ち上げることを友井に伝える

2020年1月、渋谷のお好み焼き屋にて友井から「会社をつくらない?」と誘われた。
転職したばかりの僕は、そのときは曖昧な返事でお茶を濁したが、実はその場で「こんなことができたらいいよね」とか、「この領域に可能性を感じているんだ」という話もしていた。
「2人でやるならこんな感じの会社にしたいよねー」「そこそこの年収じゃなくて億単位の金がほしい」と無邪気に妄想を膨らませながらも、無意識のうちに互いの価値観をすり合わせていた。

そして結果的にこの日僕らは、”ある業界”の課題をはっきりと自覚し、ビジネスの可能性を見出すことになる。

きっかけは今でもよく覚えている。
話題が「投資に興味があると言うわりには、色々教えてあげても結局何も実践しない系女子」に移ったのが、転換点だった。


男が女に投資のやり方を教える理由は常に一つ

食事も中盤に差し掛かった頃。
友井も僕も大学時代から株式投資を嗜んでおり、また2人とも証券会社で働いた経験があったことから、投資系のあるあるネタで盛り上がっていた。
それが「投資に興味があると言うわりには、色々教えてあげても結局何も実践しない系女子」についてである。

投資をしている人には共感してもらえると思うが、友人との飲み会や合コンの席などで稀に投資や株の話になることがある。
その際、自分が投資していることを話すと、以下のようなことを聞かれることが多い。

「株やってみたいんだけど、何から始めたらいいの?」
「NISAって何? iDeCoって何? ツミタテ…?」
「どのくらい投資にお金を使っていて、いくらくらい儲かってるの?」
「私も稼ぎたい! 値上がりする株の銘柄教えて!」
「あぁ、、私のトルコ・リラ転換社債型新株予約権付社債が……」

特に証券時代の合コンではこういった質問が頻出した。

「いくらくらい投資に回してるのー?」

質問自体は悪いことではない。
むしろ、自分の趣味や仕事に相手が興味を持ってくれているのだから、非常に嬉しいことである。
それが狙っている女の子であれば尚更。答えない理由なんてない。
そう、男が女に投資のやり方を教える理由は十中八九、下心だ。
当然、僕も友井も聞かれた質問には心底丁寧に答えてきた。

ところが、だ。
色々教えてあげても、結局何も実践しない人が多いこと。多いこと。

株なんざ買わない、調べもしない。そもそも大半は口座すら開かない。
じゃあなぜ聞いてきた。こちとら丁寧に教えたぞ。
興味ないなら聞いてくるんじゃないよ!!

友井と僕はその理由について考えた。
考えるまでもなく、答えは分かっている。
優しい女性が、相槌代わりに質問しただけ。
もしくは僕らの教え方がよくなかった。
あるいは、下心が透けすぎていたのだろう。

だが、自分が悪いことを受け入れられなかった当時の僕らは、さらにもう一歩、思考を進めた。
そして「投資の敷居がそれだけ高い」という、これまた当たり前の結論にたどり着いた。
そう。金融業界全体に責任転嫁したのである。


結局、問題は投資を始めるハードルの高さ

女性たちの優しさに対して、失礼な物言いとともに、責任を押し付ける先を探していた僕らは、共通の課題意識を手に入れた。

「人々が投資をしない理由は、始めるまでのハードルが高すぎるから」
そりゃそうだ、という印象でしかない。

当たり前に帰結したところで、友井が言った。
「俺、結構前から日本の投資環境を変えたいなと思っていて、誰でも気軽に投資にエントリーできるように、投資教育とかしてみたかったんだよね」

さすが先生である。
塾の講師として学生と接する中で、彼は日本の投資教育の拙さを憂いていた。と同時に、日本の投資環境に成長の余地を感じているようだった。

実際に、下の図にもあるように日本の投資環境はアメリカや欧州と比べても、株式や投資信託など「投資資産」の割合が少ない。資産の半分以上が現金・預金である。

出典:資金循環の日米欧比較(2021年8月20日 日本銀行調査統計局)

よほど日本人は投資に対してギャンブルや博打に近しい感覚を持っているのだろう。金利がほぼゼロにもかかわらず、お金を投資に回すことはしない。
国民性が理由なのか、こればかりは仕方がないことだとは思う。

しかし、この状況も近い将来変わるかもしれない。
日本の投資資産の割合も、この図でいうアメリカとまではいかなくとも、ユーロエリアの水準に達するポテンシャルはありそうだ。

そう友井は感じていた。


若者を中心に変わりゆく日本の投資環境

この話をしたのが、ちょうど2年前のこと。
そのとき友井が予期したように、日本における投資環境は今、変わりそうな雰囲気を帯びている。
その原動力となり得るのが、20代以下の若い世代だ。

この数年、ネット証券を中心に証券口座の開設件数が大きく増加。
特に若い世代の伸びが著しく、日本経済新聞の記事によるとネット証券大手5社における2020年3月〜2021年4月の口座開設数は20代以下が最も多い。

さらに、2年前にはLINEで1株単位(=数百円)から株の取引ができるようになるなど、スマホでの取引も可能になった。

コロナによる巣ごもり効果や、つみたてNISAの浸透なども人々の投資を後押し。「老後2,000万円問題」を起因に、将来のセーフティネットとして投資を試みる人も増えている様相だ。

加えて、2022年度から高校の授業で投資教育を含む「金融教育」が始まる。

学校で投資について学んだZ世代とさらにその下の世代が、スマホで当たり前のように投資する時代が到来してもおかしくないのである。

追い風が吹いている気がする。

この話をしていた2年前、友井と僕は過渡期を迎えそうな”日本の投資”まわりには大きな価値とビジネスチャンスがあるかもしれないと考えた。
そして今、コロナ禍などに伴い、投資にまつわる環境は予期していた方向へと変わりつつある。

もちろん、当時はここまで口座開設数が一気に増えるとは思っていなかった。
だが、この領域であればビジネスの機会が転がっているのではと考えた2年前の僕らは、鉄板から立ち昇る熱気の中でさらに思考と議論を深めていったのである。
続きは次回。

合コンの話なんか書かずに、投資教育の話から始めればよかったんじゃね?って書いている途中で思ったけど、まぁそれは置いておこう。

TN

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