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夜明けの一本杉 Vol.3 ~御菓子処 花月~

第3回は、100年以上の歴史をもつ御菓子処 花月の女将、通文子さんにお話を伺いました。のれんをくぐると笑顔の女将さんがお出迎え。「松林」や「袖ヶ濱」、「等伯最中」などの銘菓が所狭しとお店に並んでいます。女将さんの語る人生観やお店づくりへの真摯な姿勢は必見です!(森)


水打てば 人が参るか この館

ー女将さんの人柄の良さが一つの大きなお店の魅力になっていると思います。
接客や生きていく上で大切にしていることはありますか。
私ね、自分だけが良ければいいんじゃなくて、やっぱり町内全体、商店街全体が良い姿になっていってほしいと思ってるの。自分のプラスマイナスは考えず、困っている人にはすぐに手を差し伸べないと。私はみんなのことを見てるから、何でも商店街のこと知ってるんよ。
あとこないだ東京に行って、(出品している)石川物産展とアンテナショップを見て、大丸デパートで色々見て他店の見学もしてきた。お菓子の梱包とかね、陳列とかああしてるのかってお勉強する。東京行くと常に色々なお店があるから、自分のお店をもっと良くしていくための勉強ができて刺激をもらう。最近はあんまりだけど、金沢に良いお店ができた時は一度は必ず見に行っています。もっと若い時は、主人と日本全国の和菓子屋さんを回っていたの。その県で一番良い和菓子屋さんは大抵行ってます。やっぱり忙しくても常に勉強。死ぬまで勉強なのよね。そして良いことは即実行することが大事。

ーなるほど!そういった姿勢が良い接客、お店づくりにつながっているんですね。
例えばね、良い挨拶は”いらっしゃいませ”、”ありがとうございました”と言ってお辞儀は「1,2,3」って心の中で号令かけるの。そして顔を上げる。手は前、角度は30〜45度でね。これがとても綺麗な挨拶。みんな勉強してるの。勉強しないと何も分からない。
それから、(早口で、素早くお辞儀をして)”いらっしゃいませ”、”ありがとうございました”、こんな振り子みたいな挨拶じゃ心が入ってない。そんなんじゃお客さん来ないよ。さっきやったような心のこもった挨拶は「奥さん本当に心からありがとうって思ってるんだな」って思ってもらえて、「また来ようかな」ってリピーターになってくれる。ね、何事にも必ず根本があるわけ。
朝一番、私は玄関のドアを開けて「どうぞお入りください」っていうことでまずその日の朝一番の空気を入れるの。そしてゴミを拾って、水を撒いて、花のお手入れもする。そうすることによってまずうちが活きる。そして人も活きる。毎日新鮮な日々であること!水打てば 人が参るか この館 ってね。

ー五・七・五!
70から俳句をしとる。学生の頃から茶道、華道もするの。

ー素敵です!


お花とのれんが映える素敵な入口とパシャリ

「松林」誕生秘話

ー花月さんには「松林」や「袖ヶ濱」をはじめ多種多様な和菓子が揃っていますが、その中でも特に思い入れのあるお菓子はあるんでしょうか?

そうねえ。まずは「袖ヶ濱」。先代、先々代から続いてきて、天皇陛下にも献上した由緒あるお菓子です。
そして「松林」。50年前はまだ長谷川等伯は世にあまり知られていなかったから、等伯を世界に広めていこうと等伯会っていう会を七尾で作ったの。等伯はこれからの七尾にとっても欠かせない人だから、国宝『松林図屏風』を取り入れたお菓子を作ってうちの三大銘菓にしました。主人と東京に上がって、東京国立美術館の館長に「『松林図屏風』の名前をお借りしてお菓子を作っていいですか」って。そしたら「いいよ」って。昔だからできたことっていうのもあるけど、花月は昔からの歴史があるし、一生懸命勉強しているお店だからとお返事をいただきました。だから本当にありがたいなって。そこから今の「松林」が生まれた。「松林」は私が初めて天皇陛下に献上したお菓子。だからとても意味深いお菓子なの。良質な小豆を使って、松を表現している。

ー花月さんは使う食材にもこだわっているとお聞きしました。
やっぱりね、食べ物はなんでもそうだけど、まず水は良いものを使わないと。うちは工場も地下水を汲み上げて使ってる。お茶室もお茶立てるときは良い水を。だから地震の時の断水にも耐えられました。
大切なのはまず良い素材。それは良い水から始まりますけども、そして二つ目に良い技術。良い職人を見つけること。三つめはリーズナブルでみなさん買いやすいお値段にすること。大儲けもしない、あんまり安すぎることもないように。売れるから高くしようっていうのもいけません。

信念もって精進

ーこれからの一本杉通りはどうなっていってほしいですか。
なんや、norasさんとかねえ。そういう若い人たちが商店街に入ってきて欲しいね。そいでもっともっとお客さんが来てほしい。けど、そうなるためにはまずこの通り全体にスムーズに歩ける安全な道路が必要やね。ガタガタの道路じゃどうしようもならん。まずは道路やらのインフラを整備せんことには「来てください」て言ってもね。この昔からの街並みを綺麗にしていかないと。
それから和倉温泉が立ち直らなければ能登全体も良くならない。これは絶対にそう。和倉温泉が元気になれば、そこに泊まってる人が七尾から奥能登まで来る。そしたら一本杉にも多くの人が観光しに来るでしょうね。一番の復興は和倉の復興なの。

ー通さんはなんでも知ってる!(笑)

なんでも知っとるよ。私に聞いたら商店街のこと、七尾のこと全部分かると思うけどね!そんだけみんなのこと一軒一軒把握してるから。みんなのことを気にして、全体を見てね。きちっと何か信念もって精進してかなければ続かないの。大きい一本杉通りの端から端まで輪を作っていかなくちゃね。(立地が)少し離れてるお店にしても、イベントも一緒にして、一軒でも多くみんなで楽しんでいこうと思ってます。来るもの拒まずね、いい街づくりをしていかなくてはね。

ーありがとうございました!

取材日:2024/8/26


店舗情報
御菓子処 花月
店舗住所:石川県七尾市一本杉町45
https://maps.app.goo.gl/GqufAj565Kmj1DsE8
営業時間:8:30-18:30
定休日:火
電話番号:0767-52-6431(一本杉本店)
和菓子作り体験(要予約)も行っていらっしゃいます。ぜひお店に足を運んでみてください!




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