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首都高

うちの事務所は三鷹市井の頭にある。

高井戸インターへのアクセスが改善される東八道路の拡張は緑を削る大規模な開発だったため、随分と反対意見があった。実際工事は何年もかかっており、近隣の住民も「通り抜けの車が増えると困るな」とよく言っていたが蓋を開けてみると、今現在、実感としてはそんなこともないような気がする。

結果的に自分の身に何が起きたかというと、井の頭通りを越え、方南通りを中野に抜け新宿に出るよりも、高井戸インターから首都高に乗って都心に出る方がアクセスが良くなった。結果的にうちの車はETCを2機新たに搭載することになったが、都心や千葉の方へ行くことが元来多かったので随分と助かった。

今くらいの時間(これを書いている23時半過ぎ)に昨年一度、仕事の帰りに首都高でタイヤがパンクした。何か踏んだのかもしれない。さすがに誰を呼ぶことも気がひける時間帯だったので50mほど歩きSOSの電話ボックスからレスキューを呼んだ。

その頃はまだコロナは今ほどひどくなかったため、程なくして来てくれたレスキュー隊員の男性が「あ、マスクをしてなかった。ごめんなさい」とドア越しに僕に言ったことが思い出される。そのあとすぐにより安全な場所まで誘導してくれ、かなりの速さでタイヤの交換を行ってくれた。

どのようにお支払いしたらいいのですか、と僕も初めてなので尋ねたら「こういうのは無料ですよ。ではお気をつけて」と言って、恩人たちは爽やかに去って行った。

明日、12月15日(金)は家賃支援給付金申請の最終日。

売り上げがどこかの月で前年比50%以上、もしくは3ヶ月連続で3割落ち込んだ企業に対し、会社で借りているテナントから駐車場まで、賃料の実質4ヶ月分(月々の費用の2/3を6ヶ月分)を給付するという制度だ。

何もないときは経営者たちの中にも「税金を持っていかれて」とこぼす人たちは大勢いた気がする。首都高の料金もしかり。

でもいざという時のレスキュー隊には、誰しもやはり大いに感謝するのではないか。僕は首都高の利用料は、もしもの時のレスキュー費の積立だと思っている。

( 文・西澤伊織 / イラスト・sodonderさん )