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武者小路実篤作『友情』を読んで

武者小路実篤の小説は初めて読みました。この小説は今から100年前に書かれたものです。時代は違っても、友情や恋愛の難しさは変わらないものです。まさに永遠の青春小説でした。
久しぶりに、本を読みながら泣いてしまいました。

友情と恋愛の三角関係のお話でした。

野島は友人仲田の美人妹の杉子に一目ぼれして、杉子に会うために仲田の家に行ったり、親友の大宮に杉子のことを称賛していたり、愛想をよくされて喜んだり、杉子が自分以外の人のことを尊敬するのが嫌で悩んだりしていて、これに本当に共感しました。私も片思いしていたことがあるのでそういう心情は身に覚えがありました。

下篇で実は杉子は野島のことを好きじゃないことが判明して、しかも杉子はかなり大宮のことが好きで(これは上篇の最後の方で明らかになっていた)、熱烈なラブレターを送っていることが分かるのですが、これも読んでいて共感するばかりでした。

大宮は、杉子に対して冷たい態度をとっていましたが、杉子の自分への恋慕に気づいて「自分がいては彼女と野島の邪魔になる」と思ってヨーロッパにいきました。杉子が大宮に手紙を寄越してきて、大宮は野島への友情を優先して杉子の気持ちを受け入れずに冷淡に振舞おうとしましたが、秘めていた杉子への気持ちを抑えておくことができず、様々な葛藤を経て最終的には友情を捨てて愛する人を手に入れたのでした。この友情と愛情の板挟みになって葛藤する大宮の場面は、なんて謙虚で義理の深い人だろうと思いました。本当に、大宮のように友人と接したいなと思えて、勉強になりました。

このお陰で、野島は、親友と愛する人の両方を同時に失うのです。本当に想像しただけで耐えがたい苦痛でしょう。でもこの寂しさを乗り越えて脚本家の仕事に励んでいくのでしょう。

恋愛って友情が絡むと本当に難しい。

この小説で青春を追体験したような気分です。私も、友人を尊敬して友人のためになることを厭わないような、大宮のようになりたいと思いましたし、大宮のような友人がいる野島に憧れました。

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