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読書(2020/9/21):『胎界主』の「アスちんが傍流から主流に向かいピュアたまを圧倒する物語、を、稀男が成就させてやる物語」論

(ツイッターログをサルベージ・若干編集)

不意に、「『胎界主』の主人公、自分の人生の主人公という意味では稀男だけど、物語の主人公としては、実はアスちんなのではないか(特に『塔の男』から『胎界主ピュア』まで)」という閃きがあった。今更ではあるが… #胎界主

一見第一部最終話っぽい『無責任飛行』は、実は物語主人公のアスちんが復讐譚主人公であるという動機を語り、これも描写の積まれた第一部ボスレックスを、最終的に不意打ちでコミカルに倒す。という意味で、第一部での「ボス撃破」ではあるが、これを鮒寿司先生は最終話としては採用しなかった。 #胎界主

で、「何でこんな第一部最終話に…?」となる『帰還』だが、この話の要は「ソロモンヘイムでの用事を終えたアスちんが、いよいよ異世界に移行する」ということなので、アスちんが第二部関門突破のため、境界守、妨害戦力として送り込まれたアリムを退ける話になるのだろうな。 #胎界主

要は、鮒寿司先生の中では、『帰還』までは基本ソロモンヘイムで第一部。(『バンシー牧場』と)『管理者リョース』からはほぼ全部ロックヘイムで第二部。ということなのだろう。そこは理屈の上ではもちろん分かる(官能的審美的に釈然としないだけで) #胎界主

まあ、ポッと出の即席境界守妨害戦力アリムが、みっちり積み上げられた範馬勇次郎系ボスレックスより強い訳がねーんだよな。『帰還』は、倒すべきボス敵を倒す話じゃなくて、旅立つ話であって、それを邪魔する敵を倒す話だから、アリムはレックスより弱くていいし、それで当たり前なのだ。 #胎界主

で、第二部一幕最終話『合成躰化妖精ナックラヴィー』では、アスちんは公的な標的であるピュアたま公的な動機を折られて逡巡するし、二幕最終話『死の神獣レイス』では私的な標的であるハッグのババア私的な(アスちんにとっては大事な復讐の)動機を折られて逡巡するのだ。 #胎界主

そして、まだ胎界主初見実況が終わってないから詳しくは書かないが、物語メタ野郎であるピュアたまは、物語としての、(ソロモンではなく)「アスちんにとっての」根幹である復讐譚を、「そんな復讐譚は主流でも何でもないし、ツマンネーし、アスちんのためにならん」と否定する(こいつ…) #胎界主

だが、ピュアたまは、最終段階でのアスちんとハッグのババアの関係および物語としての変質、当事者間での復讐譚からの超克と解放「河原で殴り合ったら理解し合ってきた」番長ものじゃん)(違います)(違わないよ)を前にして、事態が己の理解を超えてしまった。 #胎界主

復讐譚などという、価値に乏しく有害であり滅ぶべき傍流が、「タイマン張ったらダチぜよ」的な番長もの程度には価値ある地点に着地した。「傍流が活きて主流に合流する」という発想を、要は採用しないピュアたまが、ここでアスちんの物語物語メタ野郎として反例を食らって、ダメージが通る! #胎界主

アスちんは、動機を多重に折られつつも、ハッグのババアと当事者間で復讐譚を超克して解放された。救済のために物語をも折りにかかったピュアたまを、己の物語の変質による、ピュアたまによらない救済という形で、否定し返した。それがきっかけで、ピュアたま迷いが生じ、あの結末に至った! #胎界主

傍流を認めず主流だけを望み、傍流が理解できないので、傍流から主流に近づいた物語を、主流の観点から適正に解釈できない、そんなダメな物語メタ野郎ピュアたま。それを、アスちんは、傍流から主流に近づく話で、覆して、「ひょっとしてこれは価値ある話ではないか」と考え直させて、勝った! #胎界主

まあ、あの時点でのピュアたまの、主流しか見ていない理解力では、アスちん新たな物語に対する理解は全部的外れになってしまっていた訳だ。だが、そもそも、ピュアたまが「傍流だが、大事な話かも知れない、理解を試みよう」と、不器用ながらも向き合う時点で、猛烈に「効いてる」んだよな… #胎界主

傍流から主流に近づく話では、実は『生体金庫』もそうなのだが、あれは支流の(としか言いようがない)ハオウ君の役割が不可欠だったし、骸者が役者では、ピュアたまには心底は届かなかったんだよな。愚直なアスちんの方が、暴虐の骸者よりもまだ「話を真剣に聞こうと思える」相手だった訳だ。 #胎界主

ハッグへの囚われ/捉われからも、ピュアたまの世界レベルの大きな物語(しかもリアル系)的な主流からも、突き詰めれば関係ない、外ならぬ己の物語。アスちんはそれを、いろいろありながら果たしたのだ! そして、己の物語を果たした後の、最後のアスちん、実に幸せそうだ。ハッピーエンド。 #胎界主

ということで、実はアスちんが、物語から肉を削いだ後の、真の背骨だったのだ! (鮒寿司先生、隠し球として、これを念入りに背景に溶け込ませすぎて、逆に読んでるこっちには分かりづらくなってるが…)(分かったようなことを言うなよなお前) #胎界主

そして、そこで、助ける脇役である稀男は、最後にああなって、結果的に、他人の物語の主人公である他人のアスちんの、ハッピーエンドの笑顔をもたらしたのだ。それこそ、ザ・稀男ストーリー、『幸福な王子』、『国を救った少年の腕』、そして『人魚姫』って感じだが、そんなのってあるか…!? #胎界主

ポイントは「『胎界主』の物語主人公は、実はアスちん」「アスちんは復讐譚から始め、それを超えることで、ピュアたまに届き、ハッピーエンドを迎えた」「稀男は、他人のアスちんの物語を成就させることで、自分の人助けの物語も果たした」ですね。ご清聴有り難うございました。いじょうです。 #胎界主

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