『ESGブランディングとミレニアル世代とZ世代』(環境研究)
「ESGブランディングとミレニアル世代とZ世代」について、自分なりの考えをまとめる前提として、マーケティングでいうセグメントという考え方と、ユングがペルソナで表現したAusschitt(アーシュニット、ドイツ語)の違いについてをまとめておく。
ユングの心理学的では「ペルソナ≠元型」(Ausschnitt アーシュニット:集合的心から切り取られた切片であり、Segment:全体の一部分ではない)、と捉えているが、マーケティングでのペルソナの捉え方もそれに近いものがある。
ここで、改めてマーケティングやITで言われるペルソナについての解説を読んでみる。
つまり、セグメントとAusschnittは以下のような根本的な違いがある。
もともとユングが、ペルソナをドイツ語でAusschnittと表現していたものを、英語に訳すときにSegmentと訳してしまったため、「ペルソナ=元型」という考えになってしまった、という意見がある。
ペルソナはもともと仮面(和辻哲郎:面とペルソナ)なので、「ペルソナ≠元型」が正しい。
世代をセグメントで考えると、「団塊の世代」「新人類」「バブル世代」、そして「ミレニアル世代」「Z世代」などと分類されている。そして分類されたセグメントの特徴が列挙され、マーケティング屋の広告ターゲットとされる。
別の捉え方として、世代をユング本来のAusschnittで捉えると、その世代のペルソナ像の輪郭が見えてくる。
ここでは、世代をAusschnittで捉え、ESGブランディングにつなげてみたい。
ミレニアル世代とZ世代はインターネットやスマホが出現してから現れた世代で、ネットコミュニケーションに抵抗のない世代といわれている。
私の世代はPCがマイコンと呼ばれ、コンピュータが個人のものになりはじめた世代で、「反省記」を出版した西和彦氏や、今や世界的な投資家の孫正義氏などがいる。
この世代は「団塊の世代」と「新人類」のハザマの世代で名前はついていないが、ビル・ゲイツ氏を含めテクノロジーに抵抗もなく、自ら自発的に創造する世代でもある。
ミレニアル世代とZ世代はインターネットを介したデジタルテクノロジーインフラに支えられたSNSを普通に使う世代で、その特徴は「自分独自のスタイルをアピールしたい」「仲間とのつながりを大事にする」「社会貢献性の高い仕事に興味がある」といわれている。
では、ネットコミュニケーションを使いこなす人とそうでない人(世代)との本質的な違いはどこにあるだろう。
以下の『仕事に効く 教養としての「世界史」』(出口治明、祥伝社)にそのヒントがあったので抜粋する。
ブログ、facebook、Twitter、Instagram、Youtube、TikTokなどのSNSは、自分の行動を書いたり、写真にしたり、動画にして記録することができるという大きな特徴がある。
前述の諸葛孔明の魏との戦争を繰り返す話は、中国は歴史家が何らかの手段で記録として歴史をまとめるであろうことを意識しているからこそ、行動が独自のスタイルになるというものだ。
同じ視点でSNSを考察すると、自らが自分の行動を記録するが、諸葛孔明と同じように、「自分なりの独自のスタイル」というものを意識する人が出現するはずだ。
歴史家が記録を残すには客観的に独自性がないとまずいため、「歴史上のどの権力者より長く権力を握ること(台湾を含め祖国を統一した)=名を残すことになる」、という習近平のような発想になる。しかし、歴史に名を残すことを目的にしない人でも、「人と違った方が良い」という単純な発想が根底にあるため、SNSでの情報発信につながっているのではないか、と推察することができる。
あるいは、SNSを使いこなし情報発信するからこそ、「人と違った方が良い」という発想に自然になっていったのかも知れない。
逆に団塊の世代では、「人と同じ方が良い」という意識が根底にあるからこそ、同じように出世したい、という競争心になった、と考えることができる。
このことを、Ausschnittで考察してみよう。
ミレニアル世代のAusschnittをアレキサンダー・オカシオ・コルテス氏(AOC)、Z世代のAusschnittを環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏とすると、彼女たちそれぞれは「自分独自のスタイルをアピールしたい」「仲間とのつながりを大事にする」「社会貢献性の高い仕事に興味がある」というミレニアル世代やZ世代の特徴に当てはまる。
では、彼女たちはどんな意識をもっているのだろう。単純化して考えてみる。
少なくとも、1)人と同じが良い、2) 人と違っても良いという意識ではなさそうだ。
ご両人とデプスインタビュー(深層面接)、あるいはTAT法(主題統覚)などが行えれば、それを明らかにすることができるが、アレキサンダー・オカシオ・コルテス氏(AOC)の発言やグレタ・トゥーンベリ氏の発言から推測すると、私は以下のステップで思考しているのではないかと考えている。
それは、政治家、あるいは環境活動家というペルソナ(仮面)がそうしているだけで、実はネットコミュニケーション(SNS)によって、3)人と違った方が良いという集合的無意識(元型)が根底にあり、それが表出したのではないか、また逆にSNSによって、物理的に距離の離れたところに、同じような人を発見できる。
つまり、デジタルにより距離が関係なくなったからこそ 同じ考えの人と連帯しやすくなり、物理的な距離が近い人と違っても良いと思えるのではないか、と仮説することができる。
私のようなタイプは、それを年代を超えた縦のつながりとして意識してきたのだが、ミレニアル、Z世代はSNSという手段で横のつながりから意識することがやりやすいのではないだろうか。
ESGブランディングに話を移す。
前述の1)人と同じが良い、2)人と違っても良い、3) 人と違った方が良いを「守りのESG」「攻めのESG」に分けて考えると以下のように捉えることができる。
これらの3つのアプローチにより、ESGブランディングの価値は違う。
したがって、ミレニアル世代やZ世代は、自分の意識と同じように、3)人と違った方が良いと考える企業のブランド価値が高いと考えるのは自然なことだ。
しかし、現在の日本企業の「空気」は、「ESGの精神とマックス・ウェーバー」にまとめたように、トップが号令をかけるフェーズにある。
この「ESGの空気」が日本中に蔓延した後に、サントリーの山田健氏のように自発的にボトムアップができる人材が出現すれば、その企業のESGブランディングは高まっていくのではないか。
その人材がミレニアル世代なのか、Z世代なのか、あるいは50代や60代、もしかするとバブル世代なのか、いずれにしても、アレキサンダー・オカシオ・コルテス氏(AOC)やグレタ氏や山田健氏のように自発的に行動できる人材の存在が極めて重要になることだけは間違いない。
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。