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コミケ中止騒動に見るオタク文化における「祭典」の必要性と日本再生の活路 【シン・ニホン 考察】

井ノです。

1975年より毎年開催されてきたコミケが中止になってしまいましたね。ネット上ではオタク達の阿鼻叫喚の声が聞こえてきます。井ノもこのコミケというオタクの「祭典」には毎年欠かさずに参加していたので、まるで心にポッカリと穴があいたような悲しみに暮れています。例えるなら子どもの頃に友達と遊んでいた広場が、いつのまにか住宅地に変わってしまったような、そんな大切な楽しみの「場」を奪われた気持ちです。

そんな悲しみに暮れている最中、季節外れの雪が降っているし、いつも通っているブックカフェも閉店しているしで、まさに泣きっ面に蜂のような状態です。このままでは読書ライフもままならないので、気分転換も兼ねて以前から気になっていた「シン・ニホン」について調査してみました。

『イシューからはじめよ』の著者でもある安宅和人さんの9年振りに執筆した新作です。ファクトベースの現状分析と新たなる時代の展望ということで、「AI×データ時代における世界と日本の格差」と「日本再生に向けたこれからの人材教育」が非常に熱い思いで語られています。

文化における「祭典」の必要性とコミケがビックサイトで行われる理由

「シン・ニホン」を考察するための前提知識として、オタクやコミケについて考えてみましょう。まずオタクにとってコミケというものは、非日常を楽しむための貴重な「祭典」であり、現実における「場」です

コミケには年代や職業に関わらず同じ趣味をもった同志がいて、好きなコンテンツを通じた交流があります。その空間において私は単なるオタクとして、ゲームやアニメが好きなカメラが扱える人になっていると思います。

また文化における「祭典」の必要性については、2013年の動画になりますが宇野常寛さんの「地理と文化の新しい関係」において語られています。

◆文化が生まれるための2つの条件
①多様なコミュニティがあること。
②そのコミュニティで過剰なコミュニケーションが行われていること。

◆現実の場で「祭典」が必要な理由
カルチャーはインターネットとの親和性が高いが、オンライン上のコミュニティが活性化すればするほど、その吐き出し口として現実における非日常の「場」となる「祭典」が求めれられる。

◆コミケがビックサイトで行われる理由
「祭典」が開催できる規模の大きな箱だから。

つまりオタクにとってコミケというものは、オンライン上のコミュニケーションの盛り上がりと普段の平凡な日常とのバランサーの役目を果たす「祭典」であり、リアルな空間としての「場」な訳です。

ただしコミケ規模の「祭典」が開催できる箱というものは、都内近郊としては「ビックサイト」や「幕張メッセ」しか選択肢がありませんでした。そのため利用規約や契約更新の観点で次回の開催が危ぶまれている訳です。

カルチャーの本質的には「祭典」さえ開催できれば良いので、別に地方でやっても良いはずです。「ビッグサイト」の利用が難しくなるのであれば、今後は地方復興の観点も含めた動きが起こってくるのではないかと予想しています。

日本再生のカギとなるオタクの「妄想力」

「シン・ニホン」においては、これからは「妄想を形にする⼒」が富に直結する、それを支える「技術とデザイン&アート」が必要だと提唱されています。

実際に妄想力によって世界を変えるイノベーションを起こした創業者としては、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクが有名ですね。

日本は「AI×データ」観点において、技術と人材が圧倒的に不足しています。世界と全く戦えない状態のまま、実に15年間も一人負けを続けているのです。

日本再生のためには「AI×データ」とグローバル人材に必要なスキルの観点で学校教育制度を抜本的な見直すことと、若者の未来のために国家予算を張り直す必要があるということが提唱されています。

そんな一人負け状態の日本でも世界に負けない要素として唯一期待できるのが「妄想力」です。「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のように未来の姿を豊かに描いた作品や、アニメーション文化の著しい発展は、まさに日本の妄想力の強さを表していると言えるでしょう。

オタクは好きなものをとことん追求したり、同調圧力に負けない個性の強さといった「妄想力」を持っています。ただしオタクの興味や関心というのは内向きで自分の世界に閉じてしまっています。

この興味や関心のベクトルを実社会での利用や世界を変えるということに向けてあげることができれば、その「妄想力」によって社会影響を持つようなギークやハッカー(イノベーター)になれるはずなのです。

じゃあ具体的にどうすれば良いのかということは考えていく必要があります。若者向けに妄想ドリブンな情操教育を実施するというのも大切ですが、まずはオタクの本質を深く理解する必要があると思います。

オタクの本質から考える日本再生の具体策

基本的にオタクという存在は、学校や会社における自分のヒエラルキー維持よりも、自分の興味関心を優先する人が多いです。また同調圧力に負けない意志力や個性を持っているために集団から疎外感を覚えることが多く、意外と大勢に理解されたいという気持ちを持っていると思います。

そんなオタク達は自分が興味がないヒエラルキー重視で同調的な人々と過ごさなくてはいけない日常に対して鬱憤をためており、その開放の「場」としての好きな作品が共通言語としたオンラインコミュニティや非日常としての「祭典」を求めているのではないでしょうか。

ということで具体策として考えられるこは、好きな作品という共通言語が無くても、妄想力を発揮して活発なコミュニケーションが可能な「場」を用意することが挙げられます。また現金な話ですが好きなアイドルに呼びかけてもらうのも一つの手かもしれません。

他の案としては日本再生をテーマとして社会情勢や日本の教育制度、AI×データなどを擬人化したキラーコンテンツを作るのも良さそうです。

実際に国を擬人化した漫画「ヘタリア」という作品が流行った時は、作品への理解度を深めるために世界史を学ぶ女子が急増したという話があります。同様に刀剣を擬人化した「刀剣乱舞」という作品が流行った時は日本史を学ぶ女子(歴女)が急増したのです。

このように擬人化コンテンツが人気になった時の爆発力は凄まじく、オタクの内側への興味とリアルへの興味との境目を埋めてくれるハブの役割を果たすことがあるのです。

あとはコミケ中止のように好きなコンテンツや「祭典」を奪われてしまうという危機感や当事者意識における一体感は大きな力を持つと思っています。

実際にコミケ継続に対する支援を意思表明するためにオタク達が動いた結果、『コミックマーケット98カタログ(冊子版)』がAmazonの「本の売れ筋ランキング」を一位を獲得するという事象が起きているのです。

このオタク達の一体感のベクトルを上手に日本の課題に向けることができれば、もしかしたら世界を動かすレベルの力になるかもしれません。

「ジャマおじ」はVR空間に隔離しよう

オタクの妄想力に日本再生の活路があると仮説を立てましたが、最大の障壁として立ちはだかる存在が「じゃまオジ」です。響き的には「おジャ魔女」に近いですが、そんな可愛らしい存在ではありません。

◆「ジャマおじ」とは
保守的で批判や文句ばかりで新しいことをしようとする若者の邪魔ばかりするおじさん。ミドル層・マネジメント層によく見受けられる。

大企業病からもわかるように過去の成功体験に縛られて無駄に地位が高いのが「ジャマおじ」です。

彼らの存在のために、予算は未来への投資より既存事業の維持にまわされ、意思決定はスピード感を失い、反対意見を言う若者は異動するハメになります。

組織はそんな勝ち馬に乗るやり方に異を唱えないごますりイエスマンと無気力人材ばかりになって、新しいことにチャレンジできなくなるのです。

何故「ジャマおじ」は存在するのか。彼らの言い分を想像するのは簡単です。要は「俺の居場所を奪うな」と言っているのです。

とは言えこれからの時代を生き抜くための日本再生、企業再生の観点では「脱・ジャマおじ」は必須になります。ここまで変わることができない日本と企業の状況を見ていると思い切った「スクラップ&ビルド」のやり方が求められるでしょう。

荒治療になってはしまいますが、「ジャマおじ」から権限を剥奪しつつ、彼らの能力を活用できる居場所を与えながら、今までと近い待遇で扱うような変革が必要なのです。

実際「ジャマおじ」の考えや行動は、勝ち馬に乗るために培った統制力や非常に高い論理性を持っています。

彼らが持つ組織に対する忠誠心、経験に基づいたノウハウやネットワーク、長い経験の中で培ってきたコネクション、若い世代とは違った交渉術というのは目に見えない貴重な資産になるのです。これらの無形資産を組織や若い世代に継承していく仕組みが必要になるでしょう。

具体的には「ジャマおじ」の意識改革を促しながらも、VR空間などから会議に参加するような、ご意見番になってもらったり(その場にいると文句が多いので)、若手育成の担当や新人研修の講師になってもらうことが考えられるでしょう。

ただし「ジャマおじ」からの反発が出ないように彼らの幸せも考慮していく必要があります。案としては彼らは基本的に自分の話をするのが大好きなので、それを上手に活用していくことが大切でしょう。

若い人達も「ジャマおじ」の生き方や心理について理解しながら、その知識や経験を尊重し、学びたいという姿勢で接すれば、win-winな関係が築けるはずです。

まとめ

日本再生の観点では、「データ×AI観点における世界と日本の格差」を知り、「これからの人材教育」について、ミドル層も若者も国視点と当事者意識を持って考えていくことが求められています。

ミドル層を大事に保護しているだけでは、日本の一人負け状態から抜け出すことはできません。これからの未来を担う若者に対して情操教育や投資をしていくような施策を打ち、妄想力で世界を動かせる人材を輩出するための仕組みを形成していく必要があるでしょう。

そのカギとなるのはオタクの「妄想力」かもしれません。彼らへの理解を深めながら、ギークやハッカーを生み出すためにはどうするべきか仮説を立てていきたいと思います。

井ノβe太

[参考文献]
『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 』

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