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「After GAFA」に見る成功のパラダイムシフト ~「お金の価値がゼロになる体験」から学んだ地域とコミュニティの力~

井ノです。

皆さんはどのくらい「お金」が欲しいと思いますか。100万円、1000万円、あるいは1億円…と想像する金額は様々だと思いますが、たくさんあった方が良いというのが一般的な価値観だと思います。

その価値観を象徴するように世の中には成功法則や起業の推奨、お金持ちの思考法のようなビジネス書が溢れています。勿論ビジネスの目的というのは「お金を稼ぐこと」なので当たり前と言えば当たり前なのですが。

ですが井ノは「お金」に対する執着がありません。それは人生において「お金の価値がゼロになる」という体験をしたことで、「お金」は生きていく上で必要な分と楽しみが保証される分だけあれば良いという達観に近い考え方になったからです。

確かに人の人生における課題はほとんど「お金」で解決できるので、そういう意味ではたくさんあるに越したことは無いでしょう。ですがもし今まで変わらなかった「お金」の価値に変革が起きるとしたら話は変わってくるのです。

皆さんには是非「お金の価値がゼロになった社会」を想像することで、迫り来る不確実かつ激動の時代を乗り越えるために必要な気づきを得て頂きたいと思っています。

「お金の価値がゼロになった体験」について

まず私の中で成功の定義が、お金を稼ぐことではないと実感することになった体験をお話ししたいと思います。それは東日本大震災で被災した際に「お金」の価値がゼロになったように感じたという体験です。

当時、私は大学生でしたが、震災の発生によって住居は津波で流されたり、数ヶ月もの間、電気・ガス・水道といったライフラインが停止し交通網から遮断されるという中々に壮絶な体験でした。

ですが人間というものは不思議なもので日常がひっくり返されるような未曾有の大災害が起きたとしても、その状況において出来ることを模索し懸命に生きようとするのです。

かくいう私も例外ではなく、避難所暮らしをしながらも救援物資の衣服を身にまとい、食糧を確保するために探索に出かけては賞味期限ギリギリの菓子パンを見つけたり、市役所に行って並んでは水を汲むような日々を過ごしました。

そんな状況においては、そもそもコンビニやスーパーは閉店しているし、交通手段も徒歩や自転車に限定されていました。つまり一時的に「お金」と交換できるモノやサービスが存在しない社会になっていたのです。私はこれが「お金」の価値がゼロになった体験だと思っています。そんな状況で起きた出来事を二つご紹介したいと思います。

お金の価値がゼロになって起きた出来事

一つ目の出来事は「お金」の価値がゼロになると人は地域に戻るということです。今まで学校や会社という同じ地域でも別々の人生を生きていた人々が、災害によって生存の危機に瀕した結果、同級生や町内会というような地域の結束力が高まって共生しようという意識が芽生えたのです。

私の場合も実際に顔を合わせても会釈する程度だった近所のおじさんから情報提供してもらったり、中学卒業以来ずっと会話していなかった同級生と避難所で再会して一緒に行動するようになりました。

それは昔から顔馴染みであったり一緒に過ごしたことがあるという記憶によって形成された「信頼」が「お金」以上の価値を取り戻した瞬間だったと思います。

二つ目の出来事は「コミュニティ」が力を持つということです。震災当時は生き延びるために悪さをする人がたくさんいました。実際私の家でも庭のタンク保管していた灯油が盗まれるような被害に遭いました。

ですが因果応報というのはあるもので、狭い地域においては悪事を働く人はすぐ発覚し、避難所から追い出されたり炊き出しを受け取れないような扱いを受けることになったのです。

またライフラインが停止しているためにネットやテレビを観ることができませんでした。そのため時間を持てした私の中で自然と何かやりたいという気持ちが生まれました。そして私は再会した友人と一緒に復興ボランティアに参加することにしたのです。

最初は就活の自己PRにでもなれば良いという軽い気持ちでしたが、より壮絶な被災現場を目の当たりにしていくうちに、自分も貢献したい、力になりたいという熱い気持ちが芽生えたのを今でも覚えています。

復興ボランティアの作業内容としては主に津波によって被災した住居に出向いて家具やヘドロの片づけを行うというものでした。流れとしては当日センターに集合している有志の中から4~10人ほどの即席チームを形成して1日に2,3件の依頼に対応するような形式です。

ヘドロを吸収した家具というのは、非常に汚く水分によって重量も増しているため、それを運び出す作業は危険も伴い想像以上の重労働でした。特にヘドロまみれの畳の運び辛さといったらもう最悪でした。そんな状況においても、とにかく貢献したい、自分も力になりたいという強い気持ちに突き動かされ毎日ボランティアセンターに通ったのです。

その活動を続けて行くうちに、また別の友人に再会しました。彼の家はライフラインが復旧していたため、ご好意でお風呂に入れてもらいました。ヘドロまみれで疲れた体にとって、数週間振りのお風呂というものは本当の意味で生き返る心地になったのを覚えています。

復興ボランティア活動は日本各地から集まった年代も職業もバラバラという即席チームで対応していました。利害関係が無いのにも関わらず、みんな人の力になりたいという大義の元で集まっていたので、その結束力は凄まじいものでした。

実際に数十人規模で対応が必要な依頼についてもチームワークを駆使して着実に遂行していったのです。このように皆で力を合わせた地域貢献や依頼主から心の底から感謝されたという「体験」は私の人生においても大きな力を与えてくれていると信じています。

「After GAFA」におけるパラダイムシフト

ここまで私の体験ベースで「お金」に対する価値観の変化や地域とコミュニティの持つ力についてお話ししてきました。この考え方を元に「After GAFA」について考察していきたいと思います。

本書では日本におけるGAFA至上主義に対して意を唱えながら、世界のアンチGAFAの潮流とWeb3.0の潮流によって変革されていく今後の経済や社会の展望が解説されています。

確かに私たちはGAFAの登場により多大な利便性を享受できるようになりました。ですが情報の正誤に関わらず世界中に拡散されてしまう仕組みや、アルゴリズムによって企業意図が個人の意思決定に介在している状況に対しては、どうしても不信感を抱かざるを得ません。実際に彼らの中央集権的なビジネスモデルに対して反発する潮流は世界中で顕在化しているのです。

本書ではGAFAの登場によって失われたインターネットに対する「信頼」と個人の権利を取り戻すためには分散化の仕組みが必要であり、それを実現する手段としてブロックチェーン技術に活路を見い出すべきだと提唱されています。

以下、After GAFAの時代におけるパラダイムシフトについて個人的な見解を交えながらまとめた表です。

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将来的にブロックチェーン技術の標準化が実現すれば、インターオペラビリティ(相互運用性)によって分散する自治コミュニティ間において価値交換が可能になるとされています。ここで言うインターオペラビリティとは、どのブロックチェーン利用していても価値を等価交換を実現しようとする考え方のことです。

自治コミュニティにおける価値交換は互酬性によって実現されます。互酬性というのはコミュニティに対して何か良いことをしたら、お礼に何か良いことをしてもらえるという原理です。実例としてはニュージーランドの「リトルトン時間銀行」というものがあり、カンタベリー地震の際コミュニティのレジリエンスを高める役割を果たしたと言われています。

時間銀行とは、会員が取引したいスキルを事前に登録し、自分のスキル(たとえばコンピュータの修理など)を使って1時間働けば、ほかの会員が提供するサービス(たとえばガーデニング)を1時間分買うことができるという、草の根の取引システムです。

このように「After GAFA」においては「信頼」「体験」と言った「互酬性」による価値交換の仕組みが推進されると考えられているため、「お金」の価値は相対的に低下していくと予測できるのです。

タワマンに住んだら成功という昭和の価値観

「お金」について考えていく上で一般的な成功の定義について考えてみたいと思います。成功者のイメージとして代表的なのはタワマンが思い浮かびます。

タワマンに住んでいるということ自体が富裕層のステータスですし、金額に見合うだけの景観や充実した設備、防犯対策などといったメリットも数多くあるのが事実だと思います。

ただ起業や副業と言った自分だけの「ちがい」を生み出すことによって成功したのにも関わらず、やってることは皆タワマンに住むというのは違和感を覚えてしまいます。

なぜならせっかく「お金」を稼ぐという素晴らしい才能があるのに、既存の成功者と「おなじ」使い道しかできていないからです。どうしても発想力が貧困というか想像力が欠如しているように思えてしまうのです。

それはきっと日本の均質的で横並びの教育制度と競争主義社会におけるマウント合戦の成れの果てだと思います。まさに昭和の価値観の名残だなあとガッカリしてしまうのです。

日本における成功者の定義は単に「お金稼ぎで上手くいった人」になってしまっているのです。そのため社会課題の解決よりも自分の事業の成長が優先されていますし、スティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスのような世界を動かせるような突出した創造的な天才は全く現れていないというのが現実です。

結局のところ日本の成功者のほとんどは、世界を変えたいという訳ではなく、昭和の価値観と承認欲求に突き動かされてタワマンに住みたいだけな人に思えてしまいます。

また『不動産2.0』によると、タワマン信仰に拍車をかけているのが超低金利の時代です。頭金をそれほど用意しなくても長期のローンを組むことができるので、共働き正社員夫婦(パワーカップル)などが続々と億ションを買っているとのことです。

ですが彼らは収入減、病気、事故、離婚…など起こりえないことが起こるリスクを全く考慮できていません。超低金利によって年収に関わらず住宅ローンが組めるようになった反面、借りられる金額と実際に返せる金額の間には潜在的なギャップが存在しているのです。

このような状況に対して専門家の間では、将来的に日本版・サブプライムローン問題が起こる可能性があると危惧されています。昭和の価値観のままタワマンに住もうと躍起になっている現代人は、成功の定義について見直さなくてはいけないのです。

マズローの欲求5段階説における成功とは

お金稼ぎが上手な人が成功者だという考え方について見直していく上で、マズローの欲求5段階説を見ながら真の成功とは何なのか考えてみましょう。

◆マズローの欲求5段階説
「人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとされる」

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マズローの欲求5段階説において低層にあるのは物理的に満たされたいという欲求です。具体的には生理的欲求(食べたい・飲みたい)、安全欲求(健康や住居)、社会的欲求(集団への帰属)があります。

下層における物理的な欲求が満たされることで高層にある精神的に満たされたいという欲求が生まれます。具体的には尊厳欲求(承認欲求)であり、自己実現欲求(能力や成長、創造的活動)です。

興味深いのは尊厳欲求(承認欲求)以下の欲求は「不足しているものが欲しい」という欠乏欲求でしかないということです。

欠乏欲求が起点となるビジネスは、どうしても自分の利益中心になり目の前にある課題だけに焦点が当たってしまいます。そのため地域に根差した社会的課題を解決したり、世界を動かすような創造的なイノベーションは生まれづらいのです。

マズロー曰く自己実現欲求とは成長欲求であり、これを極めて行くことで6番目の「自己超越欲求」と呼ばれる社会や世界を変えたいという、より高度で崇高な欲求が現れると言っています。

スティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスのような突出した創造的な天才達は、まさに「自己超越欲求」の段階に到達していると言えるでしょう。彼らは社会や世界を変えたいという自分起点の妄想を育てていった結果、破壊的イノベーションを起こすという偉業を達成することができたからです。

真の成功者を目指すのであれば成長マインドセットを持って自己実現欲求を極めて行くことの大切さがわかって頂けると思います。このプロセスにおいても前回の記事で解説した「原体験を知ることの力」が役立ちます。

「お金」と「コミュニティ」の価値は逆転していく

世の中は資本主義社会から評価経済社会、そしてシェアリング・エコノミーにシフトしていくと言われています。それはモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づいていき、あらゆるモノがシェアされるようになると「お金」の実質的な価値は下がっていくからです。逆に「お金」よりも「評価」や「信頼」があることが希少性を増していくため相対的に価値が高まっていきます。

実際にクラウドファウンディングのように「評価」や「信頼」さえあれば、いくらでも「お金」を調達できる社会になっていくのです。例えるなら1億円あってもフォロワー100万人にすることは難しいが、フォロワーが100万人いれば1億円稼ぐことは難しくはないということです。

また「お金」の実質的な価値が下がることで会社組織やギルド型組織といったビジネス中心の繋がりの価値も希薄になっていきます。逆に趣味仲間や地域、大義の元に集まったイノベーター共同体のようなコミュニティ中心の繋がりの価値が高まり、その結束力を強めていくはずです。

「After GAFA」の時代では今まで変わらないと思っていた常識が変わってしまう未来が予測されています。資本主義社会においては成功者になるためには、労働者の枠組みから抜け出すことで投資家や経営者になるという選択肢しかありませんでした。そんな変わらなかったはずの「お金」による絶対王政が、「評価」や「信頼」によって覆えされるような市民革命が起きようとしているのです。

私たちは「After GAFA 」の時代に来たるパラダイムシフトを想像しながら、イノベーターのように常識を疑い、常に思考や行動をアップデートしていく姿勢が求められているのです。

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「After GAFA」を見据えて私たちができること

「After GAFA 」の時代に起こるとされるパラダイムシフトに向けて私たちが出来ると思うことをまとめてみました。

◆個人
・お金稼ぎ以外の新しい成功の定義を考える。
・原体験を知り、自分の大義を持つ。
・自分の好きを極めてみる。
・心から共感できるコミュニティに参加する。
・地域や人と触れ合う体験をする。
・自分が育った地域に目を向けてみる。
◆起業家
・地域の現場に赴きニッチな課題を抽出する。
・社会課題を解決するイノベーターを目指す。
・イノベーター創出を目的とした共同体結成。
・至高体験について追究する。
・人や評価、信頼を集める。
◆IT企業
・「社会情勢」「現在活用できるテクノロジー」「自社の使命と価値」これら3つの軸が交差する視点から自社のビジネスモデルを再編成する。
・競合他社やGAFAの真似を辞める。
・創業当初の理念を見つめ直し、良い企業文化は強め、悪い企業文化を是正する施策を打つ。
・偽りのDXを助長する大企業病を克服するために、組織や評価制度の抜本的な変革を目指す。
・自社の事業の成長だけでなく、人間生活を向上させるような社会的アーキテクチャを設計することで真のDXの実現を目指す。

【参考文献】

「After GAFA 分散化する世界の未来地図」

「M&A思考が日本を強くする: JAPAN AS NO.1をもう一度」

「うまくいく人がやっている 1億円会話術」

「リビング・シフト 面白法人カヤックが考える未来」

「資金ない、人脈ない、アイデアないの3ない状態でも起業できる! 会社にいながら起業して月100万円稼ぐ 新しい起業のかたち 」

「普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う」

「不動産2.0」


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