2022年9月30日~10月1日 酒。読書。観劇。それだけ ~「家飲み」と「日本酒の日」~

私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。

たとえば、2022年9月30日から10月1日にかけて……

2022年9月30日

18:30 舞台『きっとこれもリハーサル』@新国立劇場 小劇場

ライトなコメディで始まった芝居は、驚きの展開を経て、客席からすすり泣きが聞こえる感動の物語で幕を下ろす。

石野真子さんを観てご機嫌なまま真っ直ぐ帰宅し、家飲みしながら軽く映画『大綱引きの恋』(佐々部清監督、2021年)を見直す(見直した理由は上の拙稿に)。

そういえば最近「家飲み」という言葉を普通に使っているが、私のやっていることは正確に言えば「晩酌」である。

「家飲み」とは、本来は「家での飲み会」の略であり、家に友人・知人が集まってお酒を飲むことを意味していた(略)。
これに対して、自宅で1人または家族とお酒をたしなむことを「晩酌」という。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、「家飲み」に「晩酌」をも包含させたといえる。今では、1人でも、家族とでも、友人・知人とでも、自宅で飲む場合には「家飲み」というようになっている。

都留康著『お酒はこれからどうなるか』(平凡社新書、2022年)

都留らの調査によると海外ではホームパーティー以外で家でお酒を飲む文化はなく、対して日本は、『週に1日以上お酒を飲む人の「外飲み」が20.9パーセントなのに対して、(家族または1人での)「自宅飲み」が88.9パーセントと圧倒的に多い』という。

私自身は基本、「外飲み」が多い。
だから、たまに家でテレビを見ながら「家飲み」すると楽しい。

そのテレビに目を移す。
「A-Studio+」に橋本愛さんが出ている。
熊本出身の彼女は、東京での友人が少なく(曰く『作り忘れた』)、休みがあると熊本に帰省するほど、地元とそこに住む中学時代の同級生たちが大好きだという。

『うつくしいひと』(行定勲監督、2016年)は熊本出身の出演者で作られた(もちろん行定監督も熊本出身)映画で、ヒロインである彼女の熊本弁はとても可愛い。
その理由は、熊本ネイティブということもあるだろうが、それ以上に「熊本愛」というか「仲間愛」に溢れているからだったのだと、テレビを見ながら思う。

そんなわけで、番組を見終わり『うつくしいひと』を見直す(と言いつつも、実は、個人的にはその続編である『うつくしいひと、サバ?』(同監督、2017年)の方が好みである。ただし、こちらには橋本愛さんは出演されておらず(家の用事で経営している書店カフェを休んでいる、という設定)、代わりにやはり熊本出身の中別府葵さんが(カフェのアルバイト店員として)出演されている。ちなみに、この映画ではまだブレイクする前の石橋静河さんの美しいコンテンポラリーダンスが見られる)。

そういえば、番組で『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(2019年)に出演した際、監督の成島出氏から「演技が下手」と指摘されたことが嬉しくて、「(本人にも自覚があったので)やっぱり下手ですよね?」と返したというエピソードが紹介されていた。
私は演技については何もわからないが、『グッドバイ』と同時期に公開された、15人の新進女性監督が撮った短編オムニバス映画『21世紀の女の子』(企画・プロデュース 山戸結希、2019年)の中の一編「愛はどこにも消えない」(松本花奈監督)を観て、「この人スゲェ」と圧倒された記憶がある。
スクリーンに映る彼女の表情は、純粋に「本当に好きな恋人」にだけ向けられる最高の幸せに満ちていた。それを、多くのスタッフが冷静に見つめる中、恋人ではなくカメラに向かって、演技でそんな表情ができるなんて!

なんてことを考えているうちに、完全に酔いが回っていた。
いつ眠ったのか覚えていない。


2022年10月1日

14:10 映画『あの娘は知らない』@新宿武蔵野館

12月1日の「映画の日」にちなみ、毎月1日、全国の映画館は割引料金になる。その1日が土曜日ということもあってか、映画館は結構にぎわっている。
この映画も5~6割の入りで評判の高さが伺える(2週間の限定上映+ポスター付き、という理由もあるかも)。

本編も結構グッと来たが、エンドロールで何故か泣きそうになり、その感情を持て余したまま映画館を後にする。
気持ちを落ち着けながら近くの紀伊国屋書店に向かうが、結局読みたい本に出合えず。まぁそんな日もあるさ。

そういえば、『あの娘は知らない』の井樫監督も『21世紀の女の子』で「君のシーツ」(主演は三浦透子さん)を監督していた。同性愛というか異形の異性愛というか、ほとんどセリフがないのも相まって、結構エロティックな作品だったと記憶している。
そのつながりで言えば、先日観た映画『よだかの片想い』の安川有果監督も「ミューズ」(主演は石橋静河さん)を撮っているし、主演の松井玲奈さんは「reborn」(坂本ユカリ監督)で主演を務めている。

そんなことを考えながら新宿駅に向かい、小田急線に乗る。

17:00 新百合ヶ丘「土と青」

新百合ヶ丘駅で降り、「土と青」という居酒屋に着いたのがジャスト17時、店員さんが「営業中」の札を出しているところ。
なんと時間に正確な性格なのだろうと自画自賛しながら、入店。

オーナーであるご主人が「今日は何の帰りですか?」と聞くので、「映画」と答える。
小田急線は本当に馴染みのない路線で、下北沢で芝居を観る時か、このお店に来る時にしか乗らない(新宿・下北沢で映画や芝居を観た後にしか来ないので、だから先のご主人とのやり取りになる)。

1杯目は、やはり生ビール。
10月初日なのに気温は高めでビールが美味しいが、例年、こんなに暖かかっただろうか? と考えて、ふと思い出した。
去年(2021年)の10月1日、東京は緊急事態宣言が明けた日なのに、近くを台風が通過していたのだった。
そんな状況下、私は今日と同じ新宿武蔵野館でやはり割引で映画を観て、その後2回目のワクチン接種をしたのだった(さらにさかのぼると、2018年の同日は、やっぱり同じ新宿武蔵野館で『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督、2018年)を観ていた)。

などといっても、やっぱり10月は「秋」。秋刀魚の季節である。
そんなわけで、「秋刀魚の肝醤油焼き」を注文。

酒飲みには魅惑の「あん肝」!

ビールを飲みながら料理が出てくるのを待っている間に、どんどん予約客がやってくる。
そのお客さんたちのほとんどが、1杯目にビールではなくサワーを選んでいる。
1杯目にビールを頼まない人が増えたとは聞いていたが、それを目の当たりにして軽くショックを受ける……と言っても、別に昔ながらの「とりあえずビール」に拘っているわけではなく、「32年(公称)も酒飲みやってりゃ、時代も変ってゆくよなぁ」という感慨である。
そのうち「とりビー」ではなく、「とりサワ(とりあえずサワー)」なんて言葉も出現するのだろうか(もう出ているかも……)。

などと思っているうちに、ビールを飲み干してしまう。
普段から2杯目以降は日本酒を呑むことが多いが、今日は特別な気分でもある。
だって、毎年10月1日は「日本酒の日」なのだから(去年は「外飲み」が解禁されたのにワクチン接種したから呑めなかったし……)。

コロナ前は、毎年10月1日 19時に日本酒が売りの全国の居酒屋で一斉乾杯をやっていた(2022年の今年も、規模はかなり小さくなったが実施したお店も多かったと聞く)。
まだ19時ではないが、フライングで一人乾杯!

1杯目は愛媛の成龍酒造『然』

18時過ぎ。気がつくとお店は満席。外も既に暗くなっている。
気温は高めだが、やっぱり確実に秋になってきているのを実感する。
お店のにぎわいを感じながら、ひとり、ゆるりとお酒を呑むのはとても心地いい。

近くのお客さんが注文した日本酒(このお店も日本酒の品揃えが良い。だからか最初はサワーなどで始めたお客さんも、そのうち日本酒を呑むことが多い)のラベルが目に留まり、そのお酒を注文してみる。

山口県 阿武の鶴酒造『三好の三女子(みじょし)』
(ラベルデザイン・五月女ケイ子)

19時過ぎ、人気のお店の席を占拠し続けるのは気が引けるので、次のお客さんに譲ることにする。
忙しく働く奥様(このお店はオーナー夫妻で切り盛りしている)が手を振ってくれる。「ごちそうさまでした」と告げてお店を後にする。

乗り慣れない小田急線なので、気を張って電車に乗る。
折角の「日本酒の日」だから、もう1軒行こうかとも考えたが、昨日のお酒が家に残っているし、翌週は3連休でもあるので外飲みはその時に取っておこうということで、素直に帰宅する。
先日観たTM NETWORKのライブがWOWOWで放送されていたので、それを見ながら、今日も「家飲み」する。

実際のライブ会場では声が出せなかったので、酔いも手伝って(小声で)歌う。あの時の嬉しさ・楽しさが蘇って、心地良く飲んだ……はずである。

もちろん、いつ眠ったのか覚えていない。



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