マガジンのカバー画像

映画鑑賞

226
映画感想など
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

【映画体験】双子姉妹デビュー 原將人映画ライブツアー プログラムA「双子暦シリーズ」 @UPLINK吉祥寺

映画を「体験する」。とても、不思議な感覚だった。

『双子姉妹デビュー 原將人映画ライブツアー TOKYO/YOKOHAMA』

商業映画では広末涼子の映画デビュー作である『20世紀ノスタルジア』(1997年)で知られる原監督自身が、映し出される自作映画のスクリーンの傍らで、(全てではないが)キーボードを演奏しながら歌い、ナレーションを付けるという、不思議なスタイルの企画上映。
初日である 202

もっとみる

露・伊・仏・瑞合作で描く 敗戦時の昭和天皇~映画『太陽』~(UPLINK吉祥寺【気がかりな映画特集】)

映画『太陽』(アレクサンドル・ソクーロフ監督、2005年。日本公開 2006年。以下、本作)は、「日本国」「日本人」にとって、とても不思議な作品だ。今までも、そしてこれからも、日本で生まれ育った人たちでは、絶対に制作不可能なのではないかとも思える。それは、良し悪しとか信条とかをはるかに超越した、もっと深い、言語化できないーたとえは難しいが、「春夏秋冬」を当たり前に受け入れているのと同じような-何か

もっとみる

映画『かづゑ的』

映画『かづゑ的』(熊谷博子監督、2024年)を観ながら何度も泣いたが、それは「かわいそう」という気持ちからでは全くない。
そこに、夫婦の、人間の、「何げない平穏な日常」が溢れていたからだ。

とはいえ、"ずっと”「何げない平穏な日常」だったわけではなく、恐らく、”やっと"手に入れた「何げない平穏な日常」なのではないか。

このドキュメンタリー映画の主人公・宮崎かづゑさんは、瀬戸内海に浮かぶ岡山県の

もっとみる
映画『全身小説家』(UPLINK吉祥寺【気がかりな映画特集】)

映画『全身小説家』(UPLINK吉祥寺【気がかりな映画特集】)

「井上光晴」という小説家をご存じだろうか?
今の人なら、映画『あちらに棲む鬼』(廣木隆一監督、2022年)の白木篤郎のモデル、といったほうが伝わるかもしれない。

『あちらに棲む鬼』の原作(朝日文庫)は、作家の井上荒野氏が実父・光晴と瀬戸内晴美(現・寂聴)の関係を光晴の妻(荒野氏の実母)の視点から描いた「小説」である。

私はまたしても原作小説を読んでいないのだが、どうやら白木篤郎のドキュメンタリ

もっとみる
何かを見れば(聞けば)何かを思い出す~映画『すべての夜を思いだす』を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

何かを見れば(聞けば)何かを思い出す~映画『すべての夜を思いだす』を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

数年前まで、多摩センターにある会社に勤めていた。
サンリオピューロランドもある多摩センターには、京王線、小田急線(何故か永山から並行して走っている)の他、多摩都市モノレールも乗り入れている。
多摩地区を南北に貫くモノレールの最南端の終着駅である多摩センター駅はしかし、駅舎を過ぎたところまでレールが延び、不自然なところで終わっている。もっと不思議なのは北側の終着駅・上北台で、西武拝島線と連絡する玉川

もっとみる

映画『フジヤマコットントン』

観に来てよかった。

映画『フジヤマコットントン』(青柳拓監督、2024年。以下、本作)を観て、心から思った。
それは、本作が山梨県甲府市にある障害福祉サービス事務所「みらいファーム」で働く障害者の方々を扱ったドキュメンタリー映画だから、ではない。
いや、「だから」と言ってもいいのかもしれないが、それは決して、障害者の方々への同情でも憐みでもなく、ましてやネット上の批判を恐れたが故の言葉選びでもな

もっとみる
「正義」とは、「風化」とは~映画『水平線』~

「正義」とは、「風化」とは~映画『水平線』~

どんな名監督でも、「デビュー作」は1本だけですから。

映画『水平線』(小林且弥監督、2024年。以下、本作)の公開舞台挨拶に登壇した主演のピエール瀧は「だから光栄です」と語った。
もちろんそのとおりで、そしてその「デビュー作」には「監督の全てが詰まっている」とも言われるが、(脚本は斎藤孝であるが)本作はその言葉がピッタリだ。

「全てが詰まっている」というのは、まず、監督自身が俳優として東日本大

もっとみる