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シニアになって働く意味を考える⑦ ~けっこうしんどいかも?~

定年前後のシニアに「働く意味」についてインタビューした記事です。
一般的に、働く意味はおおざっぱに以下の2つにあると言われます。
1)自分の好きな仕事、やりがいのある仕事、社会的使命感のある仕事のために働く
2)家族のため、趣味や自分の余暇を充実させるために働く
ところが実際にシニアの方々にお話を聞くと、どうもそんな単純なものではないようです。そこで、シニア一人一人のインタビューを積み重ねて、「働く意味」のスペクトラムを描けたらいいかなぁって思っています。どんな平凡な人生にもドラマがあります。


今58歳、定年まで2年、「けっこうしんどいかも」

 Uさん(男性)は、大手の製品製造装置メーカーの環境・用力設備の管理責任者として、2つの工場にいる計10名の部下を持つ。工場の用力設備に問題が起きると、その地域一帯の電力系統で停電が起きたり、有害物質が外部へ流出したりする危険がある。このようなことが起こらないように監督管理し、しかも、できて当たり前というプレッシャーのかかる仕事なのだ。
 現在58歳、定年まで後2年、定年後も働き続けると延長雇用契約になり給与は激減される。幸いにも役職定年制のない会社で、60歳までは給与水準は現状維持される。精神的にもきつい仕事のため、60歳以降はどう働くかに思い悩んでいる。この仕事をずっと続けるのは「けっこうしんどいかも」という心境だそうだ。

会社員としての経歴は半端ない、日本経済の歩みと共に紆余曲折

 1987年大卒で、大手電子部品メーカーの地方工場の開発研究職でスタート。都心の本社・中央研究所への1年間の出向も経験し、長年苦労して開発してきた(当時の日本のお家芸だったある電子機器製品の心臓部にあたる最先端の)部品が量産化に成功、そのまま製造部門へ異動。ここから日本の経済の歩みと共に紆余曲折が始まる。
 製造された最先端部品は、中国南部の都市にある別会社で組み立てられ品質トラブルが頻発。長期出張で対応しなければならず、年に何度も日中を往復する生活が5,6年続く。そうこうする内に、新興国の追い上げにより製品の競争力低下があらわになり、事業の撤退が決まる。今度は廃業のための計画業務が本業となり、2007年に無事事業をクローズさせる。
 目まぐるしい20年間を終え、勤め先の先輩の紹介で今の会社へ転職した。40歳代から環境・用力管理という全く経験のない新しい仕事へのチャレンジが始まる。一から設備や水・大気汚染の勉強し、仕事に必要な国家資格も取得、10名の部下を持ついわゆるプレイイング・マネジャーの今のポジションにつくまで16年間がんばる。その間、3年間の都心本社への単身赴任もあった。

ひたすらがんばった36年間、58歳になった、これからは?

 Uさんの経歴を聞いているだけで圧倒される。スゴイわ。「けっこうしんどいかも」という心境も十分理解できます。よくやってきたなぁって。ここで質問の方向を変えて、ご家族のことを聞いてみました。
 社会人として独立された二人のお子さんが、賃貸で近所に住まわれているとのこと。まだ若く手取りの給料だけで、家賃・スマホ代・光熱費・食費をまかなうのはキツイそうで、「ぼくらの時代と違って、今の若者は大変」と、お子さんの事も気にかけます。奥さんとは、マラソン大会で一緒に走るという夫婦共通の趣味を楽しんでいる。大会での夫婦間の勝負は五分五分、微笑ましいですね。Uさん、年に一回、知人と登山にいく趣味も持っています。
 「これからどう働くの?」という微妙な質問には言葉を濁す。「60歳から給与が減っても延長雇用か?今の歳での転職は厳しいと思っている」と。

それだけの現場経験があれば、きっと道は開ける(はず)

 Uさんは「確かに経験は豊富だけど、自分の意志で選んだ道じゃないし、たまたま縁があって、それに従っただけで、何も才能がない平凡なサラリーマン」と言います。
 「いやいや、その縁を引き込んできたのは、才能があったからじゃないの」と思わず返しました。「その経験を職務経歴書にして、転職サイトでバラまいてみたら?60歳までの2年間じっくり待っていたら、また新しい縁ができるかもよ」と言いましたが、余計なお世話だったかもしれないと、ちょっと後悔しています。なぜなら、Uさんなら、きっと向こうから良縁がやって来るんじゃないかと思い至ったからです。

後記:

 このインタビューを始めて、ほぼ皆さん「私なんか何も才能がない平凡なサラリーマン」と言われます。他の号も読んでいただければ分かるように、平凡なんかどこにもないように思います。「どんな平凡な人生にもドラマあり」です。ここに「働く意味」を読み取ることができる気がしています。

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