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【毒親連載小説#70】成人後も続く毒親からの呪縛⑤

両親には私という
「心のゴミ箱」が必要だった。

そして、私は私で
両親に愛してもらいたい
という潜在的欲求が
この共依存関係を
強く結びつけていた。

それはまるで、
もつれた糸のようだった。

この「もつれた糸」は
たとえ家出をして
一人暮らしをしていようが、
遠くの海外で生活をしようが
程度の差はあれど、
もつれていることに
なんら変わりはなかった。

私は命からがら家出をして
物理的な距離を置き、
身体的安全は確保された。

しかし、長年に渡る
親という絶対的権力者に怯え続け、
洗脳や感情的なコントロールから
逃げることもできず、
不健全な依存関係は相変わらず続き、
この気づけない共依存に
ずっともがき苦しみ続けきた。

私が家を出てからというもの、
両親は交互に相手の
愚痴を言うためだけに
私に連絡をよこしてきた。

私は単に両親の
「従順な聞き役」に
過ぎなかった。

たまに私から連絡をすれば、
父は、母の悪口。

母と連絡を取れば
父への止まらぬ愚痴…。

彼らは自分がいかに
正しいか?
いかに可哀想か?
という話を延々と続けた。

一度として私に
関心を向けたことなどなかった。

会話とは言えぬ
一方通行な独り言。

私は毎回、
ぐったりと疲れていた。

すると、また
深い虚しさを覚えるのだった。

私はこんな両親の間に
挟まれ続けることにうんざりし、
しばらく連絡をしないこともあった。

母は父との関係が悪化し、
八方塞がりになりそうな時にだけ、
必死に涙声で並べ立て、
私に同情を誘うような言葉で
コントロールする。

私が電話で取り合わないと、
同情を誘う言葉を書いた
手紙を送ってくることもあった。

母はよくも悪くも
子供の情を使って
私をコントロールすることに
長けている人だった。

私が情にほだされ連絡をすれば、
母は電話口で泣き崩れ、
可哀想な人を演じ、
私たちにどうにかしてもらおうと
必死だった。

母は父をコントロールするために、
父の弱みである私という
「取引のカード」が
どうしても必要だったからだ。

(つづく)

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