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【毒親連載小説 #20】父とわたし 1

あの頃の父…。

私が父との記憶をさかのぼると、
それは小学校に辿り着く。

あの頃の父の印象は、
怒りの塊だった母とは対照的で、
物静かで優しい印象だった。

そんなこともあってか、
もともと私にとって父の存在とは、
心の拠り所だった。

また、この頃、
父が営んでいた商売も
うまくいっていたようで、
私たち兄弟は私立の幼稚園に通い、
小中高と民族教育を受けさせてもらった。

幼い頃、私は母と二人きりで
どこかへ連れて行ってもらったという記憶は
ほとんどなかったが、
父はよく私と妹を遊園地や色んなところに
遊びに連れて行ってくれた。

父が撮ってくれたであろう
当時の写真もたくさん残っている。

近所にあった
クラシックな雰囲気の喫茶店。

あの喫茶店で飲んだ
搾りたてのオレンジジュースや
ふかふかなホットケーキは
とても優しく柔らかい記憶だった。

また、小学校の頃は、
父が商売で使っていた事務所の
マンションに遊びに行くこともあった。

初めて妹と一緒に入った泡風呂。

母との浴室での嫌な記憶とは対照的に、
その暖かさと泡風呂の心地よさに
私はとても癒されていた。

この昔の記憶がきっと、
今もずっとお風呂が好きな理由だと思う。

このように、小学校の時の
父への記憶は良い印象のものが多い。

しかし、そこから時は経ち、
私が高校に上がったぐらいの頃
だっただろうか。

私は父との関係で
うまく表現できぬ違和感を
うっすらと感じていた。

その違和感は日増しに強くなり、
私と父との間には確実に
心の距離ができていた。

今思えば、
この父との関係性の変化は、
父が今まで営んできた商売が
うまくいかなくなった時期と
重なっていた。

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