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【毒親連載小説#71】成人後も続く毒親からの呪縛⑥

そして連絡を再開すれば
母はまた、
何時間もの間、
父の愚痴や恨み言を
私に言い続けた。

初めは同性として、
父の母に対する
見えないモラハラに同情し、
バカ正直に母の話を聞いていた。

しかし、
電話を重ねるごとに
止まらない愚痴にうんざりし、
電話を切る頃には
仕事で忙しく過ごした1日よりも
その電話で
何十倍もグッタリしていた。

時に私は受話器を置いたまま、
母の話を聞かないこともあった。

それでも母は、
まるで独り言かのように
2時間でも3時間でも
父の愚痴や恨みつらみを
延々と一人、話し続けた。

そんな関係を
続けているうちに
私の心にはふと

「私は母の愚痴のゴミ箱だ」

と感じるようになり、
次第に私の自己肯定感も
エネルギーもどんどんと
奪われていった。


私は今まで
韓国、中国、オーストラリア…
色んな国で生活してきたが、
母が私に対して、
なぜここに住み、
何をしているのか?など
一切、聞いてくることはなかった。

それは、
私が言わなかったからではない。

母にとってはそんなことは
どうでもよいことだからだった。

なぜなら、
母の関心ごとは子供ではなく、
お金のこと、
母にとって利益のあること、
自分の身を守ることだけ
だったからだ。

だから母は毎回、私に
こんな愚痴を言い続けて
スッキリしたら、
次回、電話した時には
もうケロッと忘れていて
父と普通に過ごしていたりする…。

そんな母を見ると
私はまた裏切られた…
そんな気持ちになり
疲れ果てていた。

夫婦の問題だというのに、
私が取り合わないと
「娘のくせに…」
「あんたは冷たい娘だね」
といった言葉で
半ば強制的に夫婦の間に
入らざるを得ないように仕向ける。

「娘だから何だっていうわけ?」
「家族だから何でも
 背負わなきゃいけない
 ってどういうわけ?」

私の本音はずっとこうだった。

しかし、
当時の私はこの個人としての
自分の本音を言い返す強さは
持てなかった。

なぜなら、
これを言ったら両親から

「お前は親でもなければ子でもない!!」

そんな切り札で
私を脅してくると
分かっていたし、
私自身もまた、
この言葉をいう時は
親と絶縁するぐらいの
覚悟を持たないといけないと
分かっていたのかもしれない。

そうやって私はずっと
腹を決められないまま
過ごすうちに
どんどんとこの
親子関係の糸が
もつれ続けていくのを
ただ呆然と見ることしか
できずにいた。

(つづく)

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