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【毒親連載小説 #12】母とわたし⑩

両親の夫婦喧嘩が
日常的に行われると同時に、
母の酒量もどんどんと増え、
完全にお酒に呑まれることが増えた。

ある時は母は完全に目が据わり、
取り憑かれたように激しく怒鳴り続け、
わけのわからないことをわめき続けていた。

そして、突然、
吐き気をもよおしたのか
倒れこむかのようにトイレに駆け込み、
トイレで呻きながら吐き続ける。

吐き続けているあいだ、
ずっと聞こえてくる母の不気味な呻き声。

嘔吐物の匂いが家中に充満する…。

全身がぞわっと鳥肌が立つかのような
不快感だった。

私は早くこの時間が過ぎ去って欲しいと
祈りながら布団を深く被り、
必死で目をつむり眠ろうとするのだが、
私たちの部屋の隣がすぐトイレだったので、
あの呻き声がずっと耳元で聞こえるかのようで、
眠れるはずなどなかった。

母は、吐いた汚物が
便器に飛び散った状態のまま記憶を失い、
トイレに倒れこみ、朝までそこで眠っていた。

長い長い夜だった…。

翌朝、私たちが一晩中感じた苦痛は、
つゆほども知らず、
母は前の日に暴れた記憶はほとんど
失っているようだった。

翌朝、
少しバツの悪そうな表情をちらりと見せて
母はまたすぐ布団にうずくまっていた。

翌朝のリビングはお酒の匂いで充満し、
そこら中にビールやお酒の空き瓶が
転がっている…。

これが、私の知る母の実態だった。

ここまでは夫婦喧嘩に
巻き込まれ続けてきた話なのだが、
我が家の場合、
これだけでは済まされなかった…。

(つづく)

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