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#逆噴射小説大賞2019
ダウンフォール・オブ・ザ・トリックスター
「こわいこわいもうやだこわいやだこわい」
圭子はついにその場でへたり込み、うわ言を繰り返すだけの存在と化した。井上さんはまだ自分のネクタイを旨そうに咀嚼している。
館を焼き焦がす炎はいよいよ私たちに迫り、灼熱の空気が喉を焼く。脱出しなければ命は無いが、唯一の出口にはあの男が立ちはだかり、こちらに銃口を向けている。藤堂すみれは初めからこの男を蘇らせる事しか頭になかったのだ!
BLAM!!!
そして踵は打ち鳴らされる
野営の始末を終える頃、アイツはおれが与えたヒモをくわえて眠っていた。さっきまではちきれそうな桃色の肉球と僅かな爪でヒモと戦っていたというのに。銀色の柔らかい体毛に包まれた身体は呼吸運動の度、わずかに動く。「ネコ」とはかくも脆弱で無知性、単純な存在だ。
おれはヒモに神経を通す。ヒモのあちこちで目がぎょろぎょろと蠢き、おれの制御下に戻った。それでアイツの頭部後方を掴み、ゆっくりとケージに収納する。こ