37-2.もっと活躍できる!スクールカウンセラー!
ご案内の注目新刊書「著者」研修会
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1. スクールカウンセリングの活動をもっと広げよう!
【スクールカウンセラーの皆様】もっと柔軟に、もっと自由にスクールカウンセリングを実践したいと思いませんか。
【スクールカウンセラーを目指す皆様】スクールカウンセリングの楽しさと可能性をもっと知りたいと思いませんか?
子ども認知行動療法(以下、「子どもCBT」)を使うと、スクールカウンセリングの可能性が広がります。もちろん「子どもCBT」は、面接室の中で実施する生徒との個人面談でとても役立ちます。しかし、それだけではないのです。
今の実践で満足していないスクールカウンセラーの皆様、一緒にスクールカウンセリングの活動をもっと広く、豊かなものにしていきましょう! スクールカウンセラーを目指す皆様、一緒にスクールカウンセリングの魅力をもっと深く学んでいきましょう!
2. 学校で役立つ!子どものための認知行動療法
「子どもCBT」は、スクールカウンセラーが面接室以外の学校のあらゆる場面でもっと柔軟に、もっと自由に活躍できるためのツール(道具)なのです。教員や家族へのコンサルテーションのために、そして授業における心理教育プログラム(「安心ゲット」プログラム)の実施のためにも「子どもCBT」は大いに役立ちます。
そこで、臨床心理iNEXTは、学校現場で「子どもCBT」を使いこなすための研修会を実施します。
前半では、「子どもCBT」を道具として自由に使いこなして心理支援の幅を広げる方法を解説します。面接室の外、例えば廊下での生徒との立ち話を通して子どもの問題を理解し、その場で支援をすることができるようになります。教員に生徒の問題を上手に説明できるようになるので、コンサルテーテーションが上達し、教員に信頼されるようになります。問題の成り立ちがよく理解できるようになるので、保護者が何をすれば良いのかを教えてくれます。
さらに、後半では、子どもと若者の認知行動療法のエッセンスが詰まっている心理教育のデジタル教材「安心ゲット」プログラムの使い方を解説します。心理教育授業が苦手というスクールカウンセラーでも、オンラインで「安心ゲット」プログラムを活用することで楽々と授業ができます。さらに、みんなで「子どもCBT」を使いこなしていくために助け合う「スクールカウンセラーのためのコミュニティ」も紹介します。
3. 研修会講師「松丸未来先生」へのインタビュー
研修会の講師は、子どもと若者の認知行動療法の第一人者の松丸未来先生です。松丸先生は、東京都のスクールカウンセラーとしてだけでなく、私立の小学校や中高一貫校のスクールカウンセラーとしての豊富な経験を踏まえ、日本の子どもや若者の現実に即した認知行動療法を発展しています。以下に、臨床心理iNEXT代表の下山が松丸先生にインタビューした記事を掲載します。
その成果は、スクールカウンセラーが「子どもC B T」を使いこなすためのテキスト「よくわかる学校で役立つ子どもの認知行動療法※1」(遠見書房)として結実しました。今回の研修会は、その松丸先生の最新著作をテキストして実施されます。参加者の皆様は、認知行動療法の具体的な使い方を学ぶことができます。
※1)https://tomishobo.com/ca161.html
なお、松丸先生は、海外の子どもと若者の認知行動療法にも詳しく、英国の「子どもCBT」のリーダーであるPaul Stallard教授と連携して、世界標準テキストである「決定版:子どもと若者の認知行動療法ハンドブック※2」(金剛出版)の翻訳もしています。
※2) https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b604366.html
4.「子どもCBT」活用のポイント
[下山]研修会に向けて、松丸先生にとっての「子どもCBT」の活用ポイントを教えてください。
[松丸]そもそも「子どもCBT」をどう使いこなすかを考えるときに、目の前の子どもとやり取りしながら、頭の中ではその子を理解するためにいろいろと推測し、想像します。私の頭の中では、認知行動療法の枠組みを利用して、問題の背景も含めて子どもをより深く理解しようとする。そして、この子にどのようなテクニックや対処レパートリーが役立つかを考えていきます。
このように私は、子どもとやり取りしながら、私の頭の中では同時に認知行動療法の枠組みで問題をより深く理解するための作業をしています。今回の研修会では、自分の頭の中でどんなことを考えながら子どもと向き合っているのかをお話しします。
[下山]ただ単に認知行動療法をマニュアルに従って適用するのではなく、問題としてどのようなことが起きているのかを推測し、その問題の成り立ちに即して認知行動療法の使い方を工夫していくということですね。
5.子どもの表情や動作から問題の悪循環を探り、伝える
[松丸]あまり言葉を発しない子どもの場合、その子の表情や動作から、何をスクールカウンセラーに伝えたいのかを翻訳したいと、私は思っています。その子の言動から何を伝えようとしているのかを推測し、理解するために認知行動療法の枠組みはとても役立ちます。
どのようなことがきっかけで反応が起きているのか、その反応において認知、感情、身体状態、行動がどうなっているのか、その反応の結果はどうなっているのかをみていきます。そして、今どのような悪循環が起きていて、それがどのように維持されているのかを考えていきます。子どもの数少ない言葉から、私の頭の中では同時にそのような情報を整理して組み立てていきます。
その上で、「今、このような悪循環が起きているんだね」と、理解したことを子どもに伝えます。図を書いて説明してフィードバックします。そのようにして子どもと問題を共有し、手を組むことができたら、「あなたに役に立つ、このような方法があるんだけど」と話をしていく。子どもの話を聞いて、そのようなやりとりをしていきます。
[下山]子どもが語る内容を理解するために「子どもCBT」の枠組みが役に立つだけではなく、子どもに話をしてもらうためにも「子どもCBT」の刺激−反応−結果の枠組みが役立つのですね。あまり喋ってくれない子どもの場合は、特にそうですね。子どもが何を言わんとしているのかを聞き取るために「子どもCBT」の枠組みが役立つわけですね。
6.子どもの問題のケースフォーミュレーションを作る
[松丸]認知行動療法では、問題の種類によってどのような悪循環が起きているのかのプロトコルがあります。「不安の強い子どもはこのように考えやすい」とか、「うつの子どもは“ダメな自分”という思いが根底にある」などのプロトコルが私の頭の中に枠組みとして入っています。それで、目の前の子どもの言葉や行動と、その枠組みを照らし合わせながら、その子なりのストーリーを読み取っていきます。
そのような個別の子どもの具体的な在り方と、プロトコルの一般的見方を頭の中でうまく調整しながら、その子の独自な問題のあり方を頭の中で思い描いていきます。それが、その子の問題のオリジナルなケース・フォーミュレーションになります。それが、ある程度思い描けた時点で図式化してアウトプットして、子どもと一緒に眺めます。
[下山]それは、簡単なようで難しいことだと思います。例えば、認知行動療法を勉強すると、「怒りっぽい人は、被害的な認知の偏り」があるというプロトコルを学ぶわけですね。そうなると、そのプロトコルを当てはめただけでその人や問題を理解した気になって、マニュアル通りに認知行動療法のスキルを適用することが生じる。
それに対して松丸先生が今言ったことは、プロトコルの一般論を当てはめるだけではなく、個別の子どもの言動とプロトコルを擦り合わせて、その子を具体的に理解していくことが重要だということですね。その擦り合わせこそが難しい。
[松丸]私は、子どもと会う際に、その子の主観の世界ではどのような偏りがあるのかを注目します。“うつ”っぽく偏っているのか、“不安”ぽく偏っているのか、“PTSD”っぽく偏っているのか、あるいは“怒り”と関係するのかという視点で、子どもの話を中立的に聞いています。
[下山]実は、その“中立的に聞く”ことが難しいと思います。一般論の方に視点が行きすぎて、その子の現実を軽視することも出てくるのではないかと心配します。一般論も参考にしながら、やはり常に子どもの現実に沿って想像力を働かせ、子どもに近づく努力が必要と思います。
7.事例を通して「子どもCBT」活用の実際を解説する
[下山]ところで、今回は、事例を通して「子どもCBT」の活用の仕方を具体的に解説いただけるとのことでした。どのようなケースをお話いただけるのでしょうか。
[松丸]スクールカウンセラーは、相談室の中だけで活動しているわけではありません。むしろ、50分間、相談室の中でじっくり話が聞けることの方が少なかったりする。なので、現実のスクールカウンセラーの働き方に合わせたケースを3つ紹介して、それを通して「子どもCBT」の活用の実際を説明します。
一つは、昼休みの短い時間とか、廊下であった時にちょっと話したという場合にどうするかです。その子の表情が笑顔に戻るために何ができるかを考えます。何か話してよかったと思えるようなお土産を渡せたらなと思っています。そこでは、10分や15分でブリーフな認知行動療法みたいなことをします。
二つ目は、教員へのコンサルテーションに活用する場合です。昨日も、教員から「あの子が突然怒ってしまって大変です。どうしたら良いでしょうか。」と不意打ちの相談を受けました。そのような場合、瞬時にその子の問題をどのように見立て、教員に気の利いたアドバイスをするのはどうしたら良いかということがテーマとなります。
三つ目は、保護者の相談に活用する場合です。保護者相談は、じっくり50分程の時間を取り、しかも複数回かけてお話を聞くこともできます。最初に来談された時点では、母親が子どもの相談で来たのだけれども、実は母親自身に抱えている問題があるということもあります。そのような場合、だんだん母親をどのようにサポートしていくかが課題となります。
いずれのケースにおいても、学校というリソースをどのように活用するかが重要となります。それは、教員だったり養護教諭だったり、クラスメイトだったりします。そこで、そのようなリソースと連携してチーム学校を作っていくために、「子どもCBT」をどのように活用するのかをお話ししたいと思っています。
8.スクールカウンセラーが「安心ゲット」プログラムを使う意義
[下山]後半は、「子どもCBT」を用いた心理教育ということで「安心ゲット」プログラムの活用をお話しいただくということですね。「安心ゲット」プログラムは、「子どもCBT」のエッセンスが詰まっているのですね。
[松丸]そうです。「安心ゲット」プログラムは、「子どもCBT」というエビデンスがある方法に基づいて構成されています。だから、有効性の根拠があり、しかも不安との上手な付き合い方を説明できるように内容が組み立てられています。例えば、認知行動療法の枠組みに基づいて考えと気持ち、つまり認知と感情のつながりをイラストで説明できるようになっています。自分を励ます言葉や元気の出る言葉を増やすことができるようにストーリーが組み立てられているので、初心者でも使いやすいのです。
[下山]スクールカウンセラーにとって「安心ゲット」プログラムの意義を教えてください。
[松丸]これからのスクールカウンセラーは、問題が起きてからの対処療法だけではなくて、問題を予防するための活動をしていくことが求められます。5、6年前ぐらいから「SOSの出し方教育」を推進する動きがあります。そのためにスクールカウンセラーは、どのような授業ができるかを考えなければならない。クラス全体を対象として、子どもたちがより豊かに生きていけるために何ができるかがスクールカウンセリングの重要テーマになっています。しかも、授業をすれば、スクールカウンセラーへの相談とかの敷居も低くなり、子どもとの関係づくりもできます。
ですので、心理教育授業ができることが、スクールカウンセラーとして機能するための重要な柱となっています。個別面接ができるとか、先生のコンサルができるだけでは不十分で、予防的な視点で集団対象の心理教育を実施できることが求められている。私は、勤務する学校で「安心ゲット」プログラムを用いて授業を担当しています。不安がありながらも不安とうまく付き合って、自分にやりたいことができるように、クラス全体を支援しています。
9.「安心ゲット」プログラムを使うメリット
[下山]「安心ゲット」プログラムは、デジタル教材を使っていて、希望者はオンラインで活用できるような準備もできているということですね。「安心ゲット」プログラムを使うメリットを教えてもらえますか。
[松丸]「安心ゲット」の名前通り、いかに子どもが安心できる環境づくりをするかが目的となっています。ただ単に子どもたちが個別に不安対処レパートリーを増やすだけでなく、集団として安心できるクラスに育っていくこともできる仕組みにもなっています。子どもたちが安心できるクラスづくりや学級経営にも生かすことができることが、他の心理教育プログラムにないメリットですね。
今回の研修会では、私が学校で実践場面を、許可を得て撮影した動画をお見せします。今回は、「子どもCBT」の使い方を事例を通して説明します。「安心ゲット」プログラムの実践動画を通して解説するなど、臨場感あふれる研修会にします。参加者の皆様からも質問を受け付けて、ライブ感覚のある研修会にしたいと思っています。
[下山]すでに「安心ゲット」プログラムを利用していただく準備ができているとのことですので、今後の予定なども含めて教えてください。
[松丸]「安心ゲット」プログラムに関心を持っていただいた方は、臨床心理iNEXTの会員になっていただければ、オンライン上でプログラムを使えるシステムを用意しています。その「安心ゲット」プログラムの使い方も研修会で説明します。それと、「安心ゲット」プログラムに関心を持つスクールカウンセラーのオンラインコミュニティ※)も作成します。これについても紹介します。
※)https://cpnext.pro/polish/polish32.html
■記事制作 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)
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