企業説明会の後に聴いてはいけない曲
飛行船(球体) / 作詞・作曲:Nao'ymt 歌:三浦大知
慣れない地図。地下鉄。パンプス。
念のために20分前に設定した到着時間も
気づけば開始5分前。
やっと着くと、
会社に愛想だけを
求められている受付のお姉さんが
「会場はエレベーターを4階に上がって右です。(高音)」
(ハイハイ右ね、てか、ほんまどっから声出してんねん。)
会場に着くと、席は8割ほど埋まり、
担当者もアイコンタクトをとりながら
開始時刻を伺っている。
(やば、心象悪いかな)
慌てて、近くの席に座ると、
おそらく入社3、4年目の採用担当者がマイクで話し始めた。
今日の話の内容とプログラム。
内容なんてないのに
相槌したり、ノートにメモったり、
説明会は進み、
「最後に質問のある方は、後ろの担当者が受け付けます。」
周りを伺いながらも、ぞろぞろ後ろに。
「就活の時にしていてよかったことは」
「今やっておくべきことってなんですか」
「どんな人が向いていますか?」
「ESで大切なことってなんd・・・
・・・
ようやく、リクルートスーツの円陣も捌け、
若干疲れ気味の担当者。
終了時刻は予定を30分オーバーし
窓から見える空は夜が始まっていた。
若干ヨレヨレになってしまったジャケットを羽織り、
乗り換え案内のアプリを開く。
あと15分か。ちょっと急いだら間に合うな。
とりあえず音楽アプリの右三角をタップ。
開く扉 放たれた光
程なく吸い込まれる人たち
生まれてきた理由がその先にあると信じて
列は続いている
(あー明日は早めにでてICOCAチャージしなきゃー)
いまだに消えない疑問点が
裾掴むこれは必要なことなのか
(メモもちゃんと整理しなきゃなー)
並ぶボタン
でも押すのはひとつ
いつしか磨耗して
劣る機能
(先輩、そういえばあそこ就職してたな、メールしてみよ)
いつだってそうして気取っていた
たった数色を重ねて絵を描いていた
人々を連れ去る飛行船が
向かう本当の行き先も
まだ知らずに
印などいらない
保証などいらない
ただ自分でいたいだk
スキップして、スマホケースに挟んだ切符を改札に突っ込んだ。
突然のアラーム音とともに
結構な勢いで閉まる膝丈のミニ扉と赤いランプ。
あわてて乗り越し精算機の前に並び直した。
残金は42円だった。
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